奇店綺譚｜リアクション

奇店綺譚

「そういえば葵ちゃん、『FABULOTHECA』って一体なんだと思うのだ？　真央ちゃん、自分で調べてたらいつの間にかカリフォルニア寓話なんてものに辿り着いてたのだ。でもさすがにこれは関係無さそうなのだ……」
「私に分かるのは英語っぽく無いってことぐらいだけど、それが間違ってそうなことはわかるんだよー……」
２人が雑談をしながらキャットロードから少し外れた辺りの路地裏を歩いていると、伸幸が目の前の曲がり角から現れた。
「あ、伸幸ちゃんなのだ」
真央がそれに気付いて声をあげると、伸幸も顔を上げて２人の姿を認めた。
「あぁ、こんばんは。後木さんに三ヶ島さん」
「確か君はよく逆巻くんと一緒にいる人だねー」
「ぬん。真辺伸幸」
「そうそう、真辺くんねー」
真央はとことこと伸幸の傍に寄って尋ねる。
「伸幸ちゃん、こんなところで何してるのだ？」
「僕いま『喫茶店』を探してるんだけどねぇ。なんだかいくら歩いても同じところをぐるぐる回ってるような気がするんだよねぇ」
「それは奇遇なのだ！　真央ちゃんと葵ちゃんもその『喫茶店』を探してるとこなのだ！　伸幸君も一緒に行くのだ！」
真央は新たな仲間を見つけた喜びで目をキラキラ輝かせている。
「真辺くん今同じところをぐるぐる回ってるって言ったよねー。要するになんらかの不思議な力のあるお店ってことなのかなー？」
「ぬー、分かんないなぁ。迷わないようにこうやって左手を壁に付けて歩いてたんだけど」
そう言って伸幸はコンクリート塀を左手でぺちぺちと叩く。
「真央ちゃんもそれ聞いたことあるのだ！　そうしておけば時間かかっても必ず迷路を抜け出せるっていう最終手段なのだ！」
「うん、そうなんだけどねぇ」
２人のやり取りを聞いて、葵は何やら複雑そうな顔をして言った。
「いや、２人とも、それは迷路みたいな入り口と出口がひとつずつしかない所でしか効果が無いと思うんだよー……こんな街中でそれをしても同じ区画の周りを回り続けるだけなのは当たり前だよー」
葵の説明を聞いた２人は、いまいち理屈が飲み込めていないのかぽかんとした顔を葵に向けた。