this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
【星幽塔】最終決戦! すべての希望に火を灯せ!
<< もどる
1
…
14
15
16
17
18
…
51
つぎへ >>
【白の扉】闇に至る階
柔らかそうな白銀の羽毛に守られた喉を天に向け、嵐の声で咆哮する龍より少し離れた位置で、由貴奈は足を止めた。ここならば、こちらを敵と見なしている龍の攻撃も容易くは届かない。
(ひとまず)
龍のもとへとまっすぐに向かう人々を祈るような瞳で見て後、由貴奈は手にした弓に矢を番える。
『クラップ・アロー』と名付けたその弓は、ともすれば射手さえも傷つけてしまいかねないような茨の如き形状と重量を持っている。威力増加の代償に命中力を失った、その酷く扱い難い弓を引き絞った、その瞬間。
ぱん、と手と手を合わせるようなクラップ音が湖上に響き渡った。
当たるも当たらぬも構わず、由貴奈は空に群れる黒い影に向けて矢を放つ。敵への宣戦布告にも似たその一矢は、恐ろしい勢いで空を切り裂き、解き放たれたように天に向かう。
「うおぉおおおぉ!」
緋色の鱗持つ竜人、シグマが力強く翼を羽ばたかせた。
アダマンタイト鋼で作られた巨大な剣を抜き放ち、重さなど微塵も感じさせぬ動きで空へと飛びあがる。竜人の鬨の声に動揺してか、上空のゴンザレスを護るように幾重にも囲っていた翼持つ黒い人影たちが手にした剣を、弓矢を、天翔けようとするシグマへと向ける。
影の矢に向け、シグマは獰猛な顎を開く。竜人の体内から放射された紅蓮の炎に巻かれ、影の矢は蒸発するように燃えて消えた。続けざまに放たれた矢は、ほしびととしての己の身に宿る魔風の光を鎌鼬のかたちとして使い、蹴散らす。ならばと剣持て突っ込んできた黒い人影の一体と、真っ向から剣を打ち合わさせる。
「軽い!」
一声吠えるなり、シグマの翼が風を巻く。鍔迫り合いにも至らず黒い人型は宙に吹き飛ばされた。平衡を崩し空で錐もみ状態となる人型に、シグマは容赦のないファイアーブレスを浴びせかける。
黒い塵と化して崩れ落ちる人型を追う恰好で、シグマは翼を窄めて空を滑り降りる。湖面で小龍を追って吠え立てる黒い狼たちを狙い、足を踏み下ろす。二メートル五十近い背と百五十キロオーバーの巨体に踏み潰されそうになり、狼たちは小龍を追い立てる陣形を崩す。狼狽する黒い群狼の真ん中に降り立ちざま、竜人はアダマンタイト鋼を打ち上げた大剣、竜王滅星刃を力任せに振り回した。
刃に斬られるというよりもその重さで吹き飛ばされ、影で出来た身を潰され、湖上に打ち倒され、狼たちが消えていく。
巨躯を余すところなく使い豪快な戦ぶりを見せる竜人を涼やかな瞳に映しながら、メーベルはぐるりを囲む黒い人影を見遣る。
(先生の敵は俺の敵)
誓うように胸に呟く。視界に捉えるのは、圧倒的な数の多さに押し包まれ、それでも口元の笑みを消さぬ主の姿。
愛用の煙草をくわえた紅い唇に、見た目通りの小柄な少年であるのならば浮かべるべくもない妖艶な笑みを刻み、ヴェルトは輪を狭める黒い人影たちにボウガンを向ける。油断なく構える黒い人影たちを一瞥したかと思うと、やおら腕を天へと掲げる。矢の遥か先には、空に浮かぶ黒く丸い影。
ゴンザレスへと放たれた矢は、天翔ける間に魔火の光による炎を帯びた。炎の尾を引き撃ちあがる矢の行方を目にすることなく、ヴェルトは地を蹴る。うかうかと矢に気を取られた黒い人影の一体の胸に、腰に帯びていた細剣エペ・イヴォワールを突き立てる。優美な柄の装飾にそぐわぬ鋭すぎる切っ先は、易々と影を貫いた。
「先生!」
剣を突き立てられてなお動き、ヴェルトをその手の剣で切ろうとする黒い人影の頭に、メーベルの放ったナイフが刺さる。そうしてようやくかたちを崩す黒い影に、ヴェルトは大仰な息を吐いた。湖上に落ちようとするメーベルのナイフを掴みざま、ステップを踏むように後ろに跳べば、今立っていた場所に空に舞う黒い人影の放った弓矢が降った。
「おっと」
飄々と笑うヴェルトの傍ら、メーベルが鋭い眼差しで空を睨む。主から無言のままに渡されたナイフを、手にするなり空に放つ。
(先生を傷付けんとするものは)
メーベルが身に宿す魔風の光の追い風を受けたナイフは、本来ならば届くはずのない位置の黒い人影を貫いた。
(……私がお相手させて頂きましょう)
鴉じみて空に群れ飛ぶ翼持つ黒い人影たちのその向こう、二本の角を振り立て嗤い続ける黒い球形が居る。寝子島の人々にゴンザレス太郎と呼ばれるそれは、耳障りな声で嗤う度、人を小馬鹿にしたように空にくるりと回る度、幾体もの黒い影の魔物を虚空に生み出す。
(排除せねばなりませんね)
けれど地に立つ今は、上空の敵に攻撃を届かせる手段を持たない。
螺旋描く鋭い風が周囲を囲む黒い人影に襲い掛かる。敵の本体に攻撃が届かぬ苛立ちが魔風の光の操作にも表れてしまっていることに気づき、メーベルは思わず主を盗み見る。どんな所作にも余裕を忘れぬヴェルトの執事として、今の動きは良くなかったのではあるまいか。
メーベルの心配をよそに、ヴェルトはどこか楽し気に魔火の光を宿らせたボウガンの矢を放ち、時に細剣を振るい、舞うように敵を屠ってゆく。
「っ……」
敵の囲みを突破する主の動きに見惚れて出遅れ、メーベルは息を詰まらせる。魔風の光を身にまとわせ、湖面を蹴る。淀みなく動き続けるヴェルトの上空、絶え間ない黒い人影と黒い狼の群れの攻撃を囮に、翼持つ黒い人影たちが何体か、ヴェルトに向けて弓を引き絞っている。
「先生!」
ナイフを投げることも忘れ、敵の攻撃を避けることも忘れ、メーベルはがむしゃらに敵陣に突っ込んだ。魔風の光を暴風じみて撒き散らし、主の肩に手を伸ばす。華奢な少年の肩を掴み、小さな体を己の体で抱き込む。肉の薄い背中と膝を起点に抱き上げ、踵を返す。魔風の光を周囲に放ち、迫る矢や剣の軌道をせめても逸らす。
「……ふむ」
メーベルに姫抱きの格好で大人しく助けられながら、ヴェルトはアメジストの瞳を僅かに細めた。すべての攻撃を避け切り、敵から距離を取って息を乱すメーベルの唇に、懐から取り出した『星の滴』を押し込む。
「え」
星の力を回復させる薬の甘い味と、唇に触れる少年の指に息さえ忘れた顔をする執事に、
「く、く」
主は艶やかな笑みを零した。自分の口にも『星の滴』を放り込みながら、
「さて、君のお陰で囲みも突破できた」
ヴェルトは湖上の一角を示す。虹色に煌く青い湖の一角、鮮やかな緑の蔓が絡み合い捩れ合い、空を目指す階と成ろうとしている。
「あのおじさん……」
学校の絵本で読んだ豆の木のようなものを湖上に見、見る間に大きく育っていく蔓のその根元に立つ麦藁色の髪の男を見、瑠樹は栗色の瞳に力を込める。
(……何か生やしてる?)
絡まりあって空へと伸びていく蔓は、螺旋階段のよう。けれどある程度伸びたところで、空に舞う翼持つ黒い人影や湖上を縦横に駆ける黒い狼たちが男のもとへと集まり始めた。
一角馬に乗った鎧の男と黒髪を高く結い上げた少年が麦藁の髪の男を護ってはいるものの、空に舞う黒い人影が蔦に攻撃を仕掛け生長を著しく阻害している。
「リアさん!」
男の名を呼び、柔らかなミルクティー色した髪の少年が脇を駆け抜けていく。湖上を蹴ったかと思えば、少年は不意に見えない足場を踏んで空中に駆けあがった。
「うわあっ」
思わず声を上げる瑠樹を振り返り、春彦はろっこんを発動させるために二度撫でた左耳のピアスから手を離して人懐っこい笑みを浮かべる。
「一緒に行くか?」
「うん!」
己にしか見えない足場を指で指し示すも、少年は黒髪を揺らして小さく首を横に振る。大丈夫、と笑みを返すなり、付き従うように傍らに立っていたもっこもこの白羊に身軽くまたがる。騎士の光が変化したらしい羊の背には、白い鳥の翼。
「影が邪魔してるってことは、あのおじさんは味方だねぇ!」
「お、賢いなー!」
「蔦で階段作ったら上まで行けるよねぇ」
年上のお兄さんに褒められて胸を張る瑠樹を乗せ、白羊は翼を羽ばたかせ宙に浮きあがる。
「ナルホドなー。なら、階段もリアさんも全力で護んねーとな」
瑠樹の言葉に頷き、春彦は身軽な動作で見えない足場を踏む。隣に並んで飛ぶ瑠樹に黒い影の攻撃が及ばないか警戒しつつ、
「春彦お兄ちゃん、乗って!」
「だな、そっちのが早そうだ!」
伸ばされた瑠樹の小さな手を取った。白羊の背に飛び移る。
「行っくよぉー」
空飛ぶ羊を駆り、瑠樹は蔦の階段の上空にたむろする翼持つ人影たちへと突っ込んだ。もこもこな見た目に反した硬い頭突きを叩きこまれ、黒い人影の一体が空から落ちる。瑠樹の意志を受け、白羊は蔓に群がる敵を蹴散らしながら、リアのもとへと降り立った。
「サンキューな!」
「はぁい」
羊から飛び降りるなり剣を抜き放つ春彦に手を振り、瑠樹は再び羊と共に空へと飛ぶ。
「リアさん大丈夫っすか?」
「ああ、……助かるよ、ありがとう」
蔓の根元を見据えたまま、リアはちらりと笑んだ。水瓶座の星の力を使っている間は身じろぎも出来ぬのだろうと踏んで、春彦はリアの周囲へと警戒を向ける。
(ルークにも剣術ちっと教わって、少しはマシになってるとイイんだケドな……)
焔のような形状した剣を、勇者を目指す少年から習ったかたちに構える。身に宿る星の光は魔火。植物で出来た階段の傍で使うわけにはいかない。
「よう」
ウエスタンハットを被り、翼持つ一角馬にまたがった男に気怠げな声を掛けられ、春彦は軽く手をあげた。
「これで楽になるな」
覇気のない口調でぼやき、
ベルラ・ガーネブラッディ
は片手に持つ剣の先をすらりともたげる。金の宝石を埋め込んだ剣は、湖の中から湧き上がる星の光を集めたかの如く白く輝いた。
魔法剣を持つベルラの隣、リアを守る態で細身の両手剣を構えた少年、
シーナ・キュクノス
が結い上げた黒髪を揺らし、灰色の瞳を胡乱気に細める。
「ベルラ」
「何だ、ちび」
有翼の一角馬の上から剣の師匠であるベルラの一瞥を受け、シーナは唇を尖らせる。
「リアは同じおじさんでもベルラよりずっと働き者ですよ」
空の敵へと至る足場を作ろうとしているリアの背を見遣り、もう一度馬上のベルラを仰ぐ。
ベルラは弟子の悪態を気にもしていない仕草で真紅の瞳を濃紺の空へと上げた。
「これが出来れば大分有利に働く」
ウエスタンハットから零れる藁色のくせ毛が揺れる。帽子と髪に隠れがちな右の頬、残酷なまでに鮮やかな翡翠の色に結晶化して煌く宝石が見えた。
「ちゃんとカッコいい所見せてくださいね、お師匠様」
弟子の言葉を背に、ベルラは騎乗する獣の翼を羽ばたかせる。
「おめぇさん」
「春彦」
「春彦、地上は任せる」
「おう」
周囲に風を広げて空へと駆ける師匠を追い、シーナは鳥のような軽快さで蔓の階を駆け上り始めた。生意気な口をききながらも、師匠は師匠。
(僕も)
蔓の階に沿い、一角馬を操って螺旋を描くように空へと昇っていきながら、ベルラは剣を振るう。軋みながら巨大化してゆく蔦を狙い襲い掛かってくる黒い人影を光の性質帯びさせた剣で断つ。放たれる影の矢を斬る。
(ちゃんと手伝うよ)
ベルラに剣を払い落され片翼を切り裂かれた黒い人影が宙によろめく。残った翼を羽ばたかせ、蔓の階に降り立つ。漆黒の闇でできた体のどこかから再び黒い剣を抜き放ち、蔓の階を昇ってきたシーナと対峙する。
「どこまでも戦うというのですね」
返事はない。そもそも言葉を発する器官さえ、感情さえ持たぬナニカなのかもしれない。
敵を殺める機能しか持たぬ黒い人影と切り結ぶ。そうするうちにも、上空の球形の影から生み出されて落ちてきた黒い狼が、くるりと宙返りして蔦で出来た坂の上に降り立った。着地するなり、シーナに飛びかかる。己の顔ほどもある顎を開いて襲い掛かってくる黒い狼を瞳の端に捉え、シーナは剣持つ手に力を込めた。
「っ……!」
鍔迫り合いながらも黒い狼の鼻面目がけて魔火の光を放つ。魔力の炎に鼻面を焼かれた黒い狼がもんどりうって倒れるのと、黒い人影の剣を捌いて懐に潜り込み剣を突きこむのはほぼ同じ瞬間。
「手ぇ貸せ、シーナ!」
息つく間もなく、ベルラの声で呼ばれた己の名に慌てて顔を向ける。階の先、道を塞ぐ恰好で有翼獣に乗ったベルラが立っている。
その更に先、階段を跳ぶように降りてくる黒い狼群。
ベルラが剣を掲げる。
師匠の意図を瞬時に解し、シーナは魔火の光が宿る右手をベルラの剣へと向けた。魔火の光が炎のかたちとなって宙を奔る。
弟子の炎を纏わせた魔法剣を片手に、ベルラは有翼獣を駆る。左右に分かれて飛びかかってくる狼群の片方を魔火の炎宿した剣で薙ぎ払い、
「放て」
もう片方の群れには有翼獣の角を向ける。一瞬の閃光と共、角から放たれた紫電が狼たちをまとめて撃ち据えた。
焼ける空気のにおいに眉をしかめつつ、シーナは有翼獣にまたがるベルラの隣に並ぶ。
「もうまったく! 急に言わないでください」
凄まじいまでの師匠の戦ぶりには言及せず、唇を尖らせて抗議する。
「慌てるでしょう、失敗したらどうするんですか」
「失敗なんざしねえよ」
興奮して嘶く有翼獣の首筋を叩き、ベルラはなんでもないように唇の端を持ち上げた。
「っ……」
師からの信頼の言葉に返す言葉を失い、咄嗟に視線を逸らした瞬間、ぐい、と腰を横抱きにさらわれた。息を呑む視界の隅、師匠の剣に貫かれて消えゆく黒い狼が見える。
己のよそ見の隙を突こうとした黒い狼の、黒い塵と化しながらも剥く牙の鋭さと凶暴さにシーナは瞳を顰めた。
「ありがとうございます……」
助けてもらえたことが思いがけず嬉しかった。それと同じほどに悔しかった。少し拗ねたように礼を口にするシーナを真紅の瞳に映し、ベルラは渋く笑う。笑みに歪めた唇は、けれどすぐ気怠げに引き結ばれた。
「こりゃあ厄介だなぁ」
面倒くさそうにぼやきながら、ベルラは有翼獣を空へと舞わせる。追いかけて来い、とシーナを見遣るなり、一直線に上空へと駆ける。駆けながら、笑う。
「ま、全力でやるだけさ」
宙を走り互いに絡み合おうとする蔦の先が、翼持つ黒い影の振るう剣によって断たれる。
「ああっ……」
別の位置に舞う黒い人影を空飛ぶ羊の突進で追い立てながら、瑠樹は小さな悲鳴をあげた。どれだけ懸命に追い払っても追い払っても、空の上から降りてくる黒い人影は尽きない。
向こうの蔦の群とこちらの蔦の群さえ絡み合えば、黒い影たちを生み出し続ける二本角の丸い敵にも届く階段と広場が出来上がる。それなのに、次々と降ってきては手にした剣を鉈のように振るって蔦を切り落とす翼持つ黒い人影たちのせいで、あともう少しのところで敵の大本に続く階段が出来上がらない。
息を切らせるもこもこ羊の首を撫で、瑠樹は唇を噛んで目を伏せた。
(効くかどうか、わからないけど)
駄目でもともと、と両腕に抱き上げるのは、戦場にも一緒に来てもらっている白兎のぬいぐるみ。
「ラピちゃん、手伝って……」
ろっこんの発動対象とするのは、蔦に切り掛かり階段を壊そうとする翼持つ黒い影たち。
「ラピちゃん、可愛いねぇ……和むなぁ!」
いつもは不特定多数の周囲に向けて発動し、精神を著しく和ませ脱力させる瑠樹のろっこんは、対象を特定することでその効果を集中させる。
本来ならば、そうして対象の動きをふうわりとその場に留める力は、けれど効果を表したのはほんの数瞬。
「っ……!」
僅かに攻撃の手を止めるも再び蔦に刃を食い込ませる黒い人影たちに、瑠樹は泣き出しそうに眼を歪める。人のかたちをしてはいるものの黒い影で出来た彼らは、そもそも心を持たぬのかもしれなかった。持っているとしても、あるいは命持つものに対する悪意のような感情しか持ち得ぬ存在なのかもしれなかった。
「やめろよぉー!」
瑠樹は喚く。空飛ぶ羊を突進させるその背で、子供用に仕立てられた小さな弓に毒矢を番える。とある青年からもらった毒矢は、万が一の悪用を懸念して使えていなかったもの。
(あとで、探して回収しなきゃあ……!)
毒矢を放つと同時、懸命に伸びようとし続ける蔦と黒い人影が振り上げる黒い剣の間に体を割り込ませる。
(皆があの笑う影のところに行けるよう、守るよぉ!)
「痛くても我慢ー!」
声を張り上げながら、迫りくる剣がやっぱり怖くて目を閉じて、
「よく頑張ったな」
間近に聞こえた男の声にそっと瞼を開く。
黒い塵になって風に散る黒い人影の向こう、有翼獣の背にまたがった背の高い男の姿があった。金色の宝石がはめ込まれた剣にまとわりつく黒い塵を一振りで払い、有翼獣の一駆けで蔦の階の最上まで飛んできたベルラは鋭い眼差しを周囲に向ける。
「まだ行けるか」
ベルラに問われ、瑠樹は奮い立つ。
「まだまだ、やれるよぉ」
黒い狼が飛びかかってくる。己の顔よりも大きな爪の一撃を剣で受け止めた途端、思いがけぬ重さと衝撃に春彦はよろめいた。畳みかけての二撃めを肩口に受け、たまらず湖上に叩きつけられる。吠えて飛びかかってきた狼の顎を咄嗟に掲げた剣で受け止める。
「く……ッ」
蔦の階段の作成にかかりきりで動けぬ水瓶座のアステリズムを仕留める好機と見てか、リアと背中合わせの格好で蔦に背を向ける春彦を半円に囲んでいた黒い狼たちが一斉に襲い掛かる。
「オマエらになんか、」
低く、春彦は唸った。黒い狼に押し負けそうになる腕や腿の筋肉が軋むほどに力が籠る。
「好き勝手させてたまるかよ!」
力の限り吼えると同時、全身全霊の力で黒い狼を跳ね飛ばす。立ち上がり体勢を立て直すよりも先、素早く左耳のピアスに二回、触れる。
今しもリアの背に食いつきそうだった黒い狼の数体が、見えない壁にぶち当たって湖上に転がった。
「へ、へへ……ザマミロ」
進化を経たろっこんは、使い方によっては足場としてではなく見えない防御壁としても使える。
「もう少しだけ、耐えてくれ……!」
黒い狼爪に切り裂かれた肩口から血を流す春彦の姿に眉を寄せ、リアが嗄れた声で叫ぶ。
「だーいじょーぶっす! 任せといてください!」
熱を持って痛み血を噴き出させる肩を見もせず、春彦は黒い狼の群れを見遣る。狼たちが群れられぬよう、その進路にろっこんの足場をいくつも作り出す。見えぬ壁に阻まれて戸惑ったように足を止める黒い狼たちを狙い、
「行っくぜー!」
魔火の光を炎と変え、放つ。
炎と見えぬ壁に狼たちが惑ううち、不意にリアがその場にうずくまった。厳つい肩を上下させるリアを背に庇いながら、春彦は視線を空へと伸ばす。
空高く伸びた蔦は固く固く絡み合い、最早多少刃で斬られようとびくともせぬ太さと幹となっていた。天辺は、空のゴンザレスにも届く強固で広い足場を形成している。
「できたねぇー!」
頭上からはしゃぐ少年の声が降る。白羊の背の瑠樹は、空の敵に至る蔦の階段の半ばに陣取る。ここからなら、階段の昇り口に疲れ果ててうずくまるリアも、蔦の根元も弓矢で守ることができる。
「すごいねぇ」
「お疲れ様でした」
「後は任せるといい」
春彦が作った黒い狼群の間隙を抜けてきた由貴奈が、メーベルとヴェルトが、リアに短い声を掛けて蔦の階段を昇り始める。
「オ、オォオオォオォオ!」
戦場中に響き渡る咆哮と共、シグマがまとわりつく黒い影たちをその巨体から放たれる回転斬りで吹き飛ばし、翼を広げて飛び上がる。蔦の階段に沿ってほとんど垂直に上昇し始める。
「おー、来た来た」
有翼獣の背で剣を構え、ベルラが呟く。構えた剣の向こう、星の力宿した戦士たちを間近に見ながら僅かも引く様子もない黒い影の大本――ゴンザレス太郎、としか呼ばれぬナニカが居る。
「お師匠様」
「うん?」
蔦の階段を一気に駆け上ったせいで切れた息を手早く整えながら、決戦を前にシーナは小さく笑った。
「ほんと、ちゃんとカッコいい所見せてくださいね」
<< もどる
1
…
14
15
16
17
18
…
51
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
【星幽塔】最終決戦! すべての希望に火を灯せ!
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
星のサーカス団
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
73人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年07月20日
参加申し込みの期限
2017年07月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年07月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!