異能バトルは鏡映しのなかで｜リアクション

異能バトルは鏡映しのなかで

■鬼人の体
　新田亮。能力名、サードフォース。
　呼吸を止めている間身体能力を三倍化する。更に倍加することで六倍まで高めることができる。
　シンプルな能力ゆえにあらゆる場面で使え、これまで数々の修羅場をくぐり抜けてきた。
　そんな彼を新たに襲ったのは、自身と全く同じ能力をもった偽物だった。
「俺を倒して成り代わろうって？　残念だがお前の夢は叶わない。俺が打ち砕くからだ」
　手加減はしない。
　速攻で最大の六倍パワーを発動。残像が残るほどの勢いで殴りかかり、常人の目には腕が増えて見えるほどのラッシュを繰り出した。
　それは相手も同じ。速攻のラッシュが浴びせられ、拳が空中で打ち合い空気の連鎖炸裂を起こす。
　一度飛び退く亮。
　速攻で潰そうというもくろみが被ったようだ。
　シンプルな能力ゆえに、正面からぶつかっていけば相打ちは確実。
「……」
　亮は限られた酸素量の中で脳をフル回転させた。
　能力が同じなら、弱点はひとつ。息を抜いた一瞬に最大のパワーを叩き込むのみだ。

　走って逃げる風を装って、亮は道ばたの石を拾った。壁を蹴ってターン。
　こちらへ向かってくる相手に石を投擲。
　相手は異常な反射神経で石をキャッチ。その隙を突くようにスライディングをかけ、相手の脇を抜けていく。
　途中で足を掴んで転ばそうと手を伸ばしたが、相手は瞬時に跳躍。
　不意打ちを仕掛けたのに相手はそれを見てから避けたのだ。
　伊達に動体視力が六倍化していない。
　逆にこちらに隙が出来てしまわないように転がって逃げると、亮は次の作戦を考えた。
「考えろ。俺を倒すにはどうすればいい。俺の弱点は……そうか！」
　次こそはとターンをかける。
　ファイティングポーズで正面から殴り合うように誘い込み、至近距離ませ迫った。
　そして、至近距離でもって『ワッ』と大声を上げた。
　強化されたろっこん能力は主に筋力や体強度に影響するが、内臓についた筋肉やそれに伴う肺活量にもそれなりに影響を与えていた。
　というより、能力を使用する際に息を止めなきゃいかんという理由から長く息を止めつつ激しく活動するという、水泳選手が使うようなスキルを自然と身につけていたのだ。
　相手も相手で、余りに大きい声で鼓膜に衝撃を与えられ、ぐらんと頭が揺れていた。
　骨や筋肉の強度は上がっても、見たり聞いたりする能力が衰えては困るということで鼓膜や三半規管までは強化されていないのだ。
　すかさず脳天を殴りつけ、勢いで殴り倒す。
「俺がこの能力を手に入れたばかりの時、パワーの大きさに振り回されそうになることもあった。我ながら恐ろしい能力だが、だからこそ使い方を考えなきゃならないんだよ」