異能バトルは鏡映しのなかで｜リアクション

異能バトルは鏡映しのなかで

■お嬢様なんかじゃいられない
　町がどうにも騒がしい。
　どこか慣れ親しんだ乱暴な風が吹いて、平和な空気を払っていくようだった。
　だがその理由はほどなくして理解できた。
「ははーん、『あたし』か」
　いつもの通学路の途中。レナ・ランベールは鞄をその場に放り投げ、目の前に立ち塞がった相手をにらんだ。
　相手もまた、レナ・ランベール。
　ギラリとした目の光と、血を媒体にして生み出したエアガンが、これから起こる全てのことを教えてくれた。
「やる気満々ってとこか。いいよ、面白いじゃん。やってやろうじゃないの……！」
　素早く横へ飛び、駐まっていた自動車の後ろへと転がり込む。
　エアガンによる銃撃が車体をはねていくのがわかる。一部はボディをへこませ、窓ガラスを粉砕していく。
　オモチャ扱いされ国内でも購入できるとはいえその性質はガス式の銃。ソフトパーツをガチの金属パーツに変えたりなんだりと色々な改造を施せば殺傷能力さえ得るアイテムだ。
　親指を噛み、ぷつりと出血する。
　血が空気にかすみ、銃の形になって固まる。手に収まったのはトンプソン・サブマシンガンである。
　相手もこちらもそうなのだが、エアガンを出現させる能力であるがゆえに改造はあとからしなければならない。ゆえにこれは、あくまでただのエアガンだ。サバゲーには使えるが、敵を倒す銃ではない。
　しかし。
「脳天にぶち込んでやるよ、レナ嬢！」
　銃撃がやんだタイミングを狙って身を乗り出し、射撃。
　相手はこちらに突撃をしかけてきた。
　エアガン程度なら当たっても大丈夫だと踏んだのだろう。
　それに、カチンときそうな挑発も効いたようだ。
「自分のことながら単純だね。けど、そりゃあくまで過去のあたしだ」
　去年の自分。
　昨日の自分。
　一分前の自分。
「それは全部、違うあたしだ。古いあたしだ。あたしは一瞬一秒ごとに成長してるんだ。例えば――」
　ピン、とコインを弾いた。
　回転しながら飛びあがるコイン。
　コインが最も高い位置に上がったところで相手の視線がそちらへ移った。
　その一瞬で、レナは懐から銃を抜いていた。
　その名もサタデーナイトスペシャル。
「古いあんたには、コレがお似合いだよ」
　至近距離でトリガーを引く。
　改造を施されたエアガンはその能力をフルに発揮して、相手の額に直撃した。
　人を殺すほどではないにしろ。強烈なパンチを叩き込まれたくらいの衝撃は走ったことだろう。
「楽しかったよ。じゃあな」
　銃をくるくると回すと、レナは銃を懐へと戻した。

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