【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス｜リアクション

【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス

　新天地と言えば『情報収集』！
「この辺りだと商人さん達が詳しいでしょーか？」
　首傾げ、とりあえずおやつを買おうと屋敷野梢はふらりと１の島の中を歩む。
　商人たちに問いかければ御伽噺ということの情報が出てくる。
　成程、と頷きながらレインボーベリーを手にした彼女は星幽塔で作成した様々な果物の触感や味、特徴を合わせ持った奇跡の果実だと言われているそれを商談の材料に使った。
　非常に美味であり、この階層でも高値で売買されているそれに商人たちはこぞって情報を出した。
　少しくらいならばと探索中に使用するための疲労、衰弱、各種毒素などに幅広く効果を発揮する『溶岩洞の畑』で栽培されているエリクシルハーブを差し出した。
　商人に対して情報を売買する以上はちゃんと取引しなきゃ失礼だと梢は笑み溢す。
「……あ、あと、そうだ。例の無人島、変わった植物とかありません？　万能薬とかに役立ちそーな感じの……」
「それならウチの特産でもいいのがあるよ、煎じ薬にすれば役に立つような――」
　商人たちから得られる情報は何も黄金花だけではない。
　今後の状況にも十分役に立つものも多いのだ。にんまりと笑み溢す梢に齎された情報は、薬剤の調合の知識だ。
　そして、黄金花にも負けず劣らずの花々も咲いているのだという。
　商人との取引で得た『黄金の花』、『万能薬の調合に使える素材』の情報。
　どれもが手にしていれば儲けものだ。口元に笑み乗せてその場を後にした梢は次の情報を得る為に商店街の中をぐんぐんと進む。

　花が咲くには条件がある――何度もそれを脳裏で反芻しながら轟は幾度も繰り返す。
　花が咲いている場所ならば噂話や御伽噺でこの階層でなら聞くことが出来るが、島内で花が咲く条件があるのだというのだ。
（相手は商人、条件を知っていてもタダじゃ教えてくれねえはずだ……）
　悩まし気な轟は商人たちの手にした情報の入手方法を探すべく商店を見て回っていた。
　並ぶ商品はどれもヘンテコだ。奇妙奇天烈と呼ぶに相応しい。緑色の奇妙な植物に紫の葉が生えている。
　鮮やかな黄色の円形に青色の葉っぱの生えた林檎のようなものを見つめる轟に商人たちは首を傾ぐ。
「お兄さんや、困りごと？」
　ザ・ストレイトを身に纏っているために表情は計り知れないが仕草や立ち居振る舞いから彼が真剣であることを感じ取れた。
「ああ、いや……黄金花の咲く条件を探してるんだ」
　正義の味方は交換条件に器用なものを提示しなかった――だが、彼は彼なりの流儀がある。
　海を護るのも正義の味方の役目。ザ・ストレイトが『かいぶつ』に対応して見せると拳を固めた。
「そうだねえ、お兄ちゃんなら『花』を咲かせることができるかねえ」
　その言葉に彼は首傾ぐ。轟がその言葉を噛み砕いている中で、彼を見かけたロベルト・エメリヤノフがその話の流れを聞き、意味深に頷いた。
「成程……僕達なら花を咲かせられる？」
「そうだねえ、お兄ちゃんたちならきっと――」
　きっとね、と囁かれた言葉にロベルトと轟は互いに頷き合った。
　きっと、オーブを灯せるのは自分たちなのだろう。船へと戻ったロベルトは瓶に炸裂イモとテルミツ唐辛子を詰め込んで、悩まし気に瞬いた。
　並べた武器は兄から言われた通りのもの。これをどう使用できるか。
「ものは試しに、だね」
　海上戦である以上、船に落とさなければ大惨事は起こらないはずだ。
　ピエロットをぐるりと囲んで作戦会議を行う事となった１の島探索組は得た情報を並べた。
　月が購入した地図や羅針盤。それを頼りに進むこととなる。
　月詠や夏朝が商人たちから草木を切るナイフや食料を貰い、島内の冒険譚を耳にしたことも大きい――彼女たちで言えば、この階層のオーブが灯れば今後の商業が活性化することを約束してきたことが大きな成果なのかもしれないが。
　みつびが豪が手に入れた情報と轟が聞いたものを合わせれば、花は求めるものの前で咲くが力ないものの前には決して姿を見せないのだという。
「……なるほどね」
　意味深に呟くロベルトに「難しいねえ」とみつびは首傾ぐ。
　１の島から飛び出せば、２の島へ向かう海域は危険がいっぱいだ。