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春の嵐の只中で
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頬に誰かの温かい掌を感じて、瞼が開いた。
電灯を落とした寝室のベッドの上、
獅子目 悠月
は琥珀色の瞳を瞬かせる。羽毛布団の中の熱で温かくなった腕をもたげ、頬に触れる誰かの掌を掴んで、
「……ロベルト……」
小さな息と共、寝起きの掠れた声で呟いた。
息の触れるほど間近に、一学年年上の友人の顔がある。
薄く開いたカーテンから流れ込む月光に友人の寝顔を眺め、悠月は掴んだ手を布団の中へ押し込んだ。起きる気配も見せずに熟睡している
ロベルト・エメリヤノフ
の、ロシア人であるがゆえの色素の薄い頬をお返しのように掌で軽く叩き、そっと起き上がる。
冷たい床に裸足をつける。
視線を伸ばせば、突然やってきては泊めろとねだる友人のために用意した簡易ベッドが月影に見えた。
別の布団に寝かせたところで、ロベルトは夜半過ぎには気付けばいつもこちらのベッドに潜り込んできている。
決まった家を持たぬところも、知り合いの家を転々としているところも、こうして布団に潜り込んでくるところも。
(まるで野良猫だ)
ちらりと思い、悠月は唇に小さな笑みを滲ませた。
立ち上がった肩を滑り落ちて来た赤銅の髪を片手に掴み、背中に流す。枕元に置いていたヘアゴムで緩く束ねつつ、睫毛を伏せる。目が醒めたのはロベルトのせいではない。
最近、ひどく眠りが浅い。
(……いや、わかっている)
心に呟いた途端、どうしようもない不安が冷たい恐怖と絡み合って込み上げた。唇を噛む。喉を締め付けるような嗚咽の気配を噛み殺す。ロベルトの手が触れた頬を片手で押さえ、顔が歪むのをどうにか堪える。
(ああ、)
縋るように、思う。
(歌わなければ)
歌えば、そうすれば頭の中は空になる。
(歌わなければ)
友人を起こさぬよう、足音を殺して部屋を出る。
悠月の暮らす星ヶ丘寮は、生徒ひとりに与えられる一室がほとんどひとつの邸宅の様相を成している。客室さえ擁しているものの、悠月はそこを歌の練習用として使う。
初めてロベルトが泊めてと押しかけて来たときはそれを理由に断ったが、彼は諦めなかった。一緒の部屋でいいからと半ば強引に泊まって以来、気紛れにやって来ては寝泊して行くようになってしまった。
最初の頃は眉を顰めたりもしてみせたものの、今となっては然程の感慨はない。
月影の廊下を渡り、客間の扉を潜る。
カーテンを閉ざさぬ窓の向こう、春の朧月が見えた。床にふうわりと降る月光を爪先に踏み、窓辺に寄る。胸を塞ぐ不安や恐怖や、言いようのない気持ちを追い払うように、月の光を深く吸い込む。
そうして、歌う。心の中を吐き出すように。ともすれば胸に吹きだまる闇を清めるように。
伸ばした指先には何も触れられず、ただ空を掴んだ。
冷えて行くばかりのシーツに落ちた自分の手をぼんやりと眺めて後、
(もう春休みか……)
期末テストの夢を見ていたロベルトはやっぱりぼんやりと思う。
胸に浮かぶのは、最近は星ヶ丘寮の自室に快く泊めてくれる悠月の完璧な美少年な横顔。寝る前に少し話をしたとき、帰省すると言ったそのどこか苦しげな表情。
(そのまま戻ってこなかったらどうしよう……)
益体もない想像だと半ば断じながらも、一度感じた不安は早々には消えてくれなかった。
(他の美少年とも遊べるけど、悠月みたいに理想ピッタリの子はなかなかいないからね)
手中の珠を愛でるように年下の少年の顔を思い浮かべる。艶やかな赤銅の髪、同じ色の長い睫毛に縁どられた榛色の瞳、滑らかな少年らしさを僅かに残した頬。寝子島で出会った美しい歌声の少年は、容姿だけではなくその凛とした性格さえも、己が理想に思う少年像と合致した。
(貴重な美少年が居なくなってしまうのは嫌だな……)
そこまで考えて、ロベルトは数度瞬く。悲しい想像をしてしまったせいか、眼が冴えてしまった。
(悠月起きてるかな)
そろりと身動ぎして、気づく。傍らで寝顔を見せていてくれたはずの悠月がいない。
「……獅子目?」
布団の中にいるのに背中がひやりとして、慌てて起き上がる。布団をはね退け、ベッドのどこにも悠月の姿がないことを確かめてからベッドを降りる。
どうしたんだろう、と首を捻る。広い部屋をぐるり見回しつつ、廊下に続くドアをそっと開く。
高い窓から月光が静かに流れ込む廊下へと視線を伸ばしたところで、微かな歌声を耳にした。息を潜めるようにして耳を澄ませる。
(……客間かな)
人気のない暗い廊下に踏み出すには少し勇気が要った。けれど、ここでじっとしていても悠月はまだまだ帰ってこないかもしれない。一人きりで布団の中に丸くなっているのは尚更怖い気がした。
足音を殺し、そうっと歩き始める。白銀の月の色ばかりに染め上げられる廊下を歌声を頼りに辿り、一枚の扉の前に立つ。歌声は、間違いなくこの部屋から聞こえてきている。
聞き間違えようのない悠月の歌声をドアの向こうに聞き、思わず安堵の息が零れた。
零れた息が戻らぬまま、ドアを開く。
「悠月!」
月光の銀を赤銅の髪に弾かせ、部屋の窓辺に悠月が立っていた。
「……っ、」
すぐさま駆け寄り抱きつこうと踏み出し掛けた足が一瞬たじろぐ。
少年の頬を滑り落ちる月影がまるで涙の跡のようにも見えて、けれどそれは瞬き二つ分の間だけ。
「起こしたか?」
胸を荒らす嵐を鎮めるような抑えた息をひとつして、悠月は淡く静かに微笑んでくれた。
「すまない。ただ、眠れなくてな」
理想とする美少年の心の強靭さを表すような美しい笑みに、止まりかけた足が動いた。甘えるように、縋るように、ロベルトは身体全部で悠月に抱きつく。
(……バレないようにしなきゃ)
受け止めてくれた悠月の腕にしがみつきながら、ロベルトは臍を噛む。ひとりきりを怖がってしまったことを、普段は飄々とした振りで隠している幼い素の自分が出てしまいがちになっていることを、できるなら悠月には気付かれたくなかった。
(……うう、)
けれど、うっかり素を出してしまっても、悠月は驚いた素振りこそすれ嫌悪を示しはしなかった。
(なら、いいかな……)
気持ちが緩む。本当は、子どもっぽい素の自分は嫌いだった。だって幼いままでは、夢である美少年ハーレムはきっと作れない。理想の美少年である悠月の心を自分のものには出来ない。
(本当は、もっと大人っぽくて、……)
脳裏を過るのは、昔憧れ片恋をした少年。見た目の美しさも、気高い心根も、何もかもが完璧だったあのひと。
(もっと……彼みたいにならなくては……)
でも、今だけは。
理想の美少年の顕現たる悠月が抱きとめてくれている、今だけは。
(いい、よね……)
体重を掛ける。押し倒すように窓辺にふたりで座り込む。カタリと軋む窓枠の音に躊躇ってか、悠月が小さな小さな息を零した。
「どうした?」
低い声音に、頭を撫でてくれる掌の優しさに、ロベルトは僅かな違和感を覚える。悠月の腕は、ただひたすらに甘やかして慰めてくれる力強さだけではなく、己と似たような不安や心細さを内包している気が、した。
「だって……寂しくて」
感じた違和感を押し隠して、ロベルトは悠月に甘える。
「春休みの間、居ないんだよね?」
細い声で言った途端、悠月は息を吐くように笑った。可笑しいからではなく、ロベルトの幼さに対する苦笑でもなく。優しく優しく、どこか嬉しそうに。
その瞬間、悠月を綺麗な瞳を曇らせていた不安や心細さが霧散したように見えて、ロベルトは瞬いた。
「獅子目……?」
「なら、今のうちに充電しておけ」
腕の中から見上げて来るロベルトに、悠月は力強い笑みを向ける。両腕に力をこめ、抱きついてくるロベルトを抱きしめ返す。
(大丈夫だ)
寂しい、と言ってくれる友人がここには居る。
それは己の帰る場所はここだと間違いなく言える、確かな証拠。
(だから、大丈夫だ)
迷い猫をあやすように優しく、ロベルトの背中を叩く。そうしながら口をついたのは、海外の子守唄。
ロシアの生まれでありながらほとんど日本語しか喋れぬ彼には歌詞も伝わらぬだろうが、それはそれで良かった。己と、年上の友人が抱く寂しさを眠りにつかせんがため、悠月はただただ優しく歌う。
(ああ、だが)
月光に溺れ独りで喉を震わせていたときよりも、心はずっと軽くなるよう。
子猫のように肩にしがみついてくる友人の瞳に宿っていた、恐怖にも似た感情が薄れていく。乱れがちだった息が穏やかになり、終いには安堵まじりの欠伸が落ちる。眠たい子供のように体温が上がり始める。
それでも、悠月が歌を終えて唇を閉ざせば、ロベルトは悠月からそっと身体を離した。月の光を背にする悠月を眩しげに見、
「ちゃんと戻ってきてね」
呟く。
「……じゃないと、僕……」
言葉の続きを寸前で呑み込む。その代わり、ふわり、眠たげに微笑む。
「キス、ちょうだい」
幼子のようにねだられて、悠月は笑った。
「おやすみのキスがないと寝れないような年か?」
からかうように言いつつ、ロベルトの頭を抱き寄せる。眠たくても眠れずにぐずる赤子にするように、熱を帯びた額に唇を寄せる。
「子ども扱いしないでくれよ」
悠月のキスを受けながら、ロベルトは悠月の胸を押した。そうじゃないんだよ、と喚けば、色白の頬が紅く染まった。
「君は理想の美少年だから、……他の人とは違うんだ」
言い捨てて立ち上がり、立ち去ろうとしてまた座り込む。床に手をつき、伸びあがるようにして悠月の頬にお返しのキスをする。どこかきょとんと目を瞠る悠月におやすみと囁き、足早に部屋を出る。
「ああ、……おやすみ」
友人からの口づけを受けた頬を片手で押さえ、悠月は立ち上がった。
(理想の……?)
ロベルトが口走った言葉に引っ掛かりは覚えるものの、今日はもう遅い。またいつでも、尋ねる機会はあるだろう。
今はこのまま、もう少し歌ってから眠りに着こう。
(こういう夜も悪くない)
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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