this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
春の嵐の只中で
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
…
12
つぎへ >>
三月の茜の海風に惑うように、蝶がひらり。
夜空の色した翅を羽ばたかせ、海に向けて光の路を投げかける灯台の回廊へと舞い降りる。
瞬間、蝶は蝶から少女へと姿を変えた。
茜の風が三つ編みに結った髪を夕闇になびかせる。
鮮やかな夕陽を透かせる栗色の髪を片手に抑え、
屋敷野 梢
は人が立ち入らぬはずの灯台の回廊に立ち上がる。ほぼ真下に見える緋色の海を夏草色の瞳に映しつつ、回廊を囲う鉄柵に腰掛ける。躊躇うこともなく、柵の向こうの宙へと細い足を投げ出す。
滅多とひとが立ち入らぬここは、梢にとって独りになりたいときに限って訪れる秘密の場所。
海に空に巡る灯台の光を背に、彼方の海へ息を潜めるように夏草色の眸を投げる。
(もう私は吹っ切れてる)
断固として己の心を断じようとして、
(いつまでも引きずったりしない、……つもりでしたけど)
できなかった。
「簡単にはいかないなー」
おどけるように自嘲する。
塔の壁を潮風が駆け上る。空へとさらおうとするかのような風に細い身体を打たれて、咄嗟に腰掛けた鉄柵を両手できつく掴む。
掴んだ鉄の心臓を掴むが如き冷たさに、思わず睫毛を伏せる。
(だって君を出汁にしてるみたいで嫌だ)
伏せた瞼の裏、今も鮮やかに思い浮かぶ、今はもうどこにも居ない親友の笑顔。中学の頃から微塵も齢を重ねなくなったその顔を風に放つように、瞳を開く。瞬きを繰り返す。
(閉じていた私を外に出してくれたのは、確かに君でした)
その『君』が消えてから、もう何度も何度も、発作じみた感情の波に襲われ続けている。そろそろ収まればいいと願っても願っても、春の嵐のようにその波は思いがけない時に心に雪崩れ込んでくる。
(言い訳をするのなら)
それを許してもらえるのなら、と茜の空を仰ぐ。
(その波も大分弱くなってきてるんだよ?)
昔は、忘れることが怖くて堪らなかった。忘れるものかと歯を食いしばるようにして親友の顔を、いつか掛けてくれた言葉を、差し伸ばしてくれた手を、それこそ何度も何度も心に刻みつけた。そうしたがために心がどれだけ痛もうと構わなかった。
けれどそれも、以前の話。今はもう、記憶の彼方に霞んで行く笑顔も掌の温かさも、良いことのように思えるようになってきている。
それでも、海を渡って流れ寄せる風の冷たさにも似た心の奥から湧き出す寂しさはどれだけ抑えようとしても、消えない。
(……たまには良いですよね)
これも言い訳でしょうか、と唇を少し笑ませようとする。
寂しさをどうしても押し隠せないときは、独りを選ぶ。だって親しい人たちには弱さを見せたくない。きっと助けようとしてくれるから。
(……けど、)
人間にかけがえなんて存在しない、梢はそう考える。同じ人間などいないと。たとえ親しい人の優しい言葉で再び立ち上がって歩き出すことが出来たとしても、いなくなった人が帰ってくるはずもない。であれば、また必ず同じ波が起きる。また挫けてしまう。
きっと、何度も何度も、己は同じことを繰り返してしまう。何度も何度も、親しい人の気を揉ませてしまう。それは嫌だった。
(一時の波なんて、どうせ凪がくれば収まります)
己の心の波を知悉する梢は己の心をそう裁く。
(海に出る気もないし、立派な堤防なんて必要ないし、)
親友を亡くしたことに起因する感情の波など、独りで耐えればいい。
息を詰めるように己を律し、梢は海に漂う夕陽の色に瞳を細める。
とはいえ、それは己に限った話。
(ただの自己防衛というか、……自己欺瞞と言うか)
例えば親しい人にも、親しくない人にも、そんな冷徹さは押し付けたりしない。思ったりもしない。
「……んん?」
空の色に溶けようとする遥かな水平線を眺めていた瞳が、ふと瞬いた。海風に揺れるスカートのポケットを探り、着信を知らせて鳴る携帯電話を取り出す。
夕闇に眩しく光る画面に記された名を目にして、梢はほんの僅かに微笑んだ。迷うことなく通話ボタンを押し、電話に出る。
「はーい、壬生先輩?」
「やっほぉ、こずえちゃん」
耳に当てた携帯電話の画面の明るさを視界の端に感じながら、
壬生 由貴奈
は黄昏の光宿した黒い瞳をもたげた。
紅茶色に染めた髪が海風に乱されるのも構わず、暮れて行く空の色を写し取る海を眺める。
「今、シーサイドタウンの海辺に居るんだけどねぇ」
迷惑じゃなかったら、と言いかけたところで、電話口から聞こえた言葉に黒い瞳が和む。
「ん、そう、寝子ヶ浜海岸。……交番から真っ直ぐ降りて来た辺りの石段だよぉ」
睫毛の影に瞳が沈む。電話口にさえ聞こえないほど静かに息が零れ落ちかけたところで、強引なくらいに唇が持ち上がった。頬に無理矢理な笑みが刻みこまれる。
「ありがとー」
できるだけ軽く聞こえるように告げ、通話を終了する。画面の暗くなった携帯電話を両手に包み、砂浜に至る石段に座り込んだ両膝に落とす。
春の海に起ち上がっては崩れる白波をただ眺める。
(……もう)
一人でいるのには慣れたはずだった。そのつもりだった。それなのに、
(なんでこんな気持ちになるんだろ)
星ヶ丘の自宅で、いつものようにクッキーを焼こうとしていただけだった。型抜きした生地をオーブンに入れてスイッチを入れたところで、不意にその手が止まった。
オーブンの窓に写り込む、自分以外に誰も居ない部屋を見つめ、自分以外の誰の気配もしない部屋を振り返って、――気づけば、春コート一枚羽織った格好で、独り暮らしのマンションをふらりと彷徨い出ていた。
蜘蛛の巣が纏わりつくように、払っても払っても胸に絡んで消えない感情を持て余し、ひたすらに歩いた果て、行き止まりにぶち当たるように海へと行き着いた。
人気のない春の海で潮騒を耳に夕風を肌に感じつつ、どうしようもなく、思った。
――誰かとお話したい
普段ならば絶対に憑りつかれぬはずの感情を前に、一番に浮かんだのは、二学年下の後輩の顔。
(もう一人暮らしも長いのにねぇ……)
だからこそ、突如として胸に巣食った感情が尚更に不思議だった。こんな感情は、もうとっくに擦り切れてなくなったものと信じていた。
携帯電話を脇に置き、膝を抱える。あーあ、と茜の空を仰いで、――風に泳ぐ、黒地に翠の蝶を見た。
ひらりと傍らに舞い降りた蝶は、瞬きのうちに梢の姿となる。
黄昏の風に三つ編みの髪を跳ねさせ、梢は当然のように由貴奈の隣に腰を下ろした。
「こんばんはー、壬生先輩」
「やっほぉ、」
幻のように現れた梢をしばらく見つめ、梢の笑みが幻でないことを確かめて、由貴奈はようやく微笑んだ。
「来てくれてありがとー、こずえちゃん」
「いいえー、だいじょうぶですよー」
「……迷惑じゃなかったらいいんだけど」
風音に紛れるほどの先輩の呟きを確かに耳に捉え、梢はけれど何も言わず、由貴奈の肩に肩が触れるほどに近く身を寄せた。
「お話、しましょう」
言葉にはしていなかったはずの願望を梢から請われ、由貴奈は瞬く。思わず梢を見遣れば、彼女は横顔でちらりと笑んだ。見透かすような瞳で真っ直ぐに見つめられ、由貴奈は微笑みを返そうとして失敗する。
胸に宿った感情は寂しさなのだと言い含められた気がした。それを感じているのならば、出来る限りのことをするからと。したいから、と。
先輩は大切な友人だから。――そう、言われた気がした。迷惑だなんて思わない、気を揉まされてるなんて思わない。ただ純粋に手を伸ばしたいだけなのだと。大切に思うひとを助けたいだけなのだと。
「……うち、」
胸の疼痛の正体が言葉となった。掠れた声で、それでも吐き出す。
「両親五年くらい前に死んじゃって、それからずっと一人暮らししてきたんだよね」
寂しさの核にあるのは、普段は幾重にも隠して表には出ないようにし続けて来た孤独感。
「寝子島に来たのも、親の死がきっかけだったかな。本土には親戚がいるけど、」
中学生だった己の心に孤独感を植え付けたのは、
「……どいつもこいつも金の亡者ばっかり」
甘言を弄し、受け継いだ巨額の遺産を掠め取ろうとした親戚たち。
――家にいらっしゃい、成人するまで養ってあげる
――あんたの家には子供が居るだろう、うちにおいで、由貴奈ちゃん
目の前で繰り広げられる、親から託された遺産に目が眩んだ大人の言い争いには、心底吐き気がした。
「嫌になるよぉ」
親戚たちから伸ばされた手を全て払いのけ、両親との思い出が残る住み慣れた土地を離れた。逃げ込むように寝子島に移り住んだ。セキュリティの厳しい星ヶ丘のマンションを選んだのは、親戚たちが追って来ても決して入り込めぬことも理由の一つ。
「……あっ、」
悪夢から醒めるように息を吐き出すと同時、由貴奈は丸めがちだった背を伸ばした。
「気分悪くなるよね、こんな話」
できるだけいつものように、眠たげな眼差しでへらりと笑ってみせる。今度は笑えたと安堵する。そうして、今日初めて梢の顔をじっと見る。
己を労わるでもなく慰めるでもなく、ただただ話を聞いて瞳を見つめてくれた梢の瞳にも、己と同じような感情の色が灯ってはいまいか。
「こずえちゃんも、もしかして」
その先の言葉を口にはせず、由貴奈はただ静かに梢の手を取る。冷たい手を握りしめれば、梢は迷うように瞬いた。
「……なら、誘ってよかったのかな」
今度は由貴奈から笑ってみせる。
「こずえちゃんがよければ、うちも話を聞くよぉ。うちの話を聞いてくれたお礼、ってことでね?」
透徹した瞳に見つめられ、梢は柔らかな息を吐いた。一瞬だけ視線を夕空に迷わせて、コートのポケットを探る。取り出したのは、一枚のコイン。
指で弾き、空へと跳ね上げる。
「表なら、お話しましょー!」
明るい声と共に手に掴み取り、開く。コインの表裏を読み取って、梢は瞳を淡く細めた。
(……たまには、良いですよね)
「じゃあ、壬生先輩」
今は一人で耐えなくてもいい。
このひとが、隣に居てくれるから。
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
…
12
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
春の嵐の只中で
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!