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春の嵐の只中で
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空っぽのリビングにも、キッチンにも、廊下にもトイレにもバスルームにも。全ての部屋に光を灯す。それでも足りず、テレビの電源を入れる。できるだけ明るくて馬鹿馬鹿しいバラエティ番組にチャンネルを合わせる。
冷え切った爪先に床を踏み、キッチンで温かくて甘いココアを入れる。熱を帯びたカップの縁に唇を触れさせながら、テレビの前のソファに蹲る。毛布を頭から被り、クッションを抱きしめる。
『パパ』が居てくれるときはあんなに温かくて明るい場所なのに、『パパ』が居ないだけで、この家の中はこんなにも暗くて冷たい。
(……くそ)
腹の奥に響いた己の声に、
天宮城 因
は薄紅の瞳を瞬かせた。甘いリップで色づかせた唇が歪む。唇を噛んだ途端、口の中に広がるリップの甘い香に知らず舌打ちをして、
(……ああ、くそ)
もう、隠せなくなってしまった。唇に塗りつけた笑みが剥がれ落ちてしまった。だって『パパ』がいない。あの人の姿かたちの中に、口調や性格の中に、己を押し込めている意味がない。『パパ』が特別に想う人の真似をしていてもいなくとも、誰も己を見てはいない。
誰も、己を見てはくれない。
(誰も、……)
震える指先を拳の中に隠す。人目があればどれだけでも上手く隠せるのに、笑顔の奥に己を抑えつけてしまえるのに。
(誰にも、)
もういらないと捨てたはずの記憶が瞼の裏に迫る。見上げる視線の先、部屋を出て行く母親の背中。縋り付こうとした己を振り払った母親の腕と、おぞましいものを見るような母親の瞳。思い出したくもない、飢えて汚れていくばかりの己の痩せた手――
誰も居ない家の中、被った毛布をかなぐり捨てて立ち上がる。リモコンを殴りつけるようにして煩いばかりのテレビを消す。冷たい瞼を拳で擦る。金から薄紅に色合いを変えてロールする髪を結うリボンを解いて床に落とす。
笑みの消えた白い頬で自室に戻り、パーカーを羽織る。フードを目深に被る。鉛筆を握り、机の引き出しの奥に仕舞いこんでいるスケッチブックを取り出す。それだけを持って、家を出る。
(そうだ、昔から……)
昔から、一人でいる時はこうだった。
ふと思い出した途端、唇が歪んだ。それが笑みなのか、嗚咽なのか自分でも分からぬまま、因は一人、夜の住宅街を歩く。
誰も居ない散らかり放題の部屋で、もう持てないくらいに短くなったクレヨンで、広告の裏の白紙を見つけては絵を描いた。
(温かいごはん、温かいお風呂、綺麗な部屋、抱きしめてくれる『おかあさん』、……)
希望を、理想を、描き続けた。
春の闇に踏み込み続ける己の靴先を見下ろしたまま、息を吐く。
(寂しさなんて、)
自嘲する。
(もうとっくに慣れ切ってしまったはずなのに)
それなのに、こうして時折姿を覗かせるのは何故なのだろう。堪えきれぬほどに思ってしまうのは何故なのだろう。
人影を見ては道を変え、人の声を聞いては暗い路地へと足を早める。誰も来ない場所を探す。逃げる。
歩いて歩いて、春宵の果て、閑静な住宅地の奥に佇む小さな公園を見つけた。
外灯のひとつもない公園には、小さなベンチとジャングルジムと滑り台があるばかり。朧月に幻じみて浮かび上がる夜の公園に紛れ込む。静まり返った公園のジャングルジムの天辺に登り、冷たい鉄の棒の上に座る。
スケッチブックを開く。ポケットに押し込んだ鉛筆を取り出す。
どこからか漂う春の花の香含んだ空気を、空っぽの胸に満たす。小柄な体が尚更縮むほどに吐き出し、瞳をもたげる。今だけは、この瞳は、
(『俺』の目だ)
朧月に霞む家々の屋根を、地面に落ちる遊具の影を、月影に蕾をつける白木蓮の樹を。他の誰でもない、己自身の瞳に映したものを描いて白い頁を埋めていく。心に冷たく開いた隙間を埋めるように、白い空白に鉛筆の黒い線を重ねていく。これだけは、誰を真似ているわけでもない。因自身が持てる唯一の線。
描くものがなくなれば場所を移す。
人気のない橋の下から見上げた月を、塀に蹲る猫を、春宵の風に鳴く電線と電柱を、月明かりを震わせる川面を、月光の道を作る海を。歩いて歩いて。歩いた分だけ頁を埋める。
真っ白だった頁が幾枚も鉛筆の黒の線に埋まったところで、足が止まった。
(……ああ)
冷え切った息を吐き出す。胸のかさぶたを破って這い出してきていた己は、『俺』は、もうすっかりと息を潜めている。
(うん、)
「もう大丈夫ですぅ」
いつもの口調で自分自身に甘く囁く。深く被っていたフードを下ろし、唇に人差し指で触れる。魔法を掛けるように、或いは呪いを掛けるように、唇に笑みを刻む。
跳ねるような足取りで帰路を辿り、電気を灯したままの家に入る。
「ただいま帰りましたぁ」
いつも通りの明るい声を空っぽの家に放つ。明るいリビングに戻り、床に落ちたリボンを拾う。いつも通りのかたちに髪を結わえ直しながら廊下を辿り、部屋のゴミ箱にスケッチブックを捨てようとして、
(……いらないのに)
指先がスケッチブックから離せなかった。
(『俺』なんてどこにも要らないはずなのに)
ゴミ箱の真上に留まるスケッチブックを見つめる。この中にあるのは、母親にさえ愛されなかった『俺』が描いた絵。母親に愛されなかった己を、『パパ』が愛してくれるはずがない。だから捨てなくては。『俺』なんて捨てて、せめて『パパ』が特別に想うあの人のようにならなくては。
そう思うはずなのに、『俺』なんて捨てたいはずなのに、――捨てられなかった。
だからせめて、引き出しの奥深くに仕舞いこむ。捨てる振りをして鍵を掛けて隠してしまう。
それが何故なのか、今はまだ解らぬままに。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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