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春の嵐の只中で
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寝子島図書館近くの小さな空き地では時々猫の集会が気紛れに執り行われる。
集まっては散開し、塀や萌え始めの柔らかな雑草の上に寝転がる猫たちを、
後木 真央
は人の目の届き辛い草叢に三角座りしたまま眺める。
集まって来たのと同じに気紛れに近寄って来てくれた猫に小さく頬を緩め、そろりと指先を伸ばす。冷たい鼻先に触れられたくすぐったさに笑おうとして、失敗した。浮かびかけた笑みは笑みにもならず、出来そこないの笑顔をどうしようも出来ず、真央は抱えた膝に額を押し付ける。
小さな体を小さく小さく丸めて、そうしているうち、空き地を柔らかく照らす春先の昼下がりの眩しい光がくすみ始めた。傾き、精彩を欠いて行く太陽の光に影を長く伸ばして、集まっていた猫たちがばらばらに散らばって去る。皆、行ってしまう。
「真央ちゃんも行くのだ」
足元に這い寄って来る春の黄昏の冷たさを振り払うように、殊更に元気よく言い放つ。跳ねるように立ち上がる。
バイトもないこんな日は、そろそろ猫鳴館に帰ってしまおう。
そう決めて、帰り道を脳裏に描く。いつもの通学路を逆走してしまえば、途中で猫に気を取られなければ、そんなに時間は掛からない。
跳ねる。肩に背中に降り積もって氷雪のように凍りついて重くなろうとする何かの思いを払いのけるように駆け出す。
黄昏を、地面に紅く散る椿の花を、競うように萌え出ずる早春の草を、爪先に触れる何もかもを蹴飛ばして走る。
(……あれ)
止まらぬ足を視界の端に捕らえ、翡翠の瞳が歪む。いつも使う、シーサイドタウンの賑やかな道とは違う道を選んでいる。足が向かうのは、旧市街、またたび市動物園の舗装されていない道。暦の上では春となって日は延びて来たとは言えそろそろ暗くなろうとする、ほとんど獣道に近い道を、どうして息を切らせて走っているのだろう。
「っ、……」
熱を帯びた息を吐き出す。足が止まったのは、猫又川に架かるほとんど山中な小さな橋の上。
黄昏の光の中、誰もいないことを確かめる。
(誰も、いないのだ)
安堵なのか寂しさなのか、心に湧き上がる想いにつける名が分からなかった。
それでも、この道を選んだ理由には容易く辿り着ける。
人に会いたくなかった。誰にも会いたくないから、人のいない道を選んで走った。
(誰もいない)
そう思ってしまう自分も居る。人恋しい気がしないわけでもない。けれど、
(独りがいい)
橋の上に立つ。九夜山の中腹辺りに位置する橋の上から視線を伸ばせば、春霞に紛れそうなほどに頼りない街の光の向こう、茜に染まろうとする空と藍に沈もうとする水平線が見えた。
川面を登って来た風が頬を撫で、髪を乱す。周囲の木々と共、心の底にある寂しい気持ちをざわめかせる。
(独りでいい)
そう思ってしまうのは傲慢だろうか。
それでも、人の話す言葉を聞きたくなかった。人の視線を追いたくなかった。
それは決して、自分に向けられるはずのない言葉だから。聞いてしまえば、追ってしまえば、自分が他人にとって書割以下だと思い知らされてしまう。
嫌だった。そんなこと、知りたくもなかった。
「……いや」
呑み込もうとした言葉が嗚咽じみて唇から零れ落ちた。黄昏に落ちた言葉を拾い上げようとして、その場にしゃがみこむ。
(……空っぽだ)
自分の掌を見下ろして、つくづく思う。自分が空っぽなのを知っていて、だから焦って何かを詰め込もうとした。開け放ったまま待ち続けてみたり、詰め込んだものを探し出して放り出そうとしたりもした。
しょうもなく足掻いているうちに、空っぽのままのうちに、もうすぐ一年が経つ。
一年のうちに詰め込んだものをスマートフォンのメモリに確かめようとして、画面に示された電波状況の悪さを表すマークにその気も失せた。スマホをポケットに落とす。
零れた息に、首をもたげる力さえ奪われた。冷たい石の欄干に縋るように、その場に膝をつく。
「あーあ、なのだ……」
他人と関わるのが面倒くさかった。話すことも。息をすることすらも。
(いつからだった?)
それを思い返すことすら、今は億劫だった。
考えるのを止める。橋桁一枚下を流れる川の音を耳にしながら、川に引きずり込まれるように立ち上がる。護岸と言うもおこがましいほど、雑草が生えただけの法面に下り立つ。そのまま、川の流れと一緒に海まで駆け下る。
草や石に足を取られながらも、時折転びながらも、走る。走れば走るほど、草と岩だらけの地面がなだらかになってくる。走りやすくなってくる。ポケットの中のスマホをちらりと覗けば、接続状況も改善している。
乱れる息にも構わず、走る。寝子島街道も寝子電の線路も越えて、目指すは海。ジョギング中の誰かとすれ違っても、自転車を停めスマホを見つめるよく知る顔の誰かとすれ違っても、足は止めない。ただ一心に、海へ海へ、走る。
草萌える河原からアスファルトの道へ。黄昏闇の山中から下り、鮮やかな街の灯の中を抜け、寝子電スタジアムの脇を過ぎて、その先へ。堤防の果てから見るのは、漁火さえ灯らぬ真っ暗な海。
(落ちてもきっと誰にも気づいて貰えない)
その海に、一歩踏み出せば落ちる。落ちてしまえる。
(でも、)
天啓のように思い出す。
この海は、祖父や叔父の居る海に繋がっている。
足が止まった。ポケットに手を突っ込み、スマホを取り出す。発信ボタンを押し、冷たい画面に耳を押し当てる。三コールで叔父が出てくれた。
それだけのことが無性に嬉しかった。
「叔父貴、真央ちゃんなのだ!」
思いがけずはしゃいだ声が出た。
「あのね、あの……今度の日曜、帰っても良い?」
海の音にも似て、電話の向こうの叔父が笑う。いつでも帰って来いと笑われ、思わず泣きそうになる。
(まだ帰れる)
そのことにどうしようもなく安堵した。
(まだ足掻ける)
せめて、そう信じた。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
心の中が春の嵐に見舞われたひとときの物語、お届けにあがりました。
少しでもお楽しみ頂けましたら、そうして少しでも寂しさが紛らわせられましたら幸いです。
お読みくださいまして、ご参加くださいまして、ありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
ありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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