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春の嵐の只中で
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耳元で潮風が渦巻き哭いている。
鈍色の海を渡って来る風に全身を打たせたまま、
鴻上 彰尋
は今はまだ水平線を蒼白く滲ませるばかりの朝を待つ。
夜の冷たさを宿した堤防に腰を下ろす。両手に包み込んでいた温かい缶コーヒーのプルタブを開け、コンビニから堤防まで歩くまでの僅かの間に温くなってしまったコーヒーを口に含む。
堤防から足を投げ出す。テトラポッドに寄せて砕ける波をしばらく眺め、もう一度コーヒーを飲む。
黒い瞳に黒い睫毛の影が落ちる。息を吐き出す。意を決してポケットから取り出したのは、絵葉書と手紙。
絵葉書を指先につまみ、空に掲げる。写された外国の夜空を、朝未だ遠い寝子島の空に合わせてみる。
『あなたが生まれた空よ』
誕生日に生みの母から届いたエアメールには、綺麗な夜空の画に短く英語でそう記されていた。
血縁上は叔母である育ての母に言葉の意味を尋ねれば、
――あなたが生まれたのは夜明け前のまだ暗い時間だったから
そんな答えが返って来た。
今は外国に住む本当の母親から誕生日に届いた絵葉書を裏返す。送り主を示す箇所に記されているのは、彰尋の知らぬ名。
絵葉書が届くまでは知らされていなかった本当の母の名を、口の中で呟く。途端、その唇が苦く歪んだ。唇を噛む。コーヒーを口に流し込む。
絵葉書が届いて数日は、ひどく嬉しかった。
名も知らなかった本当の母が、己の存在を覚えてくれていた。そのことだけが、とてもとても嬉しかった。だから手紙を送った。それほど得意ではない英語で書かれたエアメールの住所を慣れぬ手で書き写し、日本語で絵葉書のお礼を書いた。近況を綴った。迷いに迷って、けれど勇気を出して、――会いたい、と書いた。
(顔も知らない人だけども)
一度だけでも会いたいと思ってしまったのは、もしかすると我儘だったのだろうか。
三月になって届いた母からの手紙を、彰尋は膝の上に広げる。
何度も何度も広げては閉ざした手紙は、細かな皺がたくさんついてしまっている。
(俺は確かに日本語で書いたハズだ)
なのに、と思った途端、指先に力が籠った。手紙を開けたその時の感情がそのままに蘇り、母の文字で綴られた手紙がくしゃりと歪む。
(なんであんたは英語で書いてよこしたんだ……!)
手紙を開けるまでは、たとえば天国だった。ふわふわとどこまでも嬉しかった。それなのに、今は、心の底の底まで凍るほど冷たい嵐が吹き荒れている。
異国の文字は、まるで己を拒絶しているように思えた。
中学高校と科目として英語を習ってきて、読めぬことはない。それでも、英語は得意ではなかった。成績も良くはない。辞書を片手に解読を試みても、頭には断片的な情報しか入って来なかった。
母の言葉が分からなかった。それは彰尋には絶望的なことに思えた。
生みの母が己に寄越した手紙を別の誰かの目に触れさせることは恐ろしく恥ずかしかったものの、読めぬままではどうしようもない。
母の妹にあたる育ての母に手紙を見せることは、それでも、どうしても躊躇われた。頼れたのは、育ての母とも生みの母とも母を違える、異母兄のみ。
仕事で帰りの遅い兄を待ち、彰尋の作った夜食を口にする兄に恥を忍んで相談してみれば、兄は案外快く手紙に目を通してくれた。そうして、ぽつり、言った。
――ただの近況しかない
それ以下でもそれ以上でもない、と。どこか労わるように言い、肩を叩いてくれた。
それから、数日。
手紙はまだ彰尋の手の中にある。
兄に手紙の内容を教えてもらいはしたものの、やはり自分でも母の言葉を訳したかった。
母の言葉を己の言葉に翻訳してみれば何か別の意味の言葉が姿を現してくれるかもしれない。それは、もしかすると生みの母に対する盲信なのかもしれない。まだ見ぬ母に対する憧れであり期待なのかもしれない。
(同じ筆跡だ)
手紙と絵葉書を照らし合わせ、もう何十回目かの確認をする。間違いなく母本人であるのだろうと、途方に暮れるように思う。
(まだ上手く訳せているわけじやないけど)
何十回となく母の綴った文を辿るうち、悟った。
(この手紙の中に俺の欲しかった言葉はどこにもない)
手紙の内容は兄が言った通り、近況を記したものでしかない。
舞台役者だった祖父の遺した台本を読み込むように母の手紙をなぞり続けて、そうするうちに見え始めた母の輪郭を瞼の裏に思い描く。
(多分、自分勝手な人)
己の思うままに人生を生きる、自由人とも言える人柄ではないだろうか。役者が役を考えるように、彰尋は母の手紙から母を読み取ろうと努める。
母の手紙を丁寧に畳み、封筒に仕舞う。絵葉書と共にコートのポケットに仕舞いこみ、缶に残っていたコーヒーをあおる。
(……そこまで子供じゃないけど)
明け始めた空を見据える。空のずっとずっと向こうに暮らす母に向け、悔し紛れのように、拗ねるように唇をぎゅっと引き結ぶ。
(俺に会いたいと思われていないのは、なんとなく寂しいな)
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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