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寝子島総合病院の職員用通用口を出る。
朧月の光がぼんやりと降り注ぎ、足元に淡い影を作る。
足元に視線が落ちていることに思い至って、
深倉 理紗子
は息を零した。黒い睫毛に隠れがちな翡翠の瞳をもたげる。頬に滑り落ちてくる黒髪を指先で耳に掛け、夜半に迫る夜空を見上げる。
(ともかく、今日も)
忙しさに追われながらも、何とか一日の仕事を終えた。夜十時になっているとはいえ、退勤時刻としてはいつもより早い。
急患の知らせが入らないことを祈りながら、内科医として勤める寝子島総合病院を仰ぐ。僅かに白い息を吐けば、散り始めの梅の香がふわり、冷ややかな春の夜風と共に胸へ触れた。
見えぬ花の香を追うように歩を踏み出す。月影と街灯の光が交互に触れる道を少し歩いて、もう一度、息を吐く。梅の香が胸に満ちて、眉間とうなじを張り詰めさせていた仕事に対する緊張感が緩んだ。
和らいだ翡翠の瞳は、けれど次の瞬間、堪えがたい痛みを堪えるかの如く歪む。
頼りない光を落とす街灯の下、立ち竦む。瞼を固く閉ざして俯く。息を潜め、胸の真ん中に拳を押し付ける。
冷たい刃で突かれたように、胸が痛かった。
(会いたい)
痛みの正体はわかっている。
(寂しい)
ただひたすらに、寂しかった。
(でも、もう会えない)
どんなに請うても願っても祈っても、永遠の彼方へ去っていった次姉の紗智子にはもう、会えない。
(会いたい)
胸の冷たい痛みを抑え込む。零れそうになる嗚咽を噛み殺す。ここで立ち尽くしていても、誰も助けてはくれない。
(歩か、なくちゃ……)
強情なまでの光を宿した瞳を上げる。寂しさに押し潰されてへたりこんでしまいそうな膝を叱りつけ、一歩を踏み出す。歩き始められたことに勇気を得て、もう一歩。もう一歩。
ああ、と嘆息と同時に苦い笑みが落ちた。
(こんなことばかり、繰り返してる……)
視線を伸ばせば、職場とは目と鼻の先の距離にある橋が見えた。
橋を渡ってしまえば、自宅であるワンルームマンションにすぐ着いてしまう。ひとりきり住まう暗い部屋に帰る気には到底なれず、俯く。足を早めて橋を渡らず過ぎる。
向かう先さえ決められぬまま、援けを求めるように鞄からスマートフォンを取り出す。春先の夜気に冷え切った指先でアドレス帳を呼びだし、辿る。今は東京に居る親友の名をタップし、発信ボタンに触れかけたところで、止めた。画面を消し、コートのポケットに手と一緒に押し込む。
(これは、わたしのこと)
そう思ったことを彼女が知れば、きっと猛烈に怒るだろうけれど、
(だって)
迷惑はかけられない。彼女は今、人生の岐路に立っている。
俯き背中を丸めて夜の旧市街を歩くうち、足元を赤く照らす光に気が付いた。顔を上げる。旧市街の細い路地のどん詰まり、春の夜風に揺れる赤提灯を見つけ、電光看板に光る『やきとり ハナ』の文字を見つけ、理紗子は知らず肩に籠っていた力を抜いた。
家に帰る気にもなれない今日は、ここで少し飲んでしまおう。酒を身体に入れてしまえば、心に冷たく刺さる刃も鈍るかもしれない。そうすれば、家に帰る気力も湧く。
夜を吸い込む。深呼吸をひとつして、暖簾を潜り格子戸を開ける。
「今晩は」
女将と店員の明るい声と炭火の匂いが混ざった温かい空気に迎えられ、貸し切り状態なカウンターの椅子に腰を下ろす。
お通しの鯵の南蛮漬けと熱いおしぼりを受け取り、熱燗と焼き鳥の盛り合わせを頼む。言葉少なな常連客の様子に、けれど何も問いはせず、女将が熱燗と焼き鳥を前に置く。理紗子に猪口を持たせ、最初の一杯を注ぐ。
微笑む女将に目礼し、満たされた酒を無言のままにあおる。手酌に切り替え、酒精の熱で冷たい胸をせめて温めようとする。
(酔いが回れば)
少しは気が紛れると思った。それなのに、どれだけ盃を重ねてもまるで酔えない。それどころか、胸の冷たさは増すばかり。杭を打ちこまれるように痛みは激しくなるばかり。
寂しさは、募るばかり。
「女将さん」
「はあい」
理紗子の声を待ちかねたように、女将がコップを片手に理紗子の隣に座った。呆れ気味な顔した店員が、それでも女将のコップに冷酒を注ぐ。サービスです、と熱燗をもう一本理紗子の前に置く。
女将と店員の厚意に今日ばかりは甘え、理紗子はぽつりぽつり、次姉のことを話し始めた。差し伸べられた手の温かさ、向けてくれた笑みの心強さ、歩幅を合わせてくれた優しさ。大切な思い出を一つ一つ、思いつくまま、ただ喋りたいままに喋り続ける。
「大好きだったの」
声が震えた。小さな嗚咽が混じった。ふわりと熱を帯びる頬とうなじに、酔いが回った、とどこか他人事のように理解する。知らぬ間に涙に濡れていた頬を指先で拭うことも思い付けず、力尽きるようにカウンターに突っ伏す。
「お姉ちゃん……」
酒精の見せる幻の中で、それでも姉は棺に横たわり花に埋もれている。
「もう、死んだふりとかしないでよ……ねえ、」
意地悪しないで、と泣きながら呟く酔客の背を優しく撫で、女将は店員から手渡された膝掛けをその華奢な肩に着せかけた。
「ねえってば……!」
夢の中にあってさえ、今はまだ、寂しさは癒えない。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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