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春の嵐の只中で
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月影が天井に震えている。
月より白い睫毛が震える。透き通って蒼白いまでの瞼が歪み、持ち上がる。血の色をそのまま透かせた瞳に自室の天井を映し、
桜 月
はもう一度瞼を閉ざした。無意識のうちに手を伸ばし、伸ばした先に誰もいないことを確かめ嘆息する。褥を共にする彼女は、今日は居ない。
指先に彼女の温もりが感じられない。毛布をかき抱いても頭まで被ってみても、彼女の匂いも感じられない。名を呼んでも、返事はない。
(私独り……)
己が身の温もりだけで満たすには、ベッドは広すぎる。
独りであることを自覚した途端、春宵の冷たさが爪先に触れた。寂しさにも似た寒さから身を守るようにぐるり、身体を丸める。
(このまま……)
眠り直そうとして、出来なかった。
布団で包み込んだはずの胸が冷たくて冷たくて、胸を抑える。氷の針のように胸を刺して全身を侵し、穏やかな眠りを妨げる冷たさの正体を、月はよく知っている。
(……寂しい)
よくない、と思う。
だって彼女と約束をした。依存し過ぎないと。寂しさに耐えられる強さを持つと。そう約束をして、付き合い始めた。だから、どれだけ寂しさに胸を締め付けられても、彼女に縋ることだけはしたくない。
(さびしい)
胸の中、その言葉ばかりが渦巻く。自覚してしまえば、もうだめだった。寂しさを胸に棲みつかせたまま、ひとりきりで眠りにつくのはもうどうしようもなく難しい。
(難しいよ)
幼子が駄々をこねるように思ってしまってから、息を吐く。毛布を押しのけ、冷たい空気に全身を晒す。こうなってしまえば、再び眠ることは不可能だろう。
寂しさを脱ぎ捨てるように夜着を脱ぎ、それでも捨てきれない冷たい寂しさを衣服と春コートで覆う。少し、夜の散歩をしよう。
スケッチブックと筆記用具の入った鞄を手に、音を立てずテラスへの窓を開く。白い月影を浴び、テラスに己の影が伸びる。
(……出ろ)
強く念じれば、月の身に宿るろっこんが作用し、月の影が立体化する。物理干渉さえ可能な影に己が身を抱かせ、二階のテラスから飛び降りる。音もなく星ヶ丘寮の庭に立つ影の腕から下り、影をボディガード代わりに寮の外へとこっそり抜け出す。
等間隔に街灯の並ぶ星ヶ丘の路を辿りながら、空から降り注ぐ春宵の冷気に春コートの肩をすくめる。三月初旬とは言え、深夜ともなればまだまだ寒い。
(着てくるコートを誤ったかな?)
もしかすると、胸を凍らせる寂しさも寒さを増長させているのかもしれなかった。
僅かに白い息を夜空へと吐き上げる。果てなく広がる夜空の下、ひとりで立っていると思えば余計に辛かった。
孤独な冷たさに心を浸し、朧月の降る夜路をあてどもなく歩く。
そうしながら、その心の違うところで、寂しさに浸りきる己と己の心を冷静に見つめる己がいることを月は知っている。
己から乖離した己は、己の感ずる寂しさを、孤独を、心の内に仔細に記録してゆく。己の心を線とし、色づけ、かたちづくる、そのために。
「……ん」
鼻先に触れる微かな温もりのような香に顔を上げて見れば、閑静な夜の住宅地の路にふわり、ランプの光が零れだしている。
敷地をぐるりと囲むローズマリーの生垣の僅かな隙間には、秘密の花園への入り口のように、小さな角灯がひとつきり置かれている。
『いつでも どうぞ ねこの庭』
愛嬌のある丸文字で書かれた看板に従い、ローズマリーの香に身を洗われるようにして小さな植物園に入る。
(確かここには……)
小さな植物園の奥に視線を伸ばせば、春宵の月に幾つものランプの光を掲げる小さな小さな温室が見えた。
(だから、無意識にここに?)
幾度か訪れたことのある温室カフェ『Oz』。『ランプの夜』と銘打ち、時折深夜営業もしている小さな店は、ありがたいことに今日も開いているらしい。
傍らにひっそりとつき従ってきた影を己の足元に戻す。
黄色い煉瓦の道のところどころに置かれたランプの光に導かれ、温室の扉を開ける。途端、身体を柔らかく包み込んだ熱帯の花の香と湿気に頬を僅かに緩め、
「今晩は」
壁際のカウンターで退屈そうにしていた女店員に静かな礼を向ける。
温かいお茶とお供のお菓子を頼み、店員の目が届かぬ大型の観葉植物の影となる席に着く。温かな空気と花の香にひとつ息を吐き、鞄からスケッチブックを取り出す。痛いほどに胸を締め付けた寂しさの記録が鮮烈な今の間に、デザインに落とし込もう。
(とは言え、全力であの感情に身を任せられないな)
それをするには今はまだ怖すぎる。
己の心の脆弱さを心中で苦く笑いながら、白い紙に線を走らせる。
ポットサーブの紅茶とハーブ入りクッキーがテーブルに並べられたところを潮に、スケッチブックを閉じる。仕上げは部屋に帰ってからにしよう。
ごゆっくり、と店員がカウンターに戻り、人目がなくなったことを確かめ、月は再び己の影を呼びだした。いくつものランプの光が灯る温室の片隅で、月と影は向かい合って座る。
影に向け、月はあでやかに微笑んだ。
「さあ、お茶会をしよう」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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