天界で新年会！｜リアクション

天界で新年会！

【天界の年始め】

　相も変わらず、この間抜けなほどに青い空。ぷかぷか浮かぶ、絵本みたいな白い雲。
　あたりには天使、神さま、二本足で歩くねこたち。天使、神さま、ねこ、天使、ねこねこねこ、ねこがたくさん。
　そして……咲き乱れる、万年桜の桜並木！
「桜源郷……気になってたのよね、ここ。来れて嬉しいな」
　ユキ・ナカミチは、再び背中へ現れた翼をぱたぱたと動かして、のんびり、まったり、ご満悦。
　くるり、と不愛想な灰白ねこを振り返りまして、ちょっぴりイジワルに言いました。
「でも、ちょーっと職権乱用じゃないかなー？　みんなを急に呼び出しちゃうなんて。ねえ、テオくん？」
「まぁ……いいじゃねえか。どうせヒマだろ、お前らも」
「うーん、ブーイングをものともせず、親孝行する不器用なこの姿。ツンデレの鑑だねー」
　ユキを始め、寝子島の住人たちを突然にも呼びつけたテオは、どこか決まり悪そうにふんっと鼻から息を吐いて、そっぽを向いてしまいました。照れくさかったのかもしれません。
　確かにテオにとっても、彼女は母親みたいな存在なのかも……てきぱきと働くアホ毛の女神さま、料理をこしらえるののこママを、彼がどうやら尊敬しているらしいことは、前回ここを訪れた時に、なんとなく感じ取ることができました。
「ふふふ。ま、フツウのために持ちつ持たれつ！　もちろん、お手伝いするよー」
　言って、ユキは翼を打ち、ふわりと浮かび上がります。
　彼女の役回りは、料理やお酒が過不足なく出ているか、食器は足りているか。足りていなければ補充を指示したり、時には自ら取りに行ったり……等々、物のあれこれを把握して各所へ伝達する、いわば宴会場をディレクションするような立場です。
「ねこちゃんたち、そのお皿はそっちのテーブルへお願いねー。天使さんたちは、あっちによろしくー！」
　空中から周囲をぐるりと確認すると、彼女はさっそくあちこちへ、忙しく声をかけ始めました。

　そう。今日は神さまたちの、新年会！
　空から、陸から、あるいはじゃぶじゃぶと湖を渡って、様々な神さまたちが続々と、桜の下へ集まり始めています。
「ネコジマのクヤサンのヌシさま、ご案内しますニャー！　あっ、狐神さまに狸神さまも、お久しぶりでございますニャ～。今、ご案内しますのニャ！」
　案内役のねこたちが出迎える側から、わいわい、がやがや。人間っぽい神さまもいれば、動物の姿をした神さまも、何とも形容しがたい奇妙な神さまも……みんな仲良く、席へ着いていきます。
「すごい光景だなぁ。この神さまたちの大らかさ、素敵だねー」
　つぶやいたのは、今日も元気な桜庭円。肩にはもちろん、子猫のにゃーくんもちょこん。
　彼女を始め、料理の配膳係を任された数名は、次々に訪れる神さまたちがずらずらずらり、なんて圧巻の光景に、ちょっぴりあっけにとられてしまいました。
　けれど、
「よーし。素直じゃないテオのためにも、がんばっちゃおー！」
　円がしゅばっと拳を振り上げると、澪乃澄佳と恵御納夏朝も揃って、おーっ！
「あたしたちのろっこんさあれば、重たい料理も運べるよう！　……それにしても、どの料理も美味しそう……」
「うん……ねこシールの数は十分。ねこさんや天使さん、神さまたちのために、僕たちもがんばるよ！」
　澄佳は豪勢な料理に、夏朝はにゃあにゃあと可愛らしいねこたちに目を奪われがちではありますけれど、天界の人々や訪れる神さまたちのため、ふるふると頭を振って誘惑を振り払いました。
「どうせ神さまのところを回るなら、ついでに要望を聞いておくと良いよな」
「ああ。いろんな神さまがいるらしいからな、好みが分かれば、キッチンのほうでも助かるだろう」
「よし、そうしよう……ところで、俺、死んでないよな？　気付いたら羽とか生えてたんだが」
　そう言って、御剣刀と新田亮は、効率よく卓を回る算段を立て始めます。料理の好みもさることながら、お酒好きな神さまは実に多いそうでして、好みの銘柄など聞いて届けてあげたなら、きっと喜んでもらえることでしょう。
「あたしもお手伝いするなの！」
　ぴ！　と手を上げたのは、橘明里。
「橘、大丈夫か？　重いものは俺たちが持つから、あまり無理をしなくていいぞ」
　という亮の気配りには、満面の笑みを返して、
「大丈夫なの、にーにーくん！　いつもアルバイトでウェイトレスやってるから、慣れてるなのっ」
　何とも嬉しそうに、ぴこぴこ背中の翼を動かした彼女は、きらきら！　やる気に満ちあふれておりました。

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