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(さっきまであんなに晴れとったとに……)
冷たい雨粒を撒き散らし始めた夕暮れの空を見上げ、
倉前 七瀬
は寝子島図書館で借りて来たばかりの本が入っている鞄を両腕で抱え込んだ。
突然のにわか雨、傘など持っていない。
(借りた本が濡れてしまってはいかん)
慌てて見回せば、猫又川を渡ってシーサイドタウンに至る橋が見えた。これ幸いと道を駆ける。地図にも載らないような小さな公園を横切り、橋の下へと入り込む。
風の絶えない橋の上とは違い、小さな橋の下に吹く風は緩かった。吹きさらしの道路と違い、気温も心なしか温かい。
色素の薄い灰色の髪に止まった雨粒を首を振って軽く払い、枯れた草叢にひょいと腰を下ろす。雨が止むまで、ここで待とう。
橋の上を打つ雨音を耳にしながら、川面を、公園の不愛想な遊具を濡らして行く雨を眺める。瞬きひとつして視線を雨雲に覆われた空へと移す。
膝を抱え、はた目には何を考えているのかも分からぬ夏草色の瞳で降りしきる雨をぼんやりと見つめる。
景色を淡く白く煙らせる雨を見つめるばかりだった瞳を眠たげにゆっくりと瞬かせたかと思えば、どこか儚げな印象の少年は健やかな手足でぐうっと伸びをした。
(飽きてきました)
何も考えずに雨を見つめ続けることに退屈し、
(ふむ、この時間もったいないですね)
さてどうしようかと考え掛けたところで、膝の上で大事に抱え込んでいた鞄に気が付いた。鞄の中には図書館で借りて来たばかりの本。今回もどれもこれも選りすぐりに分厚い、つまりは文字数の多そうな、読み応えのありそうな本ばかりを選んできた。
唇に笑みさえ刻んで、鞄からいそいそと本を引っ張り出す。
(まず一冊目)
悩むこともなく取り出したのは、辞書と見紛うばかりに分厚い本。表紙には降りしきる桜の中に佇む少女の後ろ姿。題名から見ても恋愛小説なその本を膝の上に広げる。
活字に目を通し始めれば、己を取り巻く周囲の音が消える。
文字が意味するところを読み取り、脳裏に情景を広げ、そこに己を立たせる。主人公を立たせる。登場人物を書き込まれた文字のままに動くさまを、書き込まれた文字のままに心に映し出す。
世紀も世界も隔てていた恋人たちが再び出会い、文末に『完』の文字が刻まれ、あとがきと解説を経て奥付の文字の隅々、文庫発刊目録の最後の一行まで目で追って後、七瀬はまるで深海まで深く深く潜行していたダイバーが海面に出て来たように長い息を吐きだした。追い続けていた文字から目を離し、夢から覚めたように瞬きを繰り返しながら橋の先で降り続く雨へと視線を伸ばす。
(……ふーむ、)
ちらり、唇が尖る。
(可もなく不可もなくといった感じでしょうか)
感想は内容についてのものではない。
(もうちょっと欲しいところですね)
分厚さの割に文字数が少なかった。改行が多く、空白も多かった。
次、とばかり取り出したのは、様々な写真が表紙を飾る、これも分厚い実用書。
深呼吸一つ、七瀬は再び活字の海に潜る。
雨音も、頭上の橋桁を渡る車の音も、雨に追われて駆ける誰かの足音も、何もかも聞こえぬほどに集中し、恐ろしいほどの勢いで頁を捲る。
頁を捲る手が止まったのは、最後の最後、裏表紙をぱたりと閉ざしてから。
(うーん、)
眠そうな瞳が今度は不満げに歪む。パラリと興味なさげに頁を捲り、ぱたりと閉ざす。図書館で最初の頁を見たときは、文字数が多そうに見えたのに、
(これはあまりよくなかったですね)
開いてみれば写真ばかり。
(つまらんかったです……)
しょんぼりと肩を落とす。橋の向こうはまだ雨。大分勢いは弱っているものの、気持ちはなんだか消化不良だ。というよりも、活字不足で飢餓状態だ。
こうなれば、と三冊めを取り出し開く。
開いた途端、頁を真っ黒に埋め尽くす活字の整列に、七瀬の顔は今日一番に輝いた。
(おお!)
会心の笑みを隠しもせず、七瀬は紙にびっしりと隙間なく印刷された文字の海に溺れる。
(この本はなかなかの『当たり』でした)
文字を辿り、追いかけ、気づけば埋没し、息も忘れる。悪魔に魅入られたように文字を掴み、手放し、また掴む。
それを繰り返した果てに裏表紙を閉ざし、本の海から帰還する。満足の溜息を吐き出してから、ちらりと首を傾げる。今日読んだ中では一番の文字量だった。活字に溺れる感覚は圧倒的だった。
(……書かれとる内容はいっちょんわからんけれども)
七瀬にとって、書物が面白いか面白くないかは活字の多寡で決まる。
今日一番の文字数だった参考書を鞄に仕舞い、次の本を取り出そうとして、
「……っと、おや……?」
借りてきた本がいつのまにか尽きてしまっていることに思い至り、七瀬はしょんぼりと肩を落とした。それでもふと空を見上げれば、雨は知らぬ間に上がっている。縁を朱金色に輝かせた藍色の雲が薄青を僅かに残す夕焼け空を流れて行く。
「綺麗な夕焼け空ですねー」
思わず口にしつつ橋の下から出れば、橋の袂に佇み夕焼けを眺めていたらしい赤銅色の髪の少年が黄昏よりも黄金色した瞳をほんの僅か笑ませた。ぶっきらぼうながらも妙に綺麗な会釈を残して橋を渡ろうとして、思いついたように足を止める。
「雑貨屋を知らないか」
「雑貨ですか?」
「白薔薇の、……」
言いかけて口を閉ざし、少年は首を横に振る。
「いや、いい。自分で探す」
足早に去る少年の背を何となく追いながら、七瀬が思い出したのは、幼い頃に初めて読んだ本。内容の記憶を奪われても、白薔薇が描かれた表紙であることは思い出せた、あの本。
(『私はあなたにふさわしい』)
白薔薇の花ことばのひとつを思い出す。尊敬、純潔、無邪気、白薔薇の持つたくさんの花言葉を脳内の活字の海から掬い上げながら、七瀬は雨上がりの町を本を抱えて歩き始めた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年09月29日
参加申し込みの期限
2016年10月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年10月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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