橋の上、足を止める。
凍てつく夜に息を零せば、伏せた視界が白く滲んだ。けれどそれも瞬きの間。橋の空を絶えず流れる冬風に、温かな息は吐きだす度に吹き流され闇に溶ける。
首に幾重にも巻いたマフラーさえ風に浚われそうになって、
屋敷野 梢はコートの胸元にマフラーの端を掻き抱いた。
冷えた掌に息を吐きかけ、伏せていた夏草色の瞳をもたげる。
橋の欄干の向こう、遠い街の光。
夏草の瞳が夜露宿ったように潤んで見えるのは、冬空に煌く街の光のせいだろうか。
(まだ、……)
ふと心に浮かんだ言葉に、唇を引き結ぶ。
街灯りに赤く濁る夜空から街灯りさえ届かぬ遥かな空の高みへと視線を上げる。だってそうすれば背筋が伸びる。立っていられる。
一際大きな息の塊をひとつ、空へと吐き上げる。
ぐっと背筋を伸ばし、頭と瞳を前へ向ける。そうしてまた、歩き始めようとして、
「……ん?」
橋の袂の堤防に、動く影を見た。
「んんー?」
怪訝に細めた瞳を一転、くるりと楽し気に輝かせ駆け出す梢の華奢な肩で、ふたつ垂らした栗色の三つ編みがぱたり、元気よく跳ねた。
こんにちは。阿瀬 春と申します。
ガイドには屋敷野 梢さんにご登場いただきました。
ありがとうございます!
もしもご参加頂けますときは、ガイドはサンプルのようなものですので、どうぞご自由にアクションをお書きください。
今回お届けさせていただきます寝子島での日常の一幕は、橋の下。
橋の下です。案外人目につかなかったりついたりする橋の下の河原では、きっと色んな出来事があると思うのです。
子猫や家出した誰かがダンボール箱に入っていたり、夕暮れの河原で誰かと誰かが殴り合った後に一緒に倒れて笑い合ったり、七輪と干物と缶ビールで酒盛りしていたり、橋脚に背中預けて秘密の話をしていたり、突然の雨や雪を避けていたり。
寝子島の橋の下でのお話でしたら、どんなものでも、どうぞお聞かせください。
いくつか、舞台になりそうな橋の下を用意してみました。よろしければお使いください。
もちろん、別の橋の下の物語でも大丈夫です。むしろ大歓迎です。
■猫又川のとある橋
小さな橋のコンクリートの脚には、誰かが描いたカラフルな絵画があります。誰が描いたかも知れない、けれどどこか心安らぐ絵の前に立てば、周囲の音や人の気配が一切消え、ほんのひと時ではありますが、誰も居ない世界に迷い込むことが出来るという噂があります。
ひとりきりの世界かもしれませんし、一緒に立った誰かとふたりぼっちの世界、かもしれません。
■寝子島大橋
本土に渡る橋です。大きい橋なだけあって、下にもぐりこめば雨雪は余裕でしのげます。海や町の灯りがよく見えます。時間が合えば橋を渡る寝子電も見えます。
◎マップに載っていない小さな小さな橋、昔に川があった名残の橋、などなども寝子島のどこかに存在しているかもしれません。その辺りの地図にない橋も、お好みでどうぞー!
※以下のNPCをあなたの話の聞き役として登場させることができます。ですが、基本的に頷いているか隣で飲み食いしているだけです。
○『やきとり ハナ』の女将と店員
旧市街で居酒屋を経営する母と息子です。
一応、黒河花枝と太一という名前があったりします。
旧市街あたりの橋に出没します。買い出しの帰りだったり、息子と喧嘩して店を飛び出していたり、休日でふらふらしていたり。
○日暮
シーサイドタウンの住宅街の住人。あちこちでバイトをして生計をたてています。
寝子島のあちこちの橋でエンカウント可能です。大体は仕事帰りです。
○夕
○こん
シーサイドタウンの住宅地の元廃屋で日暮と共に暮らす少女たち。
寝子温泉界隈をふらふらしている最中、夕暮れの小さな橋の下でダンボールに入った子猫を見つけました。顔を寄せ合って何事か相談しています。
そんなこんなな橋の下から始まるみなさまのお話、よければお聞かせください。
ご参加、橋の下でレジャーシートとおやつ広げてお待ちしております。