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白いうなじを覆うほどの、うなじよりも白い髪を水滴が伝う。
滑らかな頬に貼りつく濡れた柔らかな髪を細い指先に掻きのければ、髪に隠れがちな耳を多数飾るピアスが雨粒宿らせて煌いた。
(参ったな……)
黄昏を白く滲ませる温かな息を吐き、
如月 蘇芳
は雨宿りに駆けこんだ橋の下から雨雲に覆われた夕空を仰ぐ。
星ヶ丘の自宅まではまだ遠い。
いつもなら学生鞄に入れて持ち歩いているはずの折り畳み傘も、今日は忘れて来てしまった。
(……なんというか、ついてないなあ)
雨雲の流れは早いようにも見えるけれど、一体どのくらいで止むのか。蘇芳には見当もつかない。
夕陽よりも深く紅い瞳に雪色の睫毛を伏せれば、細い顎から透明な水滴がしたたり落ちた。髪を頬を滑る冷たい水に、柔和な印象与える優しい口元に知らず苦笑が滲む。
小さく肩を落とし、鞄を探る。確かタオルは入れていたはず。
「……ん?」
橋をぐるりと囲う雨音に紛れ、小さな鳴き声を聞いた気がした。真紅の瞳を巡らせれば、河原の草叢に半ば埋もれた橋脚の傍、薄汚れたダンボール箱が転がっている。
みうみうと悲しげな鳴き声のもとを辿って箱の中を覗き込む。
「……猫」
ダンボールの壁に小さな体を押し付けて丸くなり、それでも寒さを防げずに震えて泣き喚く鯖虎模様の子猫を見つけ、蘇芳は白い息と共に呟いた。
(捨て猫かな)
「かわいそうに」
優しい声音と顔つきのままに呟く言葉は、けれどどこか冷たい。
頭上に降る声と傍らに立つ人の気配に、子猫は懸命に頭をもたげる。つぶらな目を上げて蘇芳を見止めるなり、よろりと立ち上がる。ダンボールの壁に細い爪を立てよじ登ろうとする仕草を見せる。登れずに尻餅をつき、助けて、と言わんばかりに蘇芳を見仰いで鳴く。
鳴き続ける子猫の頭を、蘇芳はそっと撫でる。
「君を拾ってやることはできないんだ」
優しい声できっぱりと突き放す。
「ごめんね」
頭を撫でる指にしがみつこうとする猫の前脚を引き剥がしながら、蘇芳は眉を顰める。冷たい指先に触れる子猫の前脚もまた、同じほどに冷えている。
(流石にこの時期、)
しかも雨の中とあっては、子猫の体力などあっけなく消耗してしまうだろう。
ダンボール箱の中で泣きながら冷たくなっていく小さな生き物がうっかりと頭を過って、蘇芳は愁うように睫毛を伏せた。
「……仕方ない」
鳴き続ける猫から目を逸らして立ち上がる。鞄からスマートフォンを取り出し、通話履歴を探る。
「君のことを助けてくれそうな人に声かけてあげる」
みうみうにゃあにゃあ、足元で鳴く子猫を穏やかな瞳に見下ろし、蘇芳は胸の内に小さな嘆息を零した。
(今日はとことんついてない日みたいだね)
街の灯りを雨が煙らせている。
「……止む気配ねーなぁ」
橋脚に寄せた背中を滑らせ、ずるずるとしゃがみこむ。細い川岸に敷かれたコンクリートの地面の冷たさに花のような薄紅色した瞳が不快げに潜まる。
少女とも見紛う華奢な指に抱えた学生服の膝へ細い顎を乗せ、
来島 アカリ
はもう一度橋の下から雨雲を見上げた。不機嫌に唇を尖らせ、拗ねた瞳を膝の上に戻す。
「うー……」
星ヶ丘の実家を離れ、シーサイドタウンで一人暮らしを始めてまだ日は浅い。実家で暮らしていた頃は、雨が降りそうな日は母が傘を持たせてくれたなとふと思い、慌てて首を横に振る。
紺碧の髪に宿った雨粒がぱたぱたと跳ねた。
唇にきゅっと力が籠る。膝に抱えていた鞄から簡易に綴じただけの紙束を取り出す。
何度も読みこんだ跡のあるそれは、最近通い始めた東京の劇団から渡された劇の台本。
川面を打つ雨音を背景に、台本を開く。蛍光ペンでマーカーを引いた自分の役の台詞を何度も目でなぞる。いくつかの台詞をなぞるうち、
「むー……」
アカリは唸って首を捻った。
(ここ、よくわかんねーんだよなぁ……)
前後の台詞とト書きを数度眼で辿り、自身の台詞を幾度となく追う。何度頭の中で自分の台詞を繰り返しても、その台詞は自分のものにならない。
(こいつ、どういう気持ちなんだろ……?)
言葉としては完全に記憶している。それでも自分のものに出来ないのは、役の気持ちがどうしても理解できないからだとアカリは踏んだ。
どうすれば役を理解できるだろう。
どうすれば上手く演技出来るだろう。
(……ちょっと声に出して演技してみよう、かな)
思ってから、窺うように周囲を見回す。橋の左右は降りしきる雨。見回した限り、堤防道路の何処にも人の姿は見えない。時折通る車も雨風を嫌ってどの窓も開いていない。
(雨強いし、聞こえない……だろ、たぶん)
鞄を橋脚にもたせかけて置き、台本を開いて片手に持ち直す。跳ねるように立ち上がり、腹に冷たい空気を満たす。
雨音に閉ざされた今は、丁度練習している場面とよく似ている。
「分かれよ。分かってくれよ」
腹に満たした冷たい空気を熱帯びた声にして吐き出して、なんか違うと首を傾げる。もう一度。
「分かれよ」
最初は怒りさえ孕んで低く、
「分かって、くれよ……!」
次は懇願を籠めて高く。
もう一度、もう一度、と雨の中に同じ台詞を繰り返し練習して、
(……うん、)
アカリは氷雨の空気に白い息を吐きだした。
(ちょっとだけ掴めた、かも?)
演技の練習をするうち、雨に冷えていた体がいつの間にか指の先まで熱を帯びている。
橋の外を見遣れば、雨も弱くなってきている。
今のうちに帰ろう、と台本を仕舞おうとした時、鞄の底で携帯電話が鳴った。薄紅の瞳を瞬かせながら携帯電話を引っ張り出せば、画面が知らせているのは、
「そう兄ぃ?」
幼馴染の如月蘇芳。躊躇わず通話ボタンを押す。
『アカリ君? 急にごめんね』
「どうしたの?」
聞こえて来た蘇芳の優しい声音に、応じるアカリの頬は知らず和らいでいる。
『実は橋の下に捨て猫がいてね……』
この雨だし助けてあげてほしいんだけど、と続く幼馴染の言葉を聞くなり、アカリは迷うことなく頷いた。橋の名と場所を聞きだし、
「待ってて、そう兄ぃ」
台本を仕舞った鞄を片手にアカリは小雨の中へと飛び出した。労を惜しまずまず家に立ち寄り、玄関に鞄を投げこむ。代わりに抱えるのは、猫を暖めるためのカイロとタオル。
「っと」
投げ捨てた鞄から携帯電話だけを取り出してポケットに突っ込み、玄関脇に置いた傘を持てば準備は完了。
夕暮れの雨の街をしばらく走り、思いついて行きがかりのペットショップに立ち寄ってまた駆けて、
「あ、いたいた、」
小さな橋の下で雨を避けて佇む幼馴染が見えた。雨か掛かるか掛からないかの端で静寂を纏って立つ兄と慕う幼馴染の元、アカリは駆け寄る。
「そう兄ぃ……!」
傘を片手に堤防を降りてくる一学年下の幼馴染に向け、蘇芳はいつも通りの温和な笑みを向ける。
「来てくれてありがとう。助かったよ」
「猫は? どこ?」
ずっと走って来たのか息せき切って問うアカリに、蘇芳は少し離れた位置のダンボール箱を示した。
雨の吹き込まぬ橋の下のダンボールの中、ごそごそと動きみうみうと鳴く小さな生き物の音を聞くなり、アカリは滑り込むようにその傍らに膝をついた。傘を捨てて中を覗き込み、カイロを巻き込んだタオルを底に入れる。両手を差し入れ、両手に収まるほどの子猫を抱き上げる。
手の中で鳴く子猫を胸にそっと抱き、折れそうな背を撫でる。服に細い爪を立ててよじ登ろうとする様子に安堵の息を零す。
「……ちょっと弱ってるけど……うん、命の危険はなさそう、かな……?」
カイロで温めたダンボールの中に子猫を戻す。今のところはこれで寒さからは守れるだろうけれど、放っておけばカイロの温もりはなくなる。また凍えてしまう。
「むー……」
難しい顔で悩むアカリの横顔を眺めてから、蘇芳は少し離れた位置からダンボールの中で鳴く子猫へと淡く笑みかける。
「心配しなくていいよ」
蘇芳の優しい声を耳にしながら、アカリはその場に折った膝に両手を突っ張って考える。
東京の劇団に通うため、週一から二日は東京の親の友人の家に泊まる。その間、一人暮らしの家には誰もいなくなる。
「飼えるかどうかはわかんない、けど……」
眉を寄せて悩みながら、ペットショップで買った猫用ミルクを取り出す。適当な椀がないことに気付いて、仕方なく掌にミルクを注ぎ、子猫の鼻先に近づける。ほんの少しの警戒を見せてから、子猫はアカリの掌に前脚で抱きついた。
「とりあえず、うちにおいで?」
冷たい鼻先をアカリの手に触れさせつつ、ミルクを舐め始める。食べる力があれば、ひとまずは安心だろう。
「むー、……猫、かわいいなぁ……」
出来るのなら、家で飼ってやりたい。思えば思うほど堪らなくなって、アカリは子猫を片腕に抱きしめポケットから携帯電話を取り出した。掛けるのは実家の電話番号。
間を置かず繋がった母に相談してみれば、案外簡単に許可はおりた。息子が一人暮らしを始めたばかりで思うところもあったのか、母はむしろ歓迎の意を示してくれた。
母から家を空ける日は星ヶ丘の実家に預けることを条件に上げられ、アカリは満面の笑みで大きく頷く。
「えへへ、きょうからお前はうちのこだぞー」
どうしようもなく幸せな笑みで猫の喉を撫でれば、傍らで傘を畳んでくれていた蘇芳が優しく瞳を細めた。
「名前、どうしようかなー……?」
子猫をダンボール箱にそっと戻し、両手でダンボール箱を持ち上げてから、アカリはそうしてしまうと傘が差せないことに思い至った。
「……そう兄ぃ」
どこか甘えるように幼馴染を見上げる。
「いいよ、おいで」
傘を広げ、蘇芳はいつものように微笑んでくれた。
「濡れないようにね」
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年09月29日
参加申し込みの期限
2016年10月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年10月06日 11時00分
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