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寝子島高校
水底の町
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「げっ、獅子目」
出会い頭、クラスメイトの
来島 アカリ
から心底嫌そうに毒づかれ、
「それは此方の台詞だ」
獅子目 悠月
は髪と同じ赤銅色の眉をムッと顰めた。
「獅子目が何でこんなとこに」
「その言葉、そのままお前に返してやる」
売り言葉に買い言葉、アカリは冬の夕陽に蒼く透ける髪を揺らして悠月から顔を背ける。背けてから、目を逸らせば負けなような気がした。あからさまに不機嫌な視線だけを悠月へと向けて、
「……あ、ロベルト先輩」
「今日は。今晩は、かな」
悠月の三歩後ろでひらりと手を振る高校の先輩、
ロベルト・エメリヤノフ
の姿に気付いた。
クラスメイトでありお互い遠慮のない言葉の応酬を交わす悠月に向けるものとはあからさまに違う、人見知り混じりのはにかんだ表情で、アカリは小さく会釈する。
「どうしたんですか」
「今日は獅子目のとこにお泊りなんだ。夕飯食べに出たところなんだけど、僕のことはいいからどうぞ二人で話を続けて」
見守るような微笑ましげな視線をロベルトに向けられ、アカリと悠月は一瞬視線を合わせる。合わせてすぐに逸らし合う。
「誰が獅子目なんかと」
「来島と話すことなど皆無だ」
同時に吐き捨て、同時にまた顔を突き合わせて睨みあう。互いに一歩詰め寄ったところで、星ヶ丘の煉瓦道に出来た水たまりを一緒に踏んだ。
瞬間、吸い込まれるように二人の身体が地面に沈む。
「えっ、ちょっ……」
まるきり子猫の喧嘩を愛でる視線で二人を眺めていたロベルトは焦った。咄嗟に二人に手を伸ばし、二人の腕をに触れたと思った、その次の刹那。
――視界が、碧に染まった。
夕暮れの北風よりも温かな水に全身を押し包まれ、視界を染め上げる透明な碧に呆然と瞬きをして、すぐ前で苦し気に水を掻くアカリを見た。片手で唇を抑え、混乱に陥った表情と如何にも泳げない動作でもがくアカリに、
「大変だ!」
ロベルトは唐突に水中に落下したことも忘れる。
「今人工呼吸してあげるよ来島ー!」
暴れるアカリをほとんど喜色満面で抱きしめ、頭を両手で挟む。女子とも見紛うほどの下級生の唇を奪おうとしたところで、
「おい、……おい!」
その頭を悠月に掴まれた。口を悠月の手で抑えられ、大好きな美少年にキスをする絶好の機会を奪われそうになって、
「だって来島が! 来島が溺れて……!」
「お前、喋れてるぞ」
必死に抵抗するも、悠月の手は緩まなかった。ともすれば額が触れそうなほどに近くなるアカリとロベルトの頭を左右に掴んで引き離しながらの冷静な指摘に、ロベルトとアカリは目を丸くする。
「……あれ、本当だ」
全身で抱きついたアカリから至極残念そうに離れ、ロベルトは光揺らぐ水中に悲しい息を吐き出す。冬の空気に息が白く凍るように、吐き出した息は水の流れになった。周囲の水を揺らがせて溶ける己の息に、肺を満たしても呼吸の適う不思議な水に、ロベルトは齢よりも幼く見える栗色の瞳を瞬かせる。
「良かったね、来島」
先輩から無邪気に笑いかけられ、アカリは白い頬を瞳よりも紅く染めた。
「うー……」
不貞腐れたように唇を尖らせ、己の行動を恥じ入る。
「別に、ちょっと焦っただけで、怖かったわけじゃねーもん……」
恥じていることをむくれた口調で誤魔化して視線を水中に広げ、そうして、見た。
水底に広がる、白珊瑚の町を。
沈んだ町を我が物顔に遊ぶ、紅や金や群青の色した極彩色の魚たちを。
「なんだいここは……」
静寂ばかりが占めて見える水中に、ロベルトが呟きを零す。
「ここは……」
(あの黄昏の町のような場所か)
ロベルトに応じようとした言葉を、悠月は飲み込む。先に迷い込んだ黄昏の町を、ロベルトはきっと知らない。
高校の先輩である彼はこの島には己よりも長く暮らしていて、だからこそこの島に起こる不思議を己よりも知っているだろう。けれど、この島に起こる不思議の数は膨大だ。
(後で話してみようか)
そう思ってから、ふと不安になった。
見上げる水面は果てしなく思えるほどに遥か遠い。この水中世界から、どうすれば元の世界に帰ることが出来るのだろう。
それでも、不思議と不安は続かなかった。
己と同じように眼下の町を見下ろしている傍らの二人の横顔を見遣る。己は、ひとりではない。
「すごく、綺麗……だけど、」
碧の世界に立ち尽くして、アカリは薄紅の瞳を伏せる。
「ここで一人は寂しい、な……」
小さく小さく呟くアカリのどこか少女じみた横顔を眺め、ロベルトは同意を示して肯う。そうしてから、ちらりと笑む。
「でも、……いや、だからこそ」
言葉を探して、
「美しいね」
瞳を細める。体温よりは冷たく、けれど体温を奪わぬほどに温かな水を掌に掻き、くるりと前転するように頭を下にする。足で水を蹴れば、僅かな動きだけで容易く身体は動いた。
「ロベルト先輩」
「ロベルト」
アカリが慣れぬ動作で、悠月が怖じぬ挙措で、それぞれにきちんと後に続いてくれていることを肩越しに確かめ、ロベルトは町を目指す。
見たところ、人気はなさそうだった。
魚たちが寄越す不審げな視線を感じながら、白い砂に埋められた水底に足を着ける。ふわりと浮き上がる砂の下、幾何学模様じみて敷かれた石畳が見えた。
中央に花冠模した人工の泉を設けた、そこはかつての住人の憩いの広場だっただろう場所。
「寝子島もこんな風に沈む時が来るのかな」
今は冷たい水深くに沈んで静まり返る広場も、きっとかつては賑やかだったに違いない。――自分たちの暮らす、寝子島のように。
「それは遠い何時かの話か?」
追いかけて広場に降り立った悠月が、結い上げた緋色の髪を水に揺らす。
「それともフツウを守れなかった場合の何時かの話か?」
「ううん、どうだろう」
いつもより少し低めの声に問われ、ロベルトは首を傾げる。ほんの少し、気弱に笑む。
「遠い何時かでも、フツウを守れなかった何時かかもしれないけど……でも、」
ぐるりを、白く碧く広がる水底の町を見渡す。
「こういう風に幻想的な街になるなら、それもいいかも……」
初めに目にしたときに思った通り、この町はひどく美しい。
淡く白い光を帯びてさえ見える砂の上に足をつければ、まるで水中でないかのように歩むことが出来た。身体にまとわりついていた水の抵抗も、ほぼ感じられない。
自分と同じように水底に足をつけ、不思議そうに手足を見遣るアカリに目を遣る。
「……いや、でも来島は泳げないからそうなったら生きていけないかぁ」
「泳げないのも、ですけど……」
先輩からしみじみと言われ、アカリは思いがけず普通に動かすことのできる足で水底に溜まった砂を小さく蹴る。
ゆっくりと舞い上がり、水の流れに従って広がり落ちる様子はまるきり水中で、けれどこの身は地上と同じに息ができる。水を掻かずとも歩を進めることが出来る。
何らかの不思議の力が働く、冷たい水の底に沈んだ静寂の町。
もしも、と思う。
もしも、寝子島がこんな風になったら。
あの賑やかな寝子島が、誰も居らず、過去の誰かの痕跡ばかりが残るだけの場所に成り果ててしまったら。
「こんな風に静かになっちゃうのは嫌、……かなぁ?」
(寂しい、かなぁ……?)
嫌だ、と。寂しい、と。断定できないのは、どこまでも碧いこの世界を、ロベルトと同じように美しいと感じているからだろうか。
思い出になるのは悪いことではないと、アカリは知っている。
(でも、)
すべてが過去になってしまうのは、
(ここみたいに)
水の底に、記憶の海の底に沈むのは、
(悲しいなって、……思うんだ)
「それもそっか……」
アカリ言葉に素直に頷くロベルトを一瞥して後、悠月は碧の町へと視線を広げる。耳に届く二人の声は、地上に居たときと同じに耳に届いている。
「ここみたいに声が出せる保証がないなら俺もその状況は遠慮したいところだな」
己の声も同じように響くことを耳に確かめながら、悠月は町へ一歩を踏み出す。
「フツウが壊れてこんな風になるなら、それだけは阻止したい」
ただまあ、と町を眺める。白珊瑚を積み上げた家々の窓の向こう、腐食せず残る木製の本棚が見えた。水に浚われもせず床に転がる椅子や卓が見えた。卓の上には空っぽの皿と素朴な布人形。
フツウでなくても、こうして水に沈んでも、ここには確かにナニカが残っている。
(……例えばすべて過去になってしまったとしても)
残る想いは、ナニカは、きっとある。一度きり訪れたことのある黄昏の町の住人たちに想いを馳せれば、そう信じることも悪くはないと、悠月には思えた。
「……沈んでも、こうやってナニカが残るのは、悪くはないな」
生活の跡だけを残して、町の住人たちは何処へ消えたのだろう。
「……そうだね」
悠月にも頷き、ロベルトは水に白く晒された樹の梢を見上げる。
「忘れられた街っていうのはちょっと寂しいけれど」
ひょいと地面を蹴れば、身体は水中にあるように易々と浮かび上がった。手に水を掻き、樹の梢を掴む。地上とは勝手が違って戸惑うものの、慣れてしまえば動作に不自由はなさそうだ。
梢の上から水底の二人を見下ろし、ロベルトはくすりと笑う。
「二人とも仲がいいようだけど、考えてることは正反対だね」
「仲良くない」
「むー…仲良く、ない…獅子目が喧嘩売ってくるだけ、です…」
言った途端に同時に反駁され、ロベルトはまた笑った。
「ああ、喧嘩するほど…ってわけじゃあないんだね?」
「違う」
「違う、……と思う」
再度同時に同じ言葉を重ね、睨みあう二人を微笑ましく眺めて後、ロベルトは高い位置から連なる家々の平たい屋根を見下ろす。
フツウではない非日常の只中にあって、恐ろしくもなんともないのは、この町に漂う、僅かに寂しいながらもゆったりとした空気のせいなのだろう。
「何か見えるか」
ロベルトの後を追い、悠月が樹上に飛び上がる。意志の強そうな凛々しい眉に力をこめ、ぐるりを見晴るかして、
「……ん」
ちらりと首を傾げた。梢を蹴り、碧い水中に飛び出す。水中を進もうとして、ふと思い至った。人魚のように水中でくるりと踵を返し、水底に立ったままのアカリを見下ろす。
「歩いて行くか」
からかうように言われ、アカリはムッと唇を尖らせた。
「ここでなら泳げるんだからなっ」
水底を蹴り、不器用に手足をばたつかせるアカリを見かね、ロベルトが梢から降りて手を差し伸べた。楽し気なロベルトの笑顔がけれど嫌ではなくて、アカリは素直にロベルトの手に引かれることにする。
「何が見えたんだい」
「こっちだ」
水中を渡って向かった先は、家々が連なる丘陵の麓。緩やかに下る稜線に合わせて組み上げられた石段の下には、扇状に設えられた舞台があった。
緋色の髪をなびかせ舞い降りるように野外舞台に降り立った悠月が見つけたのは、舞台の央に散らばる古びた紙。触れた途端に崩れはせぬかと恐る恐る手に取る。
水よりも冷たい感触を指先に与える紙片には、悠月の知らぬ文字が書き連ねられていた。五線譜も音符も無い、けれどそれは鑑みるに楽譜のよう。
「何だろ、……台本か、絵本かな」
見たことのない楽譜に見入る悠月の傍ら、ロベルトと共に降り立ったアカリが同じく舞台に散乱する紙のうちから製本された紙束を拾い上げる。
「袖にこんなのが残ってたよ。あと、こんなのも」
水の碧より蒼い、柔らかく揺れる舞台衣装と、大人の拳ほどの巨大な鱗数枚を片手ずつに持ち、ロベルトがふたりの傍に駆け寄る。
「獅子目、せっかくだし歌ってよ」
ロベルトは友人の家々を渡り歩いては宿を借りる、野良猫のような生活を続けている。野良猫生活の一環として悠月の家に上がり込んだ幾度目かの夜に、悠月の歌を聞いたことがある。
「絵になりそうだ」
「む……」
ロベルトに衣装を肩へ羽織らされ、悠月は僅かの間考え込む。
「来島の分もあるよ」
「……え」
薔薇色した衣装を喜々として着せかけられ、アカリは薄紅の瞳を瞬かせる。アカリが首を傾げ、悠月と目を合わせる間に、ロベルトは最前列の席へと移動し、めいっぱいの期待籠った瞳で舞台のふたりを見つめ始めた。
「獅子目、これ」
アカリは絵本を捲る。悠月へと向けた最初の一頁には、色褪せながらも彩色を残した海底の世界が描かれていた。碧い世界に遊ぶ魚たちと、それから、半人半魚の少女。
文字が読めぬ上、絵本の後半は千切られ結末が分からなくなっているものの、
「人魚姫みたいだ」
だから、と言葉を続ける。
「やろう?」
「……悪くないな」
怖じることなど知らぬかの如く、悠月は自信ありげに笑んだ。揺らぐ水に衣装がさらわれぬよう片手に抑え、もう片手で結い上げた緋の髪をほどく。
碧い水の中、消して消えぬ焔のように髪が舞う。
観客はひとりきりだが、広い舞台に立てば自然と心が弾んだ。
「獅子目は人魚姫な」
「ああ」
アカリに指示されることを半ば不満に思いつつ、この髪とこの衣装では仕方ないかと半ば納得する。
緋色の睫毛に榛の瞳を一度閉ざし、開く。少年の白皙に浮かぶは、自由への切望。
どこまでも澄んで碧い水に沈んだ舞台の央、滑らかな衣装の裾を水に翻し、緋色の髪の人魚姫は歌う。遥かな地上への憧れを、地上に出会った王子への恋を。
(……やっぱり素晴らしいね)
水中に朗々と響き渡る少年の、水よりも澄んだ高い声に、ロベルトは瞳を細める。
歌声に惹かれたか、沈んだ町のあちこちで遊んでいた色とりどりの魚たちが舞台へと集うた。人魚姫の緋色の髪に遊び、差し伸べた指先にキスをする。
魚たちに触れられながら、悠月はほんの僅か眉を顰める。
指先に触れているはずの魚たちの手触りがほとんどない。まるで極く薄い硝子細工か、強く触れれば消えるシャボン玉のよう。
舞台上、恋を歌う人魚姫の前に現れるは、蒼髪の魔女。魔女は魚の尾鰭をひとの足へと代える劇薬を人魚姫に手渡し、代償として人魚姫の声を奪う。
緋色の髪の人魚姫の唇に当てた指を己の唇に押し当て、蒼髪の魔女は邪に笑んだ。
声失った人魚姫は、それでも喜びに溢れて地上へと浮上する。そうして一言も発さぬまま、
真っ直ぐに、ロベルトへと手を差し伸べた。
「……え? 僕?」
躊躇う王子に花のように笑みかけ、人魚姫は舞台を飛び降りる。水中を泳いで客席へと近づき、ひとりきりの観客の手を取る。ふたりで舞台へと飛びあがりながら、人魚姫は王子と出会えた嬉しさを歌い始める。
歌い始めてから、失ったはずの声が発せることに不思議そうに首を傾げて、
「――幸せに、おなり」
魚たちが遊ぶ水底から響く、蒼髪の魔女の言葉を聞いた。
悲恋の末に泡となって消える人魚姫の物語をハッピーエンドに改変して、アカリはくすくすと笑みを零す。そっと、呟く。
「……獅子目はずっと歌ってればいいって思うんだ」
「そうか?」
独り言のはずの言葉は、けれど水中に思いがけず響いてしまったらしい。ほんの少し驚いたように目を瞠る悠月に、アカリは慌てて毒づく。
「そしたらうるさくねーし」
なんだよ、といつものように言い返しかけて、悠月は瞬く。視界を覆い尽していた碧に、別の水が注ぎこまれるかのように景色が入れ変わって行く――
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SF・ファンタジー
神話・伝説
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10人
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11人
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シナリオガイド公開日
2016年07月10日
参加申し込みの期限
2016年07月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月17日 11時00分
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