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水底の町
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「私も、呼ばれたことは一向に構わない」
艶やかな純白の髪を水中に降る雨のように揺らし、月詠が首を横に振る。それよりも、と好奇心に満ち満ちた紅の瞳を煌かせる。
「町の事を聞きたい。主にここは何で、何があったのかについて」
「そうそう、町の姿はしてるけどさっきの子以外に他の人見ないし、いろいろ興味は湧くよねぇ」
神殿の前に残った少女ふたりを見遣り、アレス翁は小柄であっても真っ直ぐに伸びた背を更にしゃんと伸ばした。こころまでも見通すような碧い瞳に見据えられ、けれど月詠が僅かも動じず淡く微笑む。由貴奈が真っ向からその瞳を見つめ返す。
少女ふたりの揺らがぬ眸に、アレスは嬉し気に笑った。神殿前の石畳の上をひょいひょいと歩き、水底の町を一望出来る石段の天辺に腰を下ろす。老人にひらひらと手招きされるまま、月詠と由貴奈も老人の左右に腰を下ろす。
「さて、此処が何であるかと、何があったか、か」
面から伸びる白鬚をしごき、町の一角で遊ぶ子供達を微笑まし気に眺めるアレス翁に、由貴奈は月詠の言葉を補って続ける。
「もともと他に人が住んでた場所だったのかなー、とか。じゃあどうしてその人たちが居なくなってるのかなー、とか? 水の底に住むじいちゃんは一体何者なんだろー、とか」
「あなた達は水精か人魚か、それとも同じくここに落ちて来た人か」
少女たちに問いかけられ、老人はしばらく黙した。
「……あぁ、ただの興味だよ? 何か疑ってるとかそういうことじゃなくて」
由貴奈は面に隠れた老人の横顔を横目に見る。アレスの視線を追いかけ、水に沈んだ町を眺める。
今はもう、碧く美しい水に包まれるばかりの静かな白珊瑚の町。
「むしろこういう雰囲気の場所、落ち着くから好きだよぉ」
「此処は、元より小さな町だった。町を守護する巨獣の居る、この世界にはありふれた町のひとつ」
「その巨獣が、じいちゃん?」
「うん」
由貴奈の言葉にアレス翁が頷くと同時、背後の神殿の扉が僅かに軋んだ。神殿へと流れ込む水の流れに誘われ、振り向いた由貴奈と月詠が見たのは、――蒼銀に煌き連なる巨大な鱗。大人の拳ほどの鱗を数多纏うた、視界を覆い尽すほどの巨躯を棺の如き神殿に納めた、蒼き蛟。
「あちらが本体。こちらが虚像。虚像であるから、貴女がこころに不意に浮かべたナニカを悪戯に模してしまった。これも驚かせた、済まない」
鎌首を億劫そうにもたげ、巨大な蛟は水と同じ色した碧い眸を薄い被膜で覆う。瞬きをする。
薄く開いただけの扉が軋み、再び閉ざされる。
神殿からアレス翁へと由貴奈が視線を戻せば、老人の顔に面はなかった。老いた碧い眸をゆっくりと瞬かせ、アレス翁はどこか悪童じみて笑む。
「心を読むのか」
「割と無作為だ。今貴女たちの考えていることを読めと言われても読めない」
月詠が紅の瞳を丸くするのを笑っていなし、かつて町を守護した巨獣は護り得なかった町を見下ろす。
「ある日、町に水が湧いた。何処より来たとも知れぬ水は町を呑み、町の人々を溶かし滅せしめた。私が護り得たのは、その折神殿に捧げられていたユニただひとり。水を無害なものに清め、ユニの身を水底に生きるに足るものに創りかえ、――それには永き時間を要した。この世界がどのように変容したのか、私は知らない。ユニを閉ざして護るしか、今はもう……」
水底の町を水底の町たらしめた変遷を語り、アレス翁は皺深い頬に更に皺を刻む。
身に負うた重さを振り払うように、老人は立ち上がった。
「けれど今は、此処に居れる間は、好きに遊んでおくれ。気に入ったものがあれば、この世界の土産に持ち帰って構わない。そうして、……」
いつかまた、と再来を請うアレス翁に見送られ、由貴奈は石段を下りる。月詠は水中へと跳ね上がる。
「あまり高く昇らないように。水面近くになればなるほど危険が増す。万一のときは私が呼び戻しはするが、町の住人のようにその身を水に溶かしたくはないだろう」
「無論、そうだね。気をつけよう」
アレス翁の忠告を素直に受け入れながら、月詠は碧に染まる町を見下ろす。
水底に沈んだ町を眼下に脳裏を過るは、彼のアトランティス。
幾つかの本に見た彼の都市のイメージ画によく似て、この町の家々は石で造られている。その上、石造の神殿まで存在している。
(たしか発展しすぎて調子乗ったが為に神の怒りに触れたんだっけ)
そうして、リヴァイアサンという怪物によって沈められた。いつか読んだ寝子島書房発行のマニアックな図解本の内容を思い出す。
(リヴァイアさん……)
図解本に描かれていたポップな絵柄の怪物を思い出しつつ、水を蹴る。纏うた白衣の裾と純白の髪を水に翻し、石段に近い家屋にお邪魔する。
伝説にあるアトランティスは神にも近しい世界であったが故に被害も甚大だっただろうと図解本にはあった。
(人を溶かす水か)
ふと気づけば足元に湧き上がり、触れた先から身体が溶けてなくなってゆく。その恐怖を思い、月詠は白い眉間を寄せる。
普段の生活から不意に人が消えたその瞬間のままに遺された室内には、かつての住人が使っていただろう紙束と羽根ペンが無造作に投げ出されていた。
石床に足をつける。地に足を着ければまるで地上を行くように歩くことが出来るのは、アレス翁の力が働く故か。
水底に残る日記を眺める。
(ギリシャ語に近い気もするけど)
記憶にあるどの文字にも当てはまらぬ、異世界の文字がそこには綴られていた。
住人の消えた家を離れる。鞄を探り、画帳を開く。挟んだ鉛筆を白い紙上に走らせ、地上と同じように描けることを確かめる。家々の屋根に蜘蛛の巣のように張り巡らされた渡り廊下を避けてどの屋根よりも高く浮上しながら、小さな丘陵の一面に造られた町の景色を手早く素描する。
(時間が経てば元の世界に帰ると言っていたよね)
となれば、詳細を描くのは寝子島に戻ってからでいい。
(アトリエに帰ったら)
素描した町の景色をカンバスに転写しよう。
碧の町を描く月詠の姿を見つけたか、ひとの居らぬ町角、寝子島よりほんのひと時喚ばれて町を訪れた人々と遊ぶ少年がひらひらと白い手を振る。
その姿が、不意に波にさらわれるように白く揺らぐ。碧い水に別の水を勢いよく流し込んだかのように、目前の世界が変化する。
元の世界へと戻りながらも、月詠は描き続ける。
最後に描き込んだのは、町の空に泳ぐ少年と、蒼き蛟眠る神殿の前に立つ老人。
あの町の姿を、碧の色を、瞼にまざまざと思い描けるうちに描いてしまいたかった。
(勿忘草、花浅葱、アクアマリン、瑠璃、サファイア、)
あの町に見た様々の青をカンバスに乗せよう。
(描き終わったら)
おそらく夜半までかかって水底の町を描き終えたら、水の香の香水をベッドに撒いてダイブしよう。ポケットの中の海の宝石で何を作るか考えながら眠ろう。
そうしてきっと、あの町の夢を見よう。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
水底の町での一幕、お届けにあがりました。
現実世界が暑くて暑くて、頭っから水に浸かりたいばっかりに水中のお話を書かせていただきました。あと色々と趣味を突っ込みまくってみました。
できるなら私も行ってみたいです、水底の町。毎日暑いです。
読んで頂けました方が、少しでも涼しい気分になれましたらと願うばかりです。
少年と老人が居る水底の町のお話、少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
エントリーくださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
個別コメント、今回は何と言いますか、前略後略なかたちをとらせて頂いております。ひとことっ、せめてひとことだけでもー! なのです。すみません。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
10人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年07月10日
参加申し込みの期限
2016年07月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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