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黄昏色に染まった芝を歩く。庭に敷かれた煉瓦道を外れ、星ヶ丘寮の庭の一角を占める小さな森に入り込む。
空を覆うほどに高く鬱蒼と繁る木々は、どこか故郷であるドイツの森に少し似ていた。
夕日よりも紅い髪を揺らし、重なり合う葉群の向こうの茜空を仰ぐ。冷たい夕風に揺れる草木とは別の音を聞き取って、
神薙 焔
は鮮やかな翠珠の瞳を瞬かせる。
見回せば、かさり、近くの繁みが震えた。
瞳に力籠めて見れば、黄昏の森の繁みに身を小さく潜めて、白い子猫。跪いて視線を低くする。よくよく見れば、酷く痩せた身体のあちこちの被毛が赤い血に汚れている。
「おいで」
そっと呼びかけ、手を差し伸ばす。
黄昏の光を子猫の瞳がエメラルド色に反射する。根気よく待つうちに、猫はそろそろと草叢から姿を現した。
痩せた身体が草影から半分覗いたところで、焔は小さく息を呑む。
子猫の背には、天使を表す白い翼が生えていた。ただ、その翼は一翼きり。もう片方の羽根は根元から千切れてしまっている。白い毛を赤黒く汚す出血の大部分はもげた翼からのようだった。
焔の緊張を読み取り固まる天使猫に向け、
「大丈夫よ、……ね?」
焔は努めて柔らかな声で繰り返す。
差し伸べた手を動かさず、子猫が警戒を解いてくれるまでじっと待つ。
程なく、子猫は根気負けしたように小さく鳴いた。焔の膝元に近き、指先に冷たい鼻先を触れさせる。
「どこでこんな怪我をしたの」
そっと話しかけながら、服が汚れるもの構わず胸に抱き上げる。
(……どうしたものかしら)
自室に連れ帰って怪我の治療をするためには、寮の廊下を渡らなければならない。
(『機関』に連絡すべきなんでしょうけど)
天使でも悪魔でもない、ひとである焔は俯く。
迷いながらも、決めている。
「ちょっと窮屈かもしれないケド」
子猫の小さな体を服の胸に押し込む。手よりも小さな頭だけをぴょこりと胸元から覗かせれば、とにかくも翼は隠すことができる。
「こうしてみるとただの子猫よね」
胸元から覗く子猫の頭をそっと撫でる。にゃあ、と子猫が返事するように鳴いた。
(天使にしても悪魔にしても、窮鳥懐に入れば猟師も撃たず、よね)
子猫の前脚と腹の当たっている胸がくすぐったくて温かい。
こうなってしまえば、『機関』に引き渡す気にはならなかった。
(とりあえず包帯を巻いて、……)
そのためには自室に戻らなくてはならない。
天使や悪魔を看られる病院があるとも思えない。そもそも、動物病院に連れて行けば、『機関』に通報されてしまうかもしれない。
(自分の部屋でなんとかするしかないか)
庭から寮内に戻る。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
丁寧に頭を下げてくれる専属のメイドに笑いかけながら、いつものように笑えたかしらと思う。
「あら、猫ですね」
「庭で拾ったの。一緒に遊ぶから、あたしの部屋には入って来ないでね」
出来る限りに無邪気を装って言ってみる。
「はい、かしこまりました」
母と同じ年頃のメイドは少し不思議そうな顔をしながらも頷いた。
(……怪しまれたカナ?)
メイドの視線を感じつつ、自室に入る。扉を閉めた途端、うっかり安堵の息が零れた。
「大丈夫、大丈夫よ……」
子猫の頭を優しく撫でる。血と泥で汚れた身体を胸元からそっと引き出し、抱き上げて頬ずりをする。
温かい濡れタオルで体を清め、背や肢の傷口を消毒して包帯を巻きつける。汚れを落としてみれば、ミルク色した被毛に翠珠の瞳した美しい子猫だった。
メイドに頼んで分けて貰った魚と綺麗な水で空腹を満たさせ、バスケットに温かなタオルを敷いて寝床を作ってやった。そうするうちに外はいつの間にか暗くなっていた。
気に入ったのか、バスケットに潜り込んで丸くなる子猫の傍、焔は座り込む。猫の傍を離れない焔のためにメイドが持ってきてくれたサンドイッチと林檎をかじる。
にゃう、と物欲しげに鳴く天使猫に林檎の欠片を差し出す。しゃりしゃりと美味そうな音立てて林檎をかじる猫を膝を抱えて見ていて、
(……ん)
子猫と焔は、揃って瞳を上げた。
廊下から足音が近づいてきている。
(メイドさんとも違う)
「困ります、こんな夜中に……!」
「楓子も仕事だ。天使翼の猫がここに落ちたという情報が入ったのだよ」
制止しようとするメイドの声に、億劫そうな女の声が重なる。
(『機関』……!)
彼らに捕まれば、天使の翼持つ愛らしい猫と言えどもただでは済むまい。惨たらしく処分されるか、一生を檻の中に押し込められるか。
(そんなこと絶対させない)
子猫の頭をそっと撫で、バスケットの蓋を閉ざす。慌てるあまりに部屋着のまま外に出ようとして、これでは逆に目立つだろうと思いとどまった。目に留まったのは、メイドがクローゼットに掛けておいてくれた制服。素早く着替え、テーブルのメモに『今夜は帰りません』と走り書く。
メイドと押し問答をしながら、足音が近づいてくる。
バスケットを抱える。廊下に飛び出すわけにもいかず、音を立てずに窓を開ける。部屋履きから靴に履き替え、そっと庭に降りる。
月明りばかりの降る静かな庭を横切り、オールドローズの生垣を分けて寮の脇の道に逃れる。油断なく見回し、通りに『機関』の姿のないことを確かめる。『機関』のあの女性はひとりでここに来たのだろう。
(……そうよね)
小さな生き物が中でごそごそと動くバスケットを抱きしめる。いくら天使とは言え、こんなにか弱い子猫一匹を捕らえるには女性ひとりでも充分すぎるというもの。
「大丈夫だからね……」
閑静な住宅街の夜道を足早に過ぎる。行く当てもないままに歩きながら、咄嗟にとはいえ制服を着てしまったことを悔いた。星ヶ丘の瀟洒の住宅街にせよ、シーサイドタウン駅に続く寝子島街道にせよ、夜道を歩くには制服は目立ちすぎる。
(どうしようかしら……)
少しでも足を止めれば追手に見つかるような気がして、ともかくも歩き続ける。そうして行き着いたのは、毎朝通う寝子島高校の校門前。
月明かりを浴びて佇む学校は、廊下や一部の部屋に光は見えるものの、日中に見るよりもどこかしら不気味に見えて、入り込む気にはなれなかった。
視線を俯け学校前の道を過ぎようとしたところで、背後に迫る小さな足音を聞いた。追手か、と慌てて振り向いて、
「わ……っ?!」
こちらの突然の動作に驚いた声をあげて立ち止まる黒髪の少女と眼があった。同じ高校の制服のスカートの裾を揺らし、寝癖のついたうなじまでを覆う黒髪を震わせ、少女は黒い瞳を瞬かせる。
「ごめんなさい、びっくりさせちゃった……?」
鈴の鳴るような声を耳に、焔は息吐くように微笑む。
「いいえ。こちらこそごめんなさい」
「うたた寝してたら寝過ごしてしまって……帰らなきゃって急いでたの」
遠野 まほろ
、と名乗る少女に、焔も名を告げる。
バスケットの中、子猫がにゃう、と鳴いた。抗議するようにカリカリと内側を爪で掻く子猫にも、焔はごめんね、と詫びる。
「猫……?」
「……ええ」
不思議そうに眼を丸くするまほろに曖昧に頷き、バスケットをきつく抱える。彼女の『異界者』に対する感情を知らないうちは、中を見せるわけにはいかない。
そう思う焔の思惑など関係なしに、天使猫はここから出せとばかりにバスケットの内側を引っ掻いて鳴き喚き始めた。
「だめ、お願いだから静かにして」
「出してあげたら……?」
酷く焦って見える焔に近寄り、まほろは遠慮がちに声をかける。切羽詰まった様子の焔の背をそっと撫でる。何が彼女をそこまで怯えさせているのかは分からなかったけれど、バスケットの中のナニカがその原因であることは違いなかった。
(……もしかして)
まほろは、この島に天使と悪魔が紛れ込んで生きていることを知っている。彼らを追おうとする『機関』の存在も知っている。
「大丈夫、私は味方だよ」
不安そうに歪む、翠珠色した瞳を覗き込む。焔に、バスケットの中の小さなナニカに、ゆっくりと言い聞かせる。
「……あなたがそう望むのであればだけど」
敵にはならない、と繰り返す。
「少なくとも、追ってる誰かの前に出すなんてことはしないよ」
「遠野ちゃん……」
「だから、安心して」
バスケットを抱きしめしばらく考えて後、焔は何かを決意したように顔をあげた。人通りのない夜道を見回し、それでも慎重に慎重を期して、電柱の影にまほろを呼び込む。
それでも迷って瞳を伏せる焔に、まほろは鞄からふかふかの猫の縫いぐるみを取り出した。魔法をかけるように、まずは取り出したぬいぐるみを自分でぎゅっと抱きしめ、そうしてから焔の肩にしがみつかせる。
「……よかったらこのぬいぐるみさん……ぎゅって」
言われたとおりにぬいぐるみを抱きしめる焔に微笑みかけ、まほろは焔の気持ちが落ち着くまで待つ。
「みんな仲良しなんて無理なのは分かっているけれど……」
せめて傷つけあうようなことはしてほしくなかった。
「無関心が難しいなら私は仲良くしたいな、って思うよ」
「……そうね」
焔は頷き、その場に膝をつく。バスケットをそっと地面に置き、留め金を外して開く。途端、ぴょこん、と子猫が頭を出した。それと同時、ふわり、白い片翼が夜風に広がる。
「猫の、天使……」
「怪我をして庭に迷い込んだみたい」
大分落ち着いた様子の焔が小さく頷いて応じた。焔の信用を得られたことを嬉しく思いながら、まほろはバスケット内であくびする天使猫の傍らに鞄から取り出した小さな河童のぬいぐるみを置く。
「『機関』の追手が掛かってね」
「……でも、」
小さな河童に猫パンチをかまして後、鼻先を押し付け抱きつく子猫を見下ろし、
「助けたいよね」
まほろは呟く。
子猫が背に負う純白の翼が、尻尾とともにふわふわと揺れる。たとえ片翼であろうとも、身体のあちこちに傷を負い包帯に巻かれていようとも、
(……天使って綺麗だな)
ふと、心底からそう思った。
思った途端、目の前に居る天使がひどく遠い存在に感じた。ひととは違う、ひどく美しく、触れることすら許されない存在。
(でも、……でも)
助けたかった。『機関』の手に渡すことは微塵も考えられなかった。
「どうしよう」
「どうしようかしら」
まほろと焔、ふたりのフツウの少女たちは顔を見合わせる。助けたい気持ちは本物なのに、その手段が見つけれない。
「今はとにかく、逃げるしかないわよね」
「私も手伝う……!」
決意を固めて頷きあう少女たちの間に挟まれていた天使猫が、不意に明るい声で鳴いた。尖った三角耳の先から尻尾の先まで身震いし、前肢から後肢までぐうっと伸びをする。エメラルド色の瞳でふたりを見上げ、見ていて、とでも言いたげにもう一度鳴く。
優しい少女たちのまなざしの先で、子猫の千切れた片翼がふわり、奇跡のように蘇った。
「わあ……!」
頬を上気させて目を瞠る少女たちに自慢げな顔を見せ、天使猫は生えたての白翼を羽ばたかせる。最初は怖々と、徐々にしっかりと。
翼に夜風を纏い、天使猫は宙に翔け上がった。柔らかな羽毛が粉雪のように散る。
少女たちの背よりも高く舞い上がり、天使猫は月を背に少女たちを振り返った。
「気をつけてね」
笑うように一声鳴いて夜空へと飛び去る天使猫を見送り、焔は安堵の息を吐く。
「お別れは寂しいけど……」
天使猫に手を振り、まほろは唇を柔らかく笑ませる。
差し伸べた手に、月の光を纏って降る羽毛の一枚が優しく触れた。思わず両手に包み込む。この綺麗な羽根は、貰ってもいいだろうか。
(お守りにしたいな)
とある夜に見た、奇跡の思い出の証拠として。
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年06月21日
参加申し込みの期限
2016年06月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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