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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
カオスワールド・プレイ
路地に月影が差し込む。
純白の光に躍るは逃げ惑う猫の影と、
「ネコ！ ネコなのだ！」
真夜中の路地裏に似合わぬ幼く明るい歓声。
「つーかまえたっ」
うなじと尻尾の毛を逆立てて威嚇する猫を恐れげもなく捕まえたのは、寝子高の制服を着た紅茶色の髪した少女。全身を緊張させて暴れる三毛猫に手を引っ掻かれても意にも介さず、蛍石の翠眼した少女は無理矢理に猫を抱きしめる。
「ふふ～、可愛いのだ、お前は今日からマーオの物なのだ」
片手で猫を抱いたまま、少女はもう片手の指先で夜陰にくるりと輪を描く。渦巻くように現れた闇色の異空間に猫を放り込み、
「……誰だっ！？」
少女は少女らしからぬ鋭い声を上げて振り返った。凶暴な色孕んで細められる瞳に捉えたのは、路地の入口、繁華街の猥雑な光を背負うて立つ黒コートの女。
咥え煙草のまま、女は片手に持った聖書を開く。
「初めに言葉ありき、言葉は神なりき。この言葉は初めに神とともにあり、萬のものこれに由りてなり、」
低く、けれどよく通る声で詠まれる聖書に、少女は不快げに頬を歪めた。猫を放り込んだ異空間の穴を両掌で挟んで消し、牙を剥くように喚く。
「この猫はマーオの物なのだっ！」
「なりたるものに一つとしてこれによらでなりたるはなし」
少女の一喝に女は眉を小さく上げた。
「これに命あり。この命は人の光なりき」
海色の鋭い瞳に少女を映し、聖書を閉じる。羽織ったコートのポケットに聖書を押し込み、聖書の代わり、もう片手に提げていた黄金色の十字架を銃のように構える。
「さて、聖書朗読は終わりだ」
先端に銃口のような孔のある十字架の全面には、ラテン語で彫り込まれた神の御言葉。
「私の名は鳳翔 皐月だ、くそったれ」
いや、と皐月は薄い唇を歪める。嗤う。
「マーオ？」
名を呼ばれたその刹那、制服纏った少女の瞳の瞳孔が縦に裂けた。少女らしい指から肉切り包丁じみた鋭い爪が空を切り裂いて伸びる。柔らかな頬が耳元まで裂け、尖った牙が剥き出す。
愛らしい少女の姿が恐ろしげに変化しても、皐月は眉ひとつ動かさなかった。
「死は確実、時は不確実とは言うが、お前の死はどんなんだ。えぇ？」
聖書を読み上げると同じ、不機嫌な口調で言い放つ。
「兄さまに言われたのだ、一回だけなら見逃してやるのだ」
「くそったれの悪魔が」
開いた口から涎を垂らし唸り声をあげる猫耳の悪魔に向け、躊躇なく十字架型アーティファクト『聖なるショットガン』の引き金を落とす。
「あたらないのだ～」
無闇に明るい声と共、悪魔の姿が闇に紛れる。外れた銃弾が路地に並ぶゴミ箱に当たる。破裂したゴミ屑が宙に飛び散る。
背後に繁華街の喧騒を背負い、皐月は路地裏の暗闇に踏み込んだ。
「思い出した、『機関』なのだ！」
闇を渡ったかのように背後に突如として現れ、鋭い爪を伸ばしてくるマーオに、皐月は振り返りもせず銃を肩に担ぐように反転させる。銃口を背後に向ける。視線も遣らず、散弾を放つ。
「その通り」
発射の衝撃に長く伸びた黒髪が揺らぐ。
悲鳴上げる間もなく吹き飛んだ悪魔の小柄な身が湿った音立てて地面に転がった。悪魔をさえ害することの出来る散弾を浴び、胴体をほとんど千切れ掛けさせて、それでも悪魔は爪で地面を掻く。
「人は終わりを迎え幸福が訪れる。でもお前はどうだ、悪魔」
立ち上がろうとする悪魔の傍に立ち、断ずる。
「お前は生きてるだけで不幸を呼び寄せる」
「兄さま……」
断末魔の代わり、悲しい声を上げて伏すマーオの猫耳の頭に、皐月は十字架の銃口を押し当てる。
「兄さまァァァ」
引き金を落とすよりも早く、嘆く悪魔の姿は砂と崩れた。生ぬるい風に流れ夜に消える悪魔の最期に十字を切ろうとして、皐月は唇を引き結ぶ。
悪魔が砂と消える寸前、悪魔の小さな背を後ろから抱きあげる何かが見えた。悪魔の身体を空へとさらい何処かへ運ぼうとする、――
漆黒の翼を見た、その瞬間。
腹が裂けた。
「ッ……？！」
己の身から噴き出しているとは到底信じられぬほど大量の血が、唇から離れた煙草と共に宙に舞う。弾かれるように地面に倒れそうになって、咄嗟に踏ん張る。裂けた腹を両手で抑えるも、身体の力が持ったのはほんの数瞬。
地に倒れ伏す。
地面に広がる血の海に煙草が落ちる。先端に灯っていた火が、血に燻り消える。
「……ハレルヤ」
血の臭いと煙草の匂いを嗅ぎつつ己の末期を悟って呻く。呻いて、
瞬く。
瞬きの間に見た己の死が、瀕死のマーオを掬い上げた何者かによって見せられた白昼夢であると気付いて、皐月は歯噛みした。腹の傷も、地面に広がったはずの血溜まりも、ない。
「……くそったれの悪魔が」
海色の瞳に剣呑な色浮かべ、『機関』構成員である皐月は低く吐き捨てる。
純白の光に躍るは逃げ惑う猫の影と、
「ネコ！ ネコなのだ！」
真夜中の路地裏に似合わぬ幼く明るい歓声。
「つーかまえたっ」
うなじと尻尾の毛を逆立てて威嚇する猫を恐れげもなく捕まえたのは、寝子高の制服を着た紅茶色の髪した少女。全身を緊張させて暴れる三毛猫に手を引っ掻かれても意にも介さず、蛍石の翠眼した少女は無理矢理に猫を抱きしめる。
「ふふ～、可愛いのだ、お前は今日からマーオの物なのだ」
片手で猫を抱いたまま、少女はもう片手の指先で夜陰にくるりと輪を描く。渦巻くように現れた闇色の異空間に猫を放り込み、
「……誰だっ！？」
少女は少女らしからぬ鋭い声を上げて振り返った。凶暴な色孕んで細められる瞳に捉えたのは、路地の入口、繁華街の猥雑な光を背負うて立つ黒コートの女。
咥え煙草のまま、女は片手に持った聖書を開く。
「初めに言葉ありき、言葉は神なりき。この言葉は初めに神とともにあり、萬のものこれに由りてなり、」
低く、けれどよく通る声で詠まれる聖書に、少女は不快げに頬を歪めた。猫を放り込んだ異空間の穴を両掌で挟んで消し、牙を剥くように喚く。
「この猫はマーオの物なのだっ！」
「なりたるものに一つとしてこれによらでなりたるはなし」
少女の一喝に女は眉を小さく上げた。
「これに命あり。この命は人の光なりき」
海色の鋭い瞳に少女を映し、聖書を閉じる。羽織ったコートのポケットに聖書を押し込み、聖書の代わり、もう片手に提げていた黄金色の十字架を銃のように構える。
「さて、聖書朗読は終わりだ」
先端に銃口のような孔のある十字架の全面には、ラテン語で彫り込まれた神の御言葉。
「私の名は鳳翔 皐月だ、くそったれ」
いや、と皐月は薄い唇を歪める。嗤う。
「マーオ？」
名を呼ばれたその刹那、制服纏った少女の瞳の瞳孔が縦に裂けた。少女らしい指から肉切り包丁じみた鋭い爪が空を切り裂いて伸びる。柔らかな頬が耳元まで裂け、尖った牙が剥き出す。
愛らしい少女の姿が恐ろしげに変化しても、皐月は眉ひとつ動かさなかった。
「死は確実、時は不確実とは言うが、お前の死はどんなんだ。えぇ？」
聖書を読み上げると同じ、不機嫌な口調で言い放つ。
「兄さまに言われたのだ、一回だけなら見逃してやるのだ」
「くそったれの悪魔が」
開いた口から涎を垂らし唸り声をあげる猫耳の悪魔に向け、躊躇なく十字架型アーティファクト『聖なるショットガン』の引き金を落とす。
「あたらないのだ～」
無闇に明るい声と共、悪魔の姿が闇に紛れる。外れた銃弾が路地に並ぶゴミ箱に当たる。破裂したゴミ屑が宙に飛び散る。
背後に繁華街の喧騒を背負い、皐月は路地裏の暗闇に踏み込んだ。
「思い出した、『機関』なのだ！」
闇を渡ったかのように背後に突如として現れ、鋭い爪を伸ばしてくるマーオに、皐月は振り返りもせず銃を肩に担ぐように反転させる。銃口を背後に向ける。視線も遣らず、散弾を放つ。
「その通り」
発射の衝撃に長く伸びた黒髪が揺らぐ。
悲鳴上げる間もなく吹き飛んだ悪魔の小柄な身が湿った音立てて地面に転がった。悪魔をさえ害することの出来る散弾を浴び、胴体をほとんど千切れ掛けさせて、それでも悪魔は爪で地面を掻く。
「人は終わりを迎え幸福が訪れる。でもお前はどうだ、悪魔」
立ち上がろうとする悪魔の傍に立ち、断ずる。
「お前は生きてるだけで不幸を呼び寄せる」
「兄さま……」
断末魔の代わり、悲しい声を上げて伏すマーオの猫耳の頭に、皐月は十字架の銃口を押し当てる。
「兄さまァァァ」
引き金を落とすよりも早く、嘆く悪魔の姿は砂と崩れた。生ぬるい風に流れ夜に消える悪魔の最期に十字を切ろうとして、皐月は唇を引き結ぶ。
悪魔が砂と消える寸前、悪魔の小さな背を後ろから抱きあげる何かが見えた。悪魔の身体を空へとさらい何処かへ運ぼうとする、――
漆黒の翼を見た、その瞬間。
腹が裂けた。
「ッ……？！」
己の身から噴き出しているとは到底信じられぬほど大量の血が、唇から離れた煙草と共に宙に舞う。弾かれるように地面に倒れそうになって、咄嗟に踏ん張る。裂けた腹を両手で抑えるも、身体の力が持ったのはほんの数瞬。
地に倒れ伏す。
地面に広がる血の海に煙草が落ちる。先端に灯っていた火が、血に燻り消える。
「……ハレルヤ」
血の臭いと煙草の匂いを嗅ぎつつ己の末期を悟って呻く。呻いて、
瞬く。
瞬きの間に見た己の死が、瀕死のマーオを掬い上げた何者かによって見せられた白昼夢であると気付いて、皐月は歯噛みした。腹の傷も、地面に広がったはずの血溜まりも、ない。
「……くそったれの悪魔が」
海色の瞳に剣呑な色浮かべ、『機関』構成員である皐月は低く吐き捨てる。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年06月21日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年06月28日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年06月28日 11時00分
