九夜山で猫まみれ！｜リアクション

九夜山で猫まみれ！

　人気の少ない早朝の旧市街を日暮ねむるがロードワークに励んでいた。腕を振る度に黒いウインドブレーカーが切れのある音を立てる。同色のレギンスは足首まで覆い、防寒対策は万全であった。
「今日は身体が軽いかな」
　ねむるは旧市街を抜けて九夜山の山道に向かった。
　転がる小さな石を器用に避ける。足場が悪いところでは大きな跳躍を見せた。不規則に飛び跳ねて登る姿は黒猫のようだった。
　切れ切れの陽光の中で汗が弾けた。ねむるは快調に飛ばして山頂を目指す。
　少し息が上がってきた。目には新たな力が宿る。数メートル先に山頂が見えていた。一気に加速して見えないゴールテープを切った。
「はぁ、はぁ、しんど～」
　前に倒れ込みそうな猫背で息を落ち着かせる。身体の余熱を口から吐き出し、顔を上げた。
「補給もしないとね」
　ウインドブレーカーのポケットから袋を取り出し、吸い口に唇を付けた。力強く握って中身を絞り出す。
　その後、地面に腰を下ろした。仰向けになって雄大な空を眺める。自然と手足が開いて大の字となった。
　――人のいない時間帯だからできる贅沢だよね。澄んだ空気は美味しいし、良い具合に眠くなってきて最高だね。
　ねむるは風に吹かれるまま、静かに瞼を閉じた。

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