【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦｜リアクション

【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦

【竜の鱗は撃ち抜けない】

　そうして、どこかの誰かがすっかり竜の胃袋に到達した頃――。

『…………？』

　何やら城の広間の方が騒がしい、と今更ながらに竜が片目を開いたときだった。

『くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?』
『くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?』
『くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?』

　竜のすぐそばを三匹のガーゴイルが凄まじい勢いで前から後ろへと吹き飛ばされていった。

『………………？』

　これには、流石の竜も少しばかり驚いたようだった。
　竜がわずかに目を瞬かせ、ガーゴイルが飛んできた方向に目をやると――。
『……あー。うん。やっぱり最初っから、こうしときゃよかったんじゃねーの？』
　そちらからろっこん《コロッサルビューティ・ランペイジ》で相当サイズに巨大化した菅波リナが首をこきこきと鳴らしながら、竜に接近してくる姿があった。
　そのリナから逃げ惑うように配下の魔物が広場から中庭に大量に雪崩れ込んで来て、その向こうからさらに人間の大群が押し寄せてくる。
『ま。城の中じゃ瓦礫に仲間を巻きこんじまうかもだからなー。だが、今まで我慢してたぶん、ここで一気に暴れさせてもらうぜ！』
　リナは自身のろっこんの性質上、力も体力も有り余っているのに、今まで目立った活躍ができなかった。
　その溜まったストレスをぶつけるように、リナは間髪入れずに一気に竜のそばまで駆けより、気合の右ストレートをその左ほほに放った。
　だが――。
「あん……？」
　リナは思わず巨大化した喉から変な声を上げてしまった。
　ストレートは綺麗に入ったはずだった。
　手応えもあった。ダメージは通っているはずだった。
　だというのに、竜はまるで痛がっている様子も苦しんでいる素振りも見せない。
　それどころか、口元にニヤリと楽しそうな笑みを浮かべて、大きくその顎を開いた。
「……っ」
　刹那、リナの全身の皮膚が粟立った。
　殺（や）られる、という本能の命令に従って、反射的に斜め右後方へ跳ぶ。
　果たして、その判断は正しかった。
　次の瞬間、竜が吐いた巨大化したリナの頭ほどの大きさのある火球がさっきまで彼女の頭があった場所を掠めていき、城の城壁の一部を吹き飛ばした。
　それを見て、人間達のざわめきが広がり、魔物達の歓声の声が高まった。
　敗戦の色の濃かった魔物達がいったん竜の後ろまで戻ると、そこから陣形を立て直して再びこちらに突撃を開始してくる。
「……なるほどね。伊達にラスボス張ってるわけじゃないってことか」
　呆れ半分、感心半分で、リナはふぅっと息を吐くと、一度巨大化を解いて、仲間達と足並みを揃えるために体勢を立て直すことにした。