【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦｜リアクション

【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦

【黒き竜と貪欲なる挑戦者】

　サジタリオ城の中心に位置する広大な中庭。
　そのさらに中央に位置するところに――その竜はいた。
『…………』
　その竜は城に現れた襲撃者達のことなど歯牙にもかけない様子ですやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
　ぷぅぷぅと鼻ちょうちんを膨らまして眠っている姿はどことなくユーモラスであったが、その天にも届きそうな巨体を目の当たりにすれば大抵の者は笑う余裕などなくしてしまうだろう。
　しかし、骨削瓢はその大抵の人間には含まれていないようだった。
「にしし。ほうら、いい加減に目を覚ましなさいよねぃ」
　瓢は城下町で購入したナイフで、パチンと竜の鼻ちょうちんを割って、その眠りを妨げた。
　彼は、正面突破組も、奇襲組もフランチェスカ護衛組さえも、自分以外の全てを自分の囮に使って、誰よりも早く中庭に辿りついてしまっていた。
　まさに神をも竜をも恐れない大胆不敵さこそが、何よりも最大の（星の力を宿した右眼よりも）彼の武器かもしれなかった。
『……？』
　竜は鼻ちょうちんを割られて、片目だけをゆっくりと開いた。
　ギロリとこちらを睨む爬虫類の目に、さしもの瓢も少したじろいだ。
　竜は目の前に一人人間の子供がいたところで気にも留めずに大あくびをかました。
（にしし！　チャンスですよぃ！）
　その瞬間、瓢はほとんど迷いもなく、竜の口の中に飛び込んでいた。
『……？』
　やはり竜はそんな瓢のことなど気にもとめなかった。空気と唾液と一緒に瓢を腹の奥まで呑み込んで、竜は再び浅い眠りに戻った。