【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦｜リアクション

【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦

【フランチェスカと星の弓】

　その頃、フランチェスカの護衛についていた一行は無事に地下水路を通り抜けて、彼女の私室に辿りつくことができていた。
「……ようやく辿り着きましたね。……あ、あまり見ないでください。人を招くことになるとは思っていなかったので……」
　フランチェスカは恥じいるようにぽつりと呟きつつ、わりと大胆に衣服など脱ぎ散らされた~~ゴミ屋敷~~部屋をかきわけて、星の弓を隠してある部屋の奥の方へ移動した。
「「「…………」」」
　むしろ目のやりばに困っているのは、呉井陽太と獅子目悠月と鮫ノ口礼二郎の三人であった。
（私室に入ると聞いたときから、そのときはジロジロ見ないようにしようとは思っていたが……）
　むしろ見れたものではないフランチェスカの部屋に礼二郎は衝撃を受けていた。少年はそうやって大人になっていくのである。
　しかし、世の中にはもっとヒドい~~ゴミ屋敷~~の主も存在するので、油断してはいけない。
　ちなみに、
「いやー。ギャップ萌えっていいよね」
　などと笑って受け為すニコ・ライニオはその点、大人の風格である。
「…………」
　他方、この状況にエレノア・エインズワースは物凄くイラッとしていた。ともすれば、この状況下では彼女の反応が一番正常であったかもしれない。

「……あ、ありました！」

　と、そのときフランチェスカの声が室内に響いた。
　彼女が愛おしげに胸に抱き寄せたその弓は月の光のような淡く儚い光をまとった美しい装飾の施された弓だった。
「へえ……。これが星の弓……」
　感心したように言ったのは、悠月だ。星の力（狩人）をその身に宿す現在の彼には、その弓がただ豪奢なだけの弓でないことがわかる。
「この弓で星辰の櫓から撃ち抜けば、あの悪しき竜とて一溜まりもないはずです。さあ、みなさん、あともうひと頑張りです。急ぎましょう！」
　フランチェスカは少し焦り気味に、一行にそう促すと、部屋の扉を開けて星辰の櫓への道を先導し始めた。
「あ、待ってください。少し汚れを落としてから行きましょう」
　と、ハンカチを手にした悠月が後を追い、その背中をまた礼二郎と陽太が追いかける。
　作戦の進捗状況はそこそこ順調なようにも思われた。
　しかし、
（さて、そう簡単に事は運ぶのでしょうかねぇ……？）
　後に続く、エレノアの表情には決して楽観的なものは浮かんでいなかった。