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- 00月00日生 00歳
- AAA000000
冬のイチゴの甘い思い出。
着信したメールを見て、おー、と呉井 陽太は思わず歓声を上げた。
「朱乃ちゃんからお誘いのメールが来たー♪」
先日のお茶会の帰り、お土産に飴を渡した陽太に白草 朱乃が告げた言葉――飴のお返しをしたいので、また会ってくれますか？ それを受けてに違いないこの白抜き文字のメールに、すぐにも『勿論、喜んでーっ！』と送りたい所だけれど。
ほんの少し考えて、陽太が送ったメールは、2通。その1通目を受信した、携帯をもどかしく見た朱乃はそこに『イエス』の文字だけがあるのを見て胸をどきりと高鳴らせた。
（覚えてて、くれたんですね……）
お月見で浮かれ過ぎていたせいか、答えは『イエス』しか聞きませんから、と言った朱乃。それをこうして形にしてくれた陽太に、思わず笑みが零れてしまう。
そうして嬉しい気持ちのまま、陽太が2通目に送った『誘ってくれてありがとー♪ 何時に待ち合わせる？』というメールも読んだ朱乃は、急いで待ち合わせの日時を返信した。それから、フユイチゴを使った料理を振る舞わせてもらえませんか？ という事も。
それから数日が経ったその日、2人以外にもフユイチゴを取りに山へと向かう者は勿論、居た。お母さんお手製フード付きの真っ赤なポンチョを羽織って、さながら赤ずきんちゃんのような様子で弾む毬のように山を歩く、水 カジカもその1人だ。
山や、その実りに詳しいカジカにとって、フユイチゴはこの時期にだけ食べられる特別なおやつである。冬はそもそも果実が少なくて、その中で真っ赤な実を揺らすフユイチゴはそれだけで特別で。
ケーキに乗っているイチゴとは違って、口に含むとプチプチ弾ける食感と、いっぱいに広がる甘酸っぱさ。勿論、ケーキのイチゴも好きだけれども、フユイチゴの独特の味も、これはこれで好きだから。
楽しみにしながらカジカは弾む足取りで、他にもたくさんある山の『宝物』に目を奪われたりしながらも、カゴをしっかり肩にかけ山を行く。足元でカサカサ、カサカサ、落ち葉が歌う。
この季節、フユイチゴはあちらこちらに、可憐な赤い実をつけていた。ここにも、とカジカが手を伸ばした茂みは、どうやら以前にも幾つか実をもいでいったらしい跡がある。
誰かな、山の動物かも、と思い巡らせるカジカの前の茂みから、御剣 刀がフユイチゴを貰ったのは実は今朝、それも早朝の事だった。寝子島神社で剣術の練習をした後に、散歩と足腰の運動も兼ねて九夜山を登っていたら、茂みに揺れるフユイチゴを見つけたのだ。
（野イチゴじゃん、美味そうだな）
そう思い、摘まんで口に放り込んでみたら疲れた体に心地良く染みる、程よい甘さ。僅かに感じる酸っぱさも、甘さを引き立たせるようでなお美味しい。
ゆえに刀はすっかり気に入って、九夜山を歩きながらここにも、あそこにも、とフユイチゴを見つけるたびに摘んでは口に放り込む。放り込んではまた歩き、歩いてはまた見つけて口に放り込み。
やがて辿り着いた落神神社で、フユイチゴを供えてお参りをした刀は、さて、と山道を振り返った。寝子高を抜けて帰ろうと、歩き出しかけた足がふと、眼の端に映った影に動きを止める。
「……あれ？」
呟いて眼差しを向けた茂みの遥か向こうには、座り込んでいる人影があった。少し遠くて見づらいけれど、あれは寝子高の制服ではないだろうか。
こんな所で何をしているのだろう、と思う。刀のように九夜山を歩く寝子高生は少なくないが、それでもどこか場違いな印象を受けた。
ちょっと近付いて声をかけてみようと、だから踵を返して茂みへと分け入った、刀の様子を御巫 時子は、遥か高みから見下ろしていて。ろっこんの力で鳥の姿になり、展望台などもぐるりと回って戻ってきたばかりの時子は、刀が去った落神神社の前にふわり、降り立つ。
そうして変身を解除してから、刀は何を見ていたのだろう、と彼が去って行った方へと眼差しを向けた。時子の周りで小鳥たちも、一緒にぐるりとそちらへ頭を巡らせている。
けれども俄かには判らず、何でしょうね、と呟いた時子の鼻腔をふと、甘い香りがくすぐった。こちらは近い、とほんの少し視線をずらしてみたら、茂みに赤い実が揺れている。
「フユイチゴ、ですね……これはジャムにすると美味しいんですよ」
その赤い実に手を伸ばし、時子はほっこりと微笑んだ。その場で1つ摘まんで口に入れると、どう？ と言わんばかりに鳥達が集まってくる。
ふふ、とそれにまた微笑んで、時子は鳥達に向かってフユイチゴの甘さと、酸っぱさを丁寧に伝えた。冬の日差しが柔らかに、その上に降り注いでいる。
「朱乃ちゃんからお誘いのメールが来たー♪」
先日のお茶会の帰り、お土産に飴を渡した陽太に白草 朱乃が告げた言葉――飴のお返しをしたいので、また会ってくれますか？ それを受けてに違いないこの白抜き文字のメールに、すぐにも『勿論、喜んでーっ！』と送りたい所だけれど。
ほんの少し考えて、陽太が送ったメールは、2通。その1通目を受信した、携帯をもどかしく見た朱乃はそこに『イエス』の文字だけがあるのを見て胸をどきりと高鳴らせた。
（覚えてて、くれたんですね……）
お月見で浮かれ過ぎていたせいか、答えは『イエス』しか聞きませんから、と言った朱乃。それをこうして形にしてくれた陽太に、思わず笑みが零れてしまう。
そうして嬉しい気持ちのまま、陽太が2通目に送った『誘ってくれてありがとー♪ 何時に待ち合わせる？』というメールも読んだ朱乃は、急いで待ち合わせの日時を返信した。それから、フユイチゴを使った料理を振る舞わせてもらえませんか？ という事も。
それから数日が経ったその日、2人以外にもフユイチゴを取りに山へと向かう者は勿論、居た。お母さんお手製フード付きの真っ赤なポンチョを羽織って、さながら赤ずきんちゃんのような様子で弾む毬のように山を歩く、水 カジカもその1人だ。
山や、その実りに詳しいカジカにとって、フユイチゴはこの時期にだけ食べられる特別なおやつである。冬はそもそも果実が少なくて、その中で真っ赤な実を揺らすフユイチゴはそれだけで特別で。
ケーキに乗っているイチゴとは違って、口に含むとプチプチ弾ける食感と、いっぱいに広がる甘酸っぱさ。勿論、ケーキのイチゴも好きだけれども、フユイチゴの独特の味も、これはこれで好きだから。
楽しみにしながらカジカは弾む足取りで、他にもたくさんある山の『宝物』に目を奪われたりしながらも、カゴをしっかり肩にかけ山を行く。足元でカサカサ、カサカサ、落ち葉が歌う。
この季節、フユイチゴはあちらこちらに、可憐な赤い実をつけていた。ここにも、とカジカが手を伸ばした茂みは、どうやら以前にも幾つか実をもいでいったらしい跡がある。
誰かな、山の動物かも、と思い巡らせるカジカの前の茂みから、御剣 刀がフユイチゴを貰ったのは実は今朝、それも早朝の事だった。寝子島神社で剣術の練習をした後に、散歩と足腰の運動も兼ねて九夜山を登っていたら、茂みに揺れるフユイチゴを見つけたのだ。
（野イチゴじゃん、美味そうだな）
そう思い、摘まんで口に放り込んでみたら疲れた体に心地良く染みる、程よい甘さ。僅かに感じる酸っぱさも、甘さを引き立たせるようでなお美味しい。
ゆえに刀はすっかり気に入って、九夜山を歩きながらここにも、あそこにも、とフユイチゴを見つけるたびに摘んでは口に放り込む。放り込んではまた歩き、歩いてはまた見つけて口に放り込み。
やがて辿り着いた落神神社で、フユイチゴを供えてお参りをした刀は、さて、と山道を振り返った。寝子高を抜けて帰ろうと、歩き出しかけた足がふと、眼の端に映った影に動きを止める。
「……あれ？」
呟いて眼差しを向けた茂みの遥か向こうには、座り込んでいる人影があった。少し遠くて見づらいけれど、あれは寝子高の制服ではないだろうか。
こんな所で何をしているのだろう、と思う。刀のように九夜山を歩く寝子高生は少なくないが、それでもどこか場違いな印象を受けた。
ちょっと近付いて声をかけてみようと、だから踵を返して茂みへと分け入った、刀の様子を御巫 時子は、遥か高みから見下ろしていて。ろっこんの力で鳥の姿になり、展望台などもぐるりと回って戻ってきたばかりの時子は、刀が去った落神神社の前にふわり、降り立つ。
そうして変身を解除してから、刀は何を見ていたのだろう、と彼が去って行った方へと眼差しを向けた。時子の周りで小鳥たちも、一緒にぐるりとそちらへ頭を巡らせている。
けれども俄かには判らず、何でしょうね、と呟いた時子の鼻腔をふと、甘い香りがくすぐった。こちらは近い、とほんの少し視線をずらしてみたら、茂みに赤い実が揺れている。
「フユイチゴ、ですね……これはジャムにすると美味しいんですよ」
その赤い実に手を伸ばし、時子はほっこりと微笑んだ。その場で1つ摘まんで口に入れると、どう？ と言わんばかりに鳥達が集まってくる。
ふふ、とそれにまた微笑んで、時子は鳥達に向かってフユイチゴの甘さと、酸っぱさを丁寧に伝えた。冬の日差しが柔らかに、その上に降り注いでいる。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年04月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年04月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年04月26日 11時00分
