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家出日和な冬の日に
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部室で記事をいくつかまとめ終わる頃には、冬空は茜の色に染まっていた。
「修ちゃん」
新聞部の部室を出る。冬休みの夕方とあってか、人気の少ない廊下を歩きながら、
後木 真央
は傍らの
八神 修
の横顔を仰いだ。
「どうした、真央」
窓から流れ込む夕日に亜麻色の髪を金色に透かせ、修が淡く笑む。
大抵のわがままをわがままとは断じずに叶えてくれる親友の優しい瞳をしばらく見上げて、真央は少し困った。もう少し話したいと言うのはわがままだろうか。
言葉に迷う様子を見せる真央に、修はくすりと笑みを零す。
「駅ビルのイタリア料理店に行ってみないか」
言った途端に真央の瞳が輝いた。
「石窯ピザなのだ?!」
「知ってたか」
「食キング真央ちゃんなのだ! そうと決まれば早く行くのだ、修ちゃん!」
真央が賑やかな歓声を上げて足早に駆けだす。黄昏に染まる校舎を後にしながら、修はスキップでも踏みそうな真央の背を眺めて瞳を細める。彼女の笑顔を見ていると、こちらまで楽しくなってくる。
夕暮れに賑わうシーサイドタウン駅へと向かう。小さいながらも洒落た雰囲気のイタリア料理店の前で、真央はぴたりと足を止めた。傍らを歩いていたはずの修が、数歩後ろで足を緩め、駅ビルの人混みに視線を投げている。
親友が追う視線の先には、ギターを背に負うた黒髪眼鏡の少年。
追い詰められたような決意に満ち溢れたような表情で、けれど道に迷っているような足取りで歩く少年に、
「今日はなのだ、一緒にご飯どうなのだ?」
真央は迷わず声を掛けた。
「……っ、……いや、……」
眼鏡越しの黒い瞳を惑わせ、寡黙そうな少年は言葉を詰まらせる。首を横に振り、数歩後退って踵を返す。
人混みに紛れるギター少年の背に、真央は気にしない様子で手を振った。
「……家出、かもな」
少年の様子を怜悧な瞳に捉え、修が呟く。
「何だか応援したくなっちゃったのだ」
振り返らぬ少年に向けてまだまだ手を振りつつ、真央は駅ビルの大きな窓に見える明るい夕暮れを見遣る。
「今日は、確かに何か家出日和なのだ」
家出と思しき少年の様子は、家出経験のある真央にとってちょっぴり微笑ましく思えた。
(だって私は)
少年の背が見えなくなる。
(家出したからおじぃの家の子になれた)
「目指す場所があるなら、家出は大事なのだ」
小さな笑み零す真央を、修は見つめる。
「家出日和、か……」
石窯で焼かれた熱々もちもちのピザを旺盛な食欲ではふはふ食べつつ、真央は向かいの席で珈琲カップを傾ける修に視線を向ける。
「真央ちゃんは、……」
何気なく話そうとして、失敗した。己を見つめる修の優しい眼差しから視線を逸らす。店の窓の外を流れる人混みを眺める。
「お互いに押し付けられることが我慢できなかった。多分それが最初の釦のかけ違い、……なのだ」
親の都合で転校ばかりだった。
同じ学校にいられたのは、長くて一年半。短い時は三か月もいられなかった。だから、誰かと仲良しになる暇もなかった。同級生の顔を長く覚え続けている余裕もなかった。
だって覚えていると比べてしまう。
(忘れてしまった方がつらくない)
あの頃はそう思っていた。
弟妹のように親にべったり甘えることもできなかった、あの頃。親に甘えることができないのは、今も同じではあるけれど。
親友の静かな相槌に甘え、真央は思い出を吐き出す。
「違和感ばかり大きくなって」
口元が歪むのは、自嘲気味の笑みにだろうか。
「だから私はリュックに自分の必要だと思った物を詰めて家を出た」
駅を行き交う人々を見つめる。年末に賑わっていたあの冬の日、電車に飛び乗った駅も、こんな風に人で溢れていた。
電車を何本も乗り継いで、何時間もかけて祖父の家に辿り着いた。
驚いた祖父が親に確認の電話を掛けた。親と話す祖父の戸惑いと怒り混じりの声を盗み聞いていて、悟った。
両親は、己が家出したことすら気付いていなかった。
両親が己の家出についてどう言っていたのかは、知らない。正月が明けるまではうちに居るといい、と言ってくれた祖父の言葉が何より嬉しかった。
父と母の声は、電話口でさえ聞けなかった。
正月が明けて、家族が玄関に立った。
父親は祖父や叔父への挨拶もそこそこに拳を振り上げた。
母親は取り乱してひっくり返り、金切り声の罵倒を浴びせてきた。
狂乱する両親の背後から、弟妹達は憎悪の目を向けてきた。
父親の手を止めた、祖父の低く静かな、けれどよく通る声をよく覚えている。
うずくまる己の肩を抱き、隣の部屋に連れて行ってくれた叔父の大きな手の感覚をよく覚えている。
「修ちゃん」
己を真っ直ぐに、労わるように見つめてくれる修を見つめ返し、真央は殊更に明るく笑う。
「真央ちゃんにとっての家出はね、成功体験なのだ」
(私は自分の家族を選んだ)
誰が自分にとっての家族だったのか、真央はもう知っている。
(あの日、家族も私を選んでくれた)
だからこそ今がある。
「家出で幸せになる人もいると思うのだ」
「そうだな」
どこまでも優しく微笑む親友の瞳に、けれど僅かな悲しみを見つけ、真央は瞬く。咄嗟に手を伸ばし、テーブルに置かれた修の手を掴む。
「修ちゃん? どうしたのだ?」
真央の温かな手に冷えた手を掴まれ、修は己の手がひどく冷えていることに気が付いた。ほんの僅か、笑む。
(真央だけは俺の真実を知ってるから)
話しても良いかもな、と思ったのは、幼い日のこと。
己の帰りを待っていると信じて、父にいつか認めて貰えた暁にはきっと会いに行こうと思っていて、けれどある日、――母の死を、知った。
しかもそれは、母の死後しばらくを経ていた。
あの時の息が止まるような悲しさを、今もまだ覚えている。
最初から脱走すれば良かった。そうしなかった無邪気な己を責めると同時、母と己を引き裂いた八神家への怒りと憎しみが爆発した。
「俺も、家出をしたことがある」
(逃げよう)
そう決めて、けれど何処へ逃げればいいのか皆目見当もつかなかった。あても見つけられぬまま、それでももう大人しく八神の家に居たくはなかった。広いバルコニーに繋がる窓を開ける。流れ込む冬の朝の寒さに瞳を顰め、窓の下を見下ろす。飛び降りるには危険すぎる。
部屋に戻る。呼ばない限り使用人の誰一人として入って来ないこの部屋が、今はありがたかった。
鞄に着替えとお金を詰める。騙し討ちのように八神の家の子にした罪悪感からか、欲しいものは何でも揃えてもらえた。小学生の己に使い切れない金銭を持たせられた。
(悪いなんて思っているものか)
『父』の顔を思い浮かべながらベッドのシーツを裂き、きつく結わえて綱を作った。階下の庭に誰もいないことを確かめて窓から垂らした。
鞄を背負い、手製の綱を頼りに庭に降りる。恐怖感の故か、体力のなさの故か、ひどく息が切れた。
切れた息のまま、寒牡丹の咲く庭を横切る。庭を囲う高い鉄柵に沿って歩き、出入り門の草叢に身を隠す。息を整えつつ、門を潜る車を待つ。
腹の底を溶岩のように熱くどろどろとした感情が暴れ続けて、その癖、心は冷たく凍り付いていた。
門の外、出入りの庭師の車が停まった。庭師がインターホンに話しかける。固く閉ざされていた門扉が自動で開く。
白い息を吐き出す。
車が門を潜る瞬間を狙い、身を低くして草叢から飛び出す。閉まる門の隙間を抜け、八神の家の外に出る。
そこからは夢中だった。
足が動かなくなるまで駆けて、偶然停車していた駅に向かうバスへ飛び乗った。何処へ向かうとも知らぬ列車に乗り、名も知らぬ駅でローカル線に乗り換えた。
駅を過ぎる毎、車窓に見える家が疎らになっていった。
終着駅で追い出されるように駅舎の外に出て、出た途端の田んぼでひとり遊ぶ少年と意気投合した。
少年の家に泊めて貰えることになったのは、少年の家族が何かを察してくれた故だろうか。
少年の家の賑やかな食卓に寂しさを覚え、溢れる涙を堪えきれなかった。慌てる少年とその家族に申し訳なくて、背中を擦ってくれる少年の手が温かくて、
「……母さんが、死んだ」
その言葉だけを、やっとの思いで搾り出した。
――また来いよ
そう言って少年が差し出してくれたお握りの包みが膝に揺れている。
バスの車窓に見える冬陽の煌く海にも、心は動かなかった。
家に帰る気は、なかった。だから電車には乗らず、バスに乗った。おかしいと思っただろうに、あの少年は何も言わなかった。
海岸に臨んだ停車場でバスを降りる。潮風に吹かれて砂浜を彷徨い、そのうちに歩く気もなくして座り込む。ぼんやりと波を眺め続けるうち、少し離れた場所に野良猫が座っていることに気付いた。
「おいで……」
呼びかけて辛抱強く待ち、やがて警戒心を解いて寄って来た猫とお握りを半分こして食べた。並んで海を見た。
膝を抱える。抱えた膝に顎を埋める。
(逃げられない)
気が付いていた。
(分かっている)
家からずっと、父の部下に後をつけられている。
身体が萎みつくすような息を吐く。立ち上がった途端、猫は逃げた。
振り返る。
「ご苦労様です」
砂の上、無言で立つ黒コートの男に向け、修は昂然と顎をもたげる。
「帰ります」
小学生だった修が零した溜息の重さを思い、真央は唇を噛む。
心が冷える気がした。何を言っても嘘になる気がした。
片手に掴んでいた修の手を両手で握りしめる。
(今と、未来はきっと)
それだけは伝わるようにと願い、向かいの親友の名を呼ぶ。
「修ちゃん」
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年04月13日
参加申し込みの期限
2016年04月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年04月20日 11時00分
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