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家出日和な冬の日に
『家出日和な冬の日に』 ~ 縁 ~
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「……ごめん」
擦れ違った黒髪の青年が零した言葉を偶然耳に拾い、
呉井 弦月
は錫色した鋭い瞳を瞬かせた。白い頬に髪と同じ金の色した睫毛の影を落とし、上げる。夕暮れ迫るシーサイドタウンの小路を振り返れば、纏めた長い黒髪を夕風に揺らし、セル黒縁の眼鏡を掛けた青年が携帯電話を片手、旅行鞄を片手に歩いている。
詫びの一言は、電話口の相手に言ったものらしい。
(ごめん、か……)
心に思った途端、溜息を吐きそうになった。唇を引き結び、溜息を呑み込む。
(僕からはまだ絶対言わないからな)
歩み去る青年の背から眼を逸らし、反対方向に歩き出そうとして、ふと。
薄紅色した花びらが風に舞ってひとひら、足元に流れ着いた。歩み出そうとした靴先に留まる、この時期に見られないはずの桜の花びらに思わず足が止まる。小さく傾げた頬を優しく掠めて、ふたひらめの桜。
伸ばした指先を掠めた柔らかな花びらが幻のように掻き消えて、弦月は形のよい眉を顰める。そう言えば、先程の青年の髪や肩にも同じものを見た気がする。
もう一度振り返っても、青年の背はもう見えない。
その代わり、夕暮れ闇よりも尚濃い闇を纏っているかのような廃屋に気付いた。あの青年はあのボロボロな廃屋から出て来たのだろうか。
(まさか)
うなじに束ねた金髪を揺らし、緩く首を振る。それに、今はそんなことよりも、
(早いとこ一晩休める所を見つけないと)
冬の日暮れは早い。
(あのバカ兄が帰省なんかするから)
だからこんな冬の日に家出をするはめになってしまった。仲違いをした兄なんかとは顔も合わせたくなかった。まして同じ屋根の下で過ごすなんて真っ平だ。
空に迫る夕暮れを仰ぐ。
(……無断で入るのは良くないけれど)
他に思い当たる所もない。
意を決し、錆びた門扉を開く。雑草と落ち葉に覆われた飛び石を踏み、苔さえ生えた格子戸に手を掛ける。少し力を入れれば、鍵すら掛かっていない戸はあっけなく開いた。
「うわぁ……」
玄関口から薄暗い三和土や廊下を覗き込み、弦月は思わず嘆息する。打ち捨てられて時間が経っていることもあり、入り込む者も少なからず居るのだろう。室内はひどく荒れている。
三和土に靴を揃え、踏み出す度に危うく鳴る廊下を踏んで上がり込む。階段を通せんぼする首なし人形に顔を引きつらせつつ、廊下の奥、薄く開いた襖の前に立つ。雨風を防げるとは言え、
(ここで一晩過ごすのは難しいか……)
どうしたものかと思案しかけて、玄関の戸がそっと引き開けられる音を耳にした。ぎくり、思わず廊下の壁に身を寄せる。誰かが忘れて行ったのか、古びた燭台の影に隠れる。
(なんだ……?)
ここに住む誰かがいるのだろうか。
夕暮れの光を背に、玄関から入って来た人影はまるで誰かを探すように周囲を見回した。
(……と、あれ……)
逆光に目を凝らして気が付いた。人影は寝子高の男子制服を着ている。
自分の後に続いて廃屋に入って来た彼は、靴を脱ぎ、視線を上げ、
「うぉっ」
階段の首なし人形を見て小さな悲鳴をあげた。
「いきなりビビらせんなっつーの」
ガタリとよろめいて玄関脇の靴箱を支えにしつつ、彼は明るい声で笑う。
(悪い人じゃなさそうだ)
思わずくすりと笑んだ途端、
「お、さっきの中坊発見」
足取りも軽く廊下に上がって来た年上の少年に、声と同じ明るい笑顔を向けられた。
「あ、……」
「よっ!」
燭台の影から立ち上がり、申し訳なさそうな顔をする線の細そうな少年に向け、
楢木 春彦
は屈託なく片手を上げて挨拶をする。
「こんなトコにいたのか」
「すみません、勝手に入ってしまって……もしかして、この家に縁のある方ですか?」
中学生らしいその癖、きちんとした言葉遣いでぺこりと頭を下げる少年を見下ろし、春彦は頭を掻く。
「あー、別に俺も関係者じゃねぇよ」
部活を終えた帰り道に前を通りがかっただけだった。その通りがかり、黄昏時に廃屋へと足を向ける少年の小さな背が気になり、後を追ってきた。
「たまたまココ入ってくの見かけたからちっと気になってな」
それだけ、だった。
「……え、」
たったそれだけの理由で、見知らぬ子供を追ってこんな廃屋にまでついてきた男子高校生を見上げ、弦月は目を瞬かせる。
(確かに)
十四の子供がこんな時間に廃屋へ入り込むのは不自然には違いない。
生真面目な弦月はもう一度、相対する男子高校生に頭を下げる。
「ご心配いただきありがとうございます」
下げた頭を戻して、こちらを不思議そうに見つめる新緑色した目と目が合った。
「あの……?」
「あー、や、……どっかで会ったことねぇ?」
真剣に悩む様子の高校生を前に、弦月は首を捻る。
「僕は呉井弦月と言います。会ったことはないと思いますが……」
「呉井って……もしかしてオマエ呉井の弟か」
目の前に立つ少年が、年上ながら呼び捨てにするほど仲の良い友人の弟であることに思い至るなり、春彦は少年の名や顔に友人の面影を見出した。
(月と太陽、かな)
それと同時に思い出すのは、いつだったか、九夜山中の廃墟の教会で聞いた友人の話。
(ケンカしてあんま話せねえ弟って、コイツか……)
「兄を……?」
「俺は楢木春彦。オマエの兄貴とはダチな」
言った途端、弦月は今の今まで強気なほどに真っ直ぐ見上げて来ていた目をぎこちなく逸らした。気まずそうに視線を彷徨わせる様子から鑑みても、今もまだ仲違いしたままであるのは間違いない。
(こんな時間にこんなトコ来るなんてどーしたんだ、肝試しでもしにきたとか?)
どこからどう見てもお化け屋敷な廃屋を見回し、俯いたままの弦月の白い頬を見る。
(っつー顔でもねぇか)
春彦はひょいとその場にしゃがみこむ。不機嫌そうな弦月の顔を覗き込む。
「なんかワケありか?」
「……訳、というか……」
顔を合わせるのも嫌で家出すらしてきた兄の友人からどこまでも真っ直ぐ見られ、途端に思い出したのは、その兄の顔だった。
(……最悪だ……)
思わず眉間に力を込めて、
「オマエいつの間に!?」
春彦が悲鳴じみて上げた声に慌てて顔を上げる。春彦が示す自身の背後を振り返って、
「ゆづきー」
いつの間にか開いた背後の襖の向こう、あっけらかんとした顔で立ち手を振る当の兄の姿を見た。
「コイツの迎えにでもきたのか?」
素直に兄を兄と信じて弦月を示す春彦に、弦月は断固として首を横に振る。
「いやこれ絶対おかしいでしょう」
(そもそもアイツは)
兄は、実家で調べものがあるからと言って納屋にこもっていた。だからこそまともに顔も合わさずに家を出てこられた。
(……ああ、クソ)
兄の姿したナニカに、思わず後退りしたくなる己を叱りつける。足を踏みかえ、ナニカと正面から向き合う。
「こんな風に僕と何事もなかったように話しかけてくるわけないです」
春彦に背を向け言い放つ。そうしながら、兄の顔したナニカを睨みつける。見れば見るほど腹が立って来た。思わず足を踏み鳴らす。
(どうせ神魂のナニカで出て来たんだろう)
「このバカ兄」
早く消え去れとばかり、ナニカの腹に向けて思い切り蹴りを放つ。
「って、オイオイ! いきなり兄弟喧嘩かよっ!?」
躊躇のない蹴りを兄に浴びせる弟に、春彦は目を瞠る。慌てて止めようと弦月の肩に手を伸ばして、
「……あ、消えた」
華奢な肩を掴むか掴まぬかのうち、友人の姿は幻のように掻き消えた。
(……こりゃ確かにあんま仲良くなさそうだな……)
弦月の肩を掴むのとは反対の指で頬を掻く。とは言え、中学生をこんなところに放っておくわけにもいかない。
「弦月、だっけか」
ぶつけどころを失った怒りか苛立ちにかに肩を怒らせる弦月の背を宥めるように軽く叩く。
「オマエが家帰んねぇとアイツも親も心配してんじゃねぇか」
アイツと口にするかしないかのうち、弦月の背に力がこもる。不機嫌に尖らせた唇がますます不機嫌にぎゅっと引き結ばれる。
この状態では兄のことを口にするのは逆効果か、と春彦は焦った。
「それに、」
襖の向こう、不気味な闇を渦巻かせて広がる座敷を示す。ついでに階段の首なし人形も示す。
「こんなトコで寝たらぜってー夢見悪ぃと思うぜ」
春彦が示すままに視線を巡らせ、弦月は最後に春彦を見遣った。錫色の瞳を二度三度と瞬かせる。
(……あ)
瞬かせるうちに、悟る。
(楢木さんが一生懸命気遣ってくれている)
兄を前に取り乱して、みっともない所を見せてしまったのに、
「楢木さんは優しいですね」
兄と同じ高校に通う春彦の優しさに、背中を擦る掌の温もりに、荒れていた心が凪いで行く。
「いや別に優しくねぇって、普通だろ……」
照れてぶっきらぼうになる春彦に、弦月は今日初めて笑った。
「わかりました」
兄と顔を合わせたくないのは変わらないけれど、
「今日は帰ります」
「よし、じゃぁ帰んならさっさと帰ろうぜ!」
あからさまに安堵の表情を見せ、兄の友人は一切の惑いもなく手を伸ばし弦月の手を取った。
「暗ぇし俺も家まで一緒に送ってくからさ」
「え、あの、……」
「いーからいーから、行こーぜ!」
「いえあの、手」
人懐っこく闊達な男子高校生に手を引かれ、もしかすると一夜を過ごすかもしれなかった廃屋を出て行く生真面目な男子中学生の背後で、ゆらり、いくつかの幻を作り出したナニカが白煙のように揺らいで、消えた。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年04月13日
参加申し込みの期限
2016年04月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年04月20日 11時00分
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