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家出日和な冬の日に
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霜柱を踏み潰す。
吐き出す息が白く凍り付く。
九夜山中にひっそりと佇む小さな教会は、真冬の今は枯れ果てた野薔薇の蔦にそのなかばを覆い隠されている。
霜の花の咲いた樹蔦にかじかんで赤い指先で触れる。視線を上げれば、外側から無残に打ち破られたステンドグラスが見えた。
空に溢れる冬陽に榛色の瞳を顰め、
獅子目 悠月
は『忘れ花の教会』と呼ばれる廃墟に足を踏み入れる。
崩れた煉瓦の隙間に痩身を滑り込ませ、所々を破られたステンドグラスの、それでも色鮮やかな光が広がる床を踏む。内部に立つ薄汚れた天使像に向けて進むうち、風に流れて吹き溜まった枯葉に隠れていたステンドグラスの破片を踏み砕いた。榛の瞳に、高く結い上げた赤銅の髪と同じ色した睫毛の影が落ちる。
白い息を吐き出し、前を向く。
廃墟と化した教会内に流れ込む朝陽を両の耳朶にはめたピアスに一瞬反射させ、物言わぬ天使と向き合う。
冬の早朝の山道を一心に辿ってきたせいで、かじかんで痺れる指先に息を吐きかける。同じに冷たい頬をごしごしと擦る。
壁やステンドグラスの隙間を縫って吹き込む風が寂しげに鳴る。
風の音を供に、悠月は唇を開いた。高く澄んだ声でひとり歌い始めるは、真摯な祈りを詠いあげる聖歌。
静かに、伸びやかに、少年は歌う。
朝陽に祈るように歌い続けるうち、榛の瞳に強い決意が浮かび、怒りにも似た焦燥が浮かび、沈む。それでも歌うことだけは止めない少年の胸に浮かぶのは、九歳だったあの頃のこと。幼かったあの日のこと。
――お前は家を継ぐことだけを考えていればいい
歌を歌う人になりたいと伝えて、父に激しく面罵されたあの日のこと。
「教養以外の音楽は必要ない」
冷たい怒りを宿して叩きつけられた父の言葉に、悠月は幼い瞳を瞠る。
厳格な父だった。言いつけを破れば暴力を伴う仕置きさえ受けた。けれど、歌を歌う人になりたいというささやかな夢まで無造作に踏みにじられるとは思っていなかった。
あの頃は、まだ。
だから、九つの悠月は赤銅色の髪を振り乱して激しく首を横に振る。
「そんなのは嫌です」
「悠月」
厳しい教育を施した息子からの思わぬ抵抗に、父の顔が怒りに染まる。肩を掴もうと伸びて来る父の怖い手から逃れ、悠月は後退った。
「そんな、……」
父の怖い顔に言葉が詰まる。父を怒らせることが怖くて、今までは父に盾突くことなんて考えたこともなかった。でも、
「そんな窮屈なままずっとだなんて、嫌です」
この夢だけは、たとえ父にどう言われようと叶えたかった。
顔色を失くして立ち尽くす父に背を向ける。後先を考える余裕もなく、家を飛び出す。
落ちて行けそうなくらいに澄んだ青空が酷く凍えて見えて、着の身着のまま家を飛び出してきたことを悔やんだ。
(教会ならかくまってもらえるかな)
父や使用人たちと訪れた場所をいくつか思い浮かべた後、最後の候補に残ったのは、街外れに建つ白い教会。
(でも……)
教会への道を辿りながら、不安に瞳が揺らぐ。
(連絡されて連れ戻されたらどうしよう)
父はいつでも己に良家の子女たる態度を求めた。二言目には家督を継ぐのだからと口にした。その跡取り息子が家出をしたとなれば、きっと色んなところに見つけ次第連れ戻せと手を回すに決まっている。
冬空を背に佇む街の教会の門扉の前、足を止める。止まってしまえばそれ以上進めなくなって、悠月は長い睫毛を幾度もしばたたかせた。
父に見つかるのが今は何より怖かった。連れ戻されてしまえば、きっときつい折檻をされる。
正門を潜らず、人目を避けて建物の裏手に回る。凍えて震える身体を壁に寄せてうずくまる。どうするべきか思いあぐねていて、ふと、教会のステンドグラスの向こう、歌が聞こえた。
幼い少女の声も、老いた男の声も、若い女の声も、皆がみな、自由に伸び伸びと楽し気に声を響かせている。
(すごくキレイな歌だな)
声の温もりに寒ささえ忘れる気がした。
(僕も、こんなふうに……)
思ううち、知らず聖歌を一緒に口ずさむ。そうすれば心が温かくなった。胸を占める哀しさも心細さも和らいだ。
「歌声が聞こえると思ったら」
優しい微笑み混じりの声を掛けられて、慌てて振り返る。立っていたのは、僧衣を纏うたシスターだった。
「天使さまのお声かと思いましたよ」
「申し訳ありません、こんなところで隠れて……」
頭を深く下げて詫びる悠月から家出の顛末を聞き、シスターは優しく眉を顰めた。
「お父様には私から執り成しましょう。お迎えが来るまで、中で温かいお茶を……ね?」
シスターの執り成しにも関わらず、連れ戻された後に待っていたのは気を失うほどに厳しい折檻だった。
(まだ家から解放されたわけじゃない)
あの時打ち据えられた背に、傷痕はひとつも残っていない。それでも、あの日のことを思い出す度、仕置きを受けた身体のあちこちが痛む気がした。
(この三年間になんとかしないと……)
環境の整った寮があることを理由のひとつに、何とかあの家を出てこの島まで来ることが出来た。けれどここにいるのも、いつ連れ戻されるかわからないあの幼い日の家出と一緒なのだろう。
身体の痛みを抑えつけるように、心を苛む焦燥を宥めるように、悠月は歌い続ける。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年04月13日
参加申し込みの期限
2016年04月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年04月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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