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家出日和な冬の日に
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窓の外が暗い。
布団の中から這い出し、重たい腕で枕元の時計を掴む。開いたままのカーテンの向こうから流れ込む澄んだ月光に見れば、時計の針の示す時間は深夜も近い。
涙で腫れた瞼を、泣き疲れて怠い腕でごしごし擦る。
身体が重い。心が重い。それもこれも、
(……あんな酷いこと、言わなくてもいいじゃない)
夕食の準備時に投げつけられた母からの叱責のせいだ。
――要領が良いだけじゃだめよ
あれもだめ、これもだめ。成績が良くてもだめ、地道に努力して頑張り続けなくてはだめ。些細な事を気にしちゃだめ、親の言う事は聞かなきゃだめ。
「……ッ、」
母親の言葉を思い出せば出すほど、心に受けた傷がひりひりと痛烈に疼いた。思い出すだけで涙が溢れてくるのに、部屋の外は静かだ。
言い募る母と何も言わぬ父に背を向け部屋に閉じこもって泣いて泣いて、泣き疲れて眠ってしまっているうちに、両親は知らぬ顔で床に就いたらしい。
(……新年早々)
喧嘩なんてしたくないのに。
そう思っても、涙は溢れる。抑えきれない苛立ちが腹に煮える。
ベッドから下りる。クローゼットからリュックを引っ張り出し、着替えを、小物を、使い捨てカイロや読みかけの漫画やライトノベルを、それから
篠原 翠響
、自分名義の通帳を、思いつく限りの大切な物を詰め込む。
口座には結構な額の貯金が入っている。
(しばらくは暮らせるわ)
窓の外、冴え冴えとした月光が降り注いでいる。凍り付いた空気さえ目に見えそうで、翠響は一度閉ざしたクローゼットを再び開いた。手袋にマフラー、ダッフルコートで完全武装する。
大事なもので一杯になったリュックを背負い、顔を伏せる。
慣れ親しんだ家を出るのはやはり躊躇いがあった。でも。それでも。
顔を上げる。途端、疲れて重たかった身体が嘘のように軽くなった。己が身に宿るろっこんの発動には無自覚なまま、翠響は自室を抜け出す。知らぬ間に発動させたろっこんの力も借りて、音を立てず気配も消し、自宅から抜け出す。
扉を閉め、オートロックの鍵が落ちる音に親が起き出さないか肝を冷やしつつ、エレベーターに飛び乗る。マンションの最上階から一階に降り、人気のないエントランスを素早く過ぎる。月影ばかりが静かに揺れる駐輪所で自分の自転車の鍵を外す。
(島を出よう)
思い立ち、自転車に跨がり強く漕ぎだす。
身も心も凍らせようとばかりに吹き付ける冷たい北風も、月影と街灯の光ばかりが落ちる道も、視界の端にいつまでも横たわる闇の海も、真冬の夜の何もかもが十四の少女にはひどくきつかった。
寒さと闇に怯えながら、それでも絶対帰るものかと躍起になって自転車を漕ぎ続けていて、道の向こう、コンビニの眩しさとは違う穏やかな光の塊を見つけた。
灯りに誘われるように向かえば、古ぼけたネオンが示す店名は『波風オートレストラン』。トタンに囲われただけの粗末な造作ながら、風を塞ぐ壁と屋根がある。古いポスターが重ねて貼られた立て付けの悪い硝子戸を引き開ける。
不安定に明滅する切れかけの電気の下に並ぶは、缶ジュースに始まり紙容器入りジュースにカップラーメン、焼きおにぎりにたこやき、得体の知れない弁当まで、多岐に渡る自動販売機。
自販機に囲まれたテーブルや椅子に人の姿はない。
熱いコーヒーでも飲もうと、紙コップで供されるコーヒー販売機の前に立って、気づいた。お腹が空いている。
(昼から何にも食べてない……)
母親と喧嘩して、後は泣き通しだった。
母を思い出した途端に鼻の奥がつんと痛んで、けれど泣くのは悔しくて歯を食いしばる。眉間にぎゅっと力を籠め、いつもは避けがちな甘いコーヒーをひとつ買う。取り出し口に紙コップが落ちるまでに、隣のお菓子販売機で袋スナックをひとつ。古びた販売機で焼きお握りを、隣の販売機でハンバーガーを。空腹に自暴自棄も手伝い、目についた食べ物を片っ端から購入して薄汚れたテーブルに集める。
「いただきます」
とんでもなく満載になったテーブルが何だかとても豪華に見えて、翠響は苦笑い気味に両手を合わせた。テーブルの上、無造作に置かれた缶に大量に突っ込まれた箸を一膳取り、買い込んだホットスナックで空腹を満たす。疲れた心を食べ物のカロリーで温めようとする。
美味しいとも不味いとも、何とも言えない自販機グルメをひとりで片づけてから、翠響は我に返った。テーブルに散らかるたくさんの包み紙を指先につついて、
「……どうするのよ、カロリー」
半ば呆れて呻く。
(あたし、こんなに食欲あったのね)
溜息を吐きつつテーブルを片づけ、コーヒーだけをお供に、ぼんやりと外を眺める。流石にこの時間、街道を行く自動車も人も少ない。
その少ない通行人のひとりが、オートレストランの出入り口前で足を止めた。躊躇いがちに中を覗き込み、レストランとは名ばかりの小屋にズラリと並ぶ自販機を物珍しそうに眺め、どうしようかと戸口でしばらく悩む仕草を見せてから、思い切ったように店内に入る。
丁寧な立ち振る舞いで戸を締め、ぐるりを見回す同年代らしい黒髪眼鏡の少年に、ほんの少し見覚えがあった。たぶん、同じ中学校に通う男子なのだろう。
レストランの一角でコーヒーを啜る翠響に気付き、少年はこの場に慣れぬ様子で小さく会釈をした。
「あーっと……どうも」
不愛想な癖に仕草は妙に礼儀正しい少年は、翠響が会釈を返すともう一度物珍し気に並ぶ自販機を眺め始める。
麺類販売機の前に立って鞄から財布を出すも、それきりどうしたらいいか分からずおろおろと立ち尽くす少年を見かね、翠響は立ち上がった。軽い足取りで少年の傍らに立つ。
「お金はここ。硬貨しか使えないよ」
硬貨を入れるスリットを指先に示し、物怖じしない笑みを浮かべる少女を見遣り、
「ここって面白いね」
津島 直治
は眼鏡の奥の黒い瞳を僅かに和ませた。
「俺、ジュース以外の自動販売機なんてはじめて見たよ」
「最近はこういうところかゲームセンターくらいでしか見ないよね」
のんきな調子で笑う少女の目元が泣き腫らして赤いことにうっかり気付いて、直治はちょっと慌てた。視線を外し、自販機に硬貨を入れる。
(……普通の自動販売機と同じですよね?)
ジュース以外の自動販売機を知らない直治にとって、熱い汁物が出てくる自販機は慣れない上に衝撃的だった。
「……ええっと……」
戸惑いつつも『うどん』と手書きの札が差し込まれたボタンを押す。僅かに間があって、自販機の中で機械の動く音がし始めた。目を丸くして見つめている間に、取り出し口にプラスチック製の椀入りの熱々のきつねうどんが押し出される。
「……あ、本当に自動で買えるんですね」
ご丁寧にかまぼこと葱も盛り付けられた温かいうどんに、驚きのあまり心の声がそのまま声に出た。
「不思議だよね」
「あなたも一人?」
くすりと笑みを零す少女に、うどんを手にしたまま直治は話しかける。
「ねえ、少し話でもしようよ」
「いいよ」
気軽に頷き、少女は慣れた雰囲気で元のテーブルに戻った。手招きされて相席に与ろうとして、真夜中のオートレストランにもう一人、客が入って来た。
「あ」
声上げる翠響に、ギターケースを背に負った第三の少年は驚いたように眼鏡の奥の眠そうな目を上げ、
「あ」
翠響と同じく声を上げた。
「虹司」
「篠原さん」
まさかこんなところで出会うとは思っていなかった同級生に、
三夜 虹司
は目を瞠る。
「知り合い?」
テーブルにうどんを置きながら問う直治に、翠響はポニーテールの黒髪を揺らして大きく頷く。君も、と直治に視線を移す。
「同じ学校だよね。あたし、四組の篠原翠響。あっちでトーストサンド買ってる男子も四組の三夜虹司」
「あ、……俺は、一組の津島直治」
「直治ね」
初対面の女子から何の屈託もなく名を呼ばれ、直治は目を瞬かせた。何か答えようとして、結局不愛想な顔のまま何も言わず椅子に座る。
「熱っ!?」
初めて見た自販機でトーストサンドなるものを買い、数分の待ち時間の後に手にした虹司が声を上げた。
「普通にぺちゃんこになってるし」
手作り感満載のアルミホイルで包まれたトーストサンドを袖越しに掴み、虹司は同級生たちのテーブルに近づく。翠響に示された椅子の脇に背負ってきたギターを置いて大人しく座り、見るからに怪しげな古びた自販機の群を見回す。
「変なのばっかりだ」
「うん、俺も」
向かいの席の直治が自販機で買ったらしい熱いうどんを前に手を合わせるのに倣い、虹司も両手を合わせる。午後に家を出たきり、シーサイドタウンの駅前やら海岸やらを延々歩き回って、腹は随分減っていた。夜の寝子島街道沿いに歩いていて、明かりに誘われるようにオートレストランに入ったけれど。
まさか従業員もいない自販機だけのレストランだとは思ってもみなかった。ついでに同級生に出会うとも思ってもいなかった。
冬の道を歩き続けて冷えた掌を温めるトーストサンドの包みを開く。ぺったんこな上に中身のハムはマヨネーズとチーズでベタベタするけれど、
「味はまぁまぁだな……」
そう言えば、向かいの直治が口にしているうどんのプラスチック容器からも、案外本格的な出汁のにおいが漂ってきている。
「……俺も、自動販売機のうどんは初めて食べた」
なんとなく仲間意識めいた笑みを交わす男子ふたりを眺め、翠響はコーヒーを啜った。
「あたしが聞くのも何だけど」
ちらり、悪戯っぽい笑みを零す。
「こんな時間にこんなところで、虹司も直治も、やっぱり家出?」
「家出と言うか、……」
「やっぱり、ってことは篠原さんも?」
直治が言葉を濁し、虹司が首を捻る。確かに、翠響の足元に置かれたぱんぱんのリュックはいかにも家出らしく見えたけれど、学校での彼女は少しつかみどころがないものの基本的には優等生だ。成績もいい。
この前のテストが散々だった虹司は思わず俯く。
「母親と喧嘩しちゃったのよ」
俯く虹司に、翠響はマイペースっぽく話し始める。
「あれもこれもだめ、って言われてるとあたし自身が全部だめ、って言われてるような気にならない?」
「へこむよな」
虹司は頷く。トーストサンドの包み紙を丸め、近くのゴミ箱に投げ捨てようとして失敗した。浮かぬ顔で立ち上がり、コンクリートの床に落ちたゴミを拾って捨て直す。
「……担任の話じゃ、俺、寝子高無理だってさ」
マタ工でもいいけど、と肩を落とし、とぼとぼと席に戻る。
「お先真っ暗なのはわかってるさ」
殊更に不良ぶって言って、言った自身の言葉に落ち込んだ。机に突っ伏す。
「中学卒業できなかったらどうなるんだろう……」
呻きつつギターに触れる。成績もふるわず、性格も地味で容姿も平凡で、けれど今熱中しているギターだけは、少なくとも人並以上に弾ける自負はある。
(恥ずかしくて人前で弾けないけど)
成績の悪さを気にして落ち込んでいる、そういう時に限って、
「親にギター弾いてることばかり槍玉にあげられてさ……まいっちまうよ」
父親に叱られて、もう家にはいられないと思った。ギターだけで生きて行くんだと決めた。だって尊敬するギタリストも家出から始まったとこの前聞いたラジオで言っていた。
それでも家族を心配させるのが嫌で、冷蔵庫のホワイトボードに家出の旨を書き込んだ。警察に連絡しないで、とも。そうして後は、
「ギター背負って、さようなら、だ」
「そっか。あたしも、寝子島を出ようって思って」
同じ冬の日に家出を決めた同級生同士は寂しいような笑みを交わす。
「直治は?」
話の切れ目に空のうどん鉢を片づけようとしていたところを翠響に水を向けられ、直治は頬を掻いた。浮かせかけていた腰を下ろす。
「俺は、叔父さんと喧嘩をした、……とか、そういうんじゃないけど」
なんとなく家に帰りたくなくて、と言葉を濁す。
(そもそも私は居候の身ですし、いてもいなくても……)
家族と喧嘩をしたと言う同級生たちが、ほんの少し眩しかった。ふたりは、きちんと家族に自分をぶつけることが出来る。それが家出というかたちであっても。
実家から逃げるように寝子島に渡り、叔父の家に飛び込んだというのに、その叔父の家からもなんとなく居辛くて逃げて来てしまった。
(私は逃げてばかりですね……)
己の家出は逃げるための家出ばかりだ。
「……情けない」
自分自身を罵倒する声が思わず声に出て、直治は慌てて唇を抑える。気まずげに海からの寒風吹き荒ぶ街道へと視線を逸らして、
「ん……?」
走って来た一台の車が迷う様子もなく前の駐車場に入って来るのを目にした。何気なく眼で追う。車内には三十代らしい短髪の男性がひとり。
オートレストランの光に照らし出される、眼鏡をかけた男性の顔は、向かいに座る虹司と面差しがよく似ている。
深夜のオートレストランにたむろする中学生に気付いて、けれど男性は何故かどこか訳知り顔な苦笑いを零した。己を見る直治の眼差しに気付き、ちらりと片手をあげて車から出てくる。
店内に入って来た男性からは、煙草のにおいがした。
「よお、そこのギター持った眼鏡の兄ちゃん」
戸口でひらりと手を振る男性を見た途端、虹司の眉間にぎゅっと気難しい皺が寄る。
「俺の車に乗って行かねえ?」
あからさまに顔を背ける虹司に歩を進め、虹司の父である
三夜 智蔵
は困りきって頭を掻く。
「……冗談だ、だから無視するなって」
「……親父」
低く、息を吐くように息子からとりあえずは呼んでもらえ、智蔵は車に乗る前に珍しく吸った煙草の苦さの残る唇を笑ませる。
「あの、どうぞ」
「あ、悪いな」
気を遣った直治に席を譲られ、智蔵は小さく頭を下げた。厚意に甘え、息子の向かいに腰を下ろす。座るなり、潔く頭を下げる。
「昼のは俺が悪かった。だから家出は止めにして帰るぞ」
テストの点の悪さはともかく、ギターばかり弾いているのを見るとつい将来が心配になってしまった。それでも、言葉が過ぎたと反省している。
叱りつけた挙句に喧嘩になったのが昼過ぎ。夕飯前になってようやく頭が冷えて、もう一度話そうとしたところで、冷蔵庫のホワイトボードに息子がご丁寧にも残していった書置きを発見した。
書置きのあまりの息子らしさに思わずほのぼのしていた背中を、嫁にどやしつけられた。父子喧嘩の責任をとれと。虹司を見つけるまで戻って来るなと。
ついでに玄関から放り出されて、お父さんはちょっと途方に暮れた。
嫁さんのあの様子だと、見つけて連れ帰るまでは本当に家へ入れてくれない。
仕方がないので、ポケットの底、とっておきに備えて一本だけ残していた煙草を吸いつつ考えた。
旧市街に本家を置く三夜家は寝子島に名だたる大家族。島内とにかく親戚も多い。親戚の家のどれかかと思うも、そうであるならきっとすぐに連絡が来そうなもの。
島外に出たことを一瞬考えてすぐに否定する。息子は家を出たとしてもこの島を出るとは思えない。となれば、考えられる場所はひとつきりだった。
(……何というか、血は争えないもんだな……)
そのひとつきりの場所で思った通りに見つけた息子を前に、智蔵は頭を下げ続ける。
「なんでここに」
「うん?」
「いや、なんでここにいるのわかったんだろって不思議でさ」
そう怒ってもいなさそうな息子の声音に安堵して頭を上げる。照れ臭げに頭を掻いて肩をすくめる。
「昔家出した時よくお世話になったんだよ」
「そうなんだ、親父も家出してここに来たことあるんだな……」
何というか、と智蔵は息子が家出してまで続けようとしたギターを見遣る。
「俺はドラムでお前はギターだけど、……音楽好きとか、家出先とか、」
最後は少し言い淀んで、
「……あんまり頭良くないところとか」
結局は言葉にする。
「やっぱ俺の息子なんだな……」
一言余計な父親をちょっとだけ睨み、虹司は破顔する。
「ドラム叩いてたの、初耳だよ?」
笑う息子につられて笑ってから、父はもう一度頭を下げた。
「……お前を連れて帰るまで帰ってくるなって母ちゃんが言ってよ」
「かあ……お袋がか。情けない話だけど俺のせいだよな」
「だから一緒に帰ってくれ」
何度も何度も頭を下げる父親に、息子はうなだれる。姿勢を正し、父より深く頭を下げる。
「心配かけてごめん、なさい」
お互いに謝り合い、下げていた頭をほぼ同時に上げて笑いあう父子を眺め、直治は叔父を思う。
(心配しているでしょうか)
家を出たきり連絡もしていない。怒っているかもしれない。
ポケットから携帯電話を出し、電話マークの右肩に『28』の数字が何故か現れているのを不思議に思った瞬間、音も振動も切っていた携帯電話の画面が光った。瞠る目に映ったのは、叔父の名。
「……もしもし」
機械音痴な甥っこは着信履歴が溢れていることにはさっぱり気付かず、恐る恐る叔父からの電話に出る。
「えっと……う、うん。今から帰るよ……」
いつもと変わらぬ調子の叔父の声に安堵する。少なくとも、夜遅くまで連絡もなしにいたことを怒ってはいない様子。
「……ごめん」
小さく詫びて、電話を切る。
「それじゃ、帰ろっか」
テーブルの端で家出仲間たちの話を聞いていた翠響がどこか憑き物の落ちた明るい表情で立ち上がった。
「冷えたしよ、ラーメンでも食ってから帰ろうぜ」
今日偶然この場に揃った家出息子と家出娘を見回し、この場で唯一の大人である智蔵は大きく伸びをする。正直財布の中身は心配だが、息子と同じ境遇にあった子供たちとそのまま別れるのは気が引けた。
(ラーメン四杯くらいなら何とかなるな)
「いや、悪いし」
「え、でも……」
遠慮する様子の直治と翠響に、出来るだけ大らかに笑って見せる。
「ここの自販機よりうまいラーメン屋知ってるし」
「ここの見てたら食べたくなってきたところだよ、食いに行こう」
家出仲間だった同級生たちに、虹司は明るく笑いかける。
ギタリストにはなり損ねたけれど、今日のところは家に帰ろう。
だって父親の知らなかった面を知ることが出来た。同級生の家出仲間にも出会うことが出来た。
家出もたまにはしてみるもの、
(……かな?)
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
家出日和な冬の一日、お届けにあがりました。
切ない過去や思春期な今現在や、ほんわか動物ものまで、色んな家出を書かせていただきました。楽しかった!
書きながら気づきました、小学校中学年と中学二年生あたりが家出年代(?)なのかもしれません……!
お話、少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
読んでいただきまして、ご参加くださいまして、ありがとうございました。
また次でもいつでも、ご縁を頂けましたら嬉しいです。
ありがとうございましたー!
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年04月13日
参加申し込みの期限
2016年04月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年04月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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