＜寝子温泉よりSOS＞温泉が出なくなりました……｜リアクション

＜寝子温泉よりSOS＞温泉が出なくなりました……

「調査隊と連絡がとれないって、結構危ないんじゃないか？」
　九夜山中腹、まだ朝もやのかかる寝子温泉の観光通りに、御剣刀の声が響く。
「年末の稼ぎ時にこれは痛い」
　桜庭円が言うと、足元のにゃーくんがあくびと一緒に鳴いた。
「温泉が出るまでの間を持たせるかーどうしようかねー」
　思案する円をよそに刀は準備を始める。
「お。刀くんいずこへ」
「調査隊が心配だからな。神魂の影響でやっかいなことになってるかもだし」
　幸い武器は持ってきている。闘う者としての本能も手伝い、迷うことなく山林を目指そうとした。
「バイト代もらえなくなりますけど？」
「うっ」
　刀の足が止まる。何かとかさ張る年末年始、バイト代がもらえないのは痛い。すごく痛い。
「とはいえ原因を解決しないことには、バイト代も出ないかもしれませんし……」
　御巫時子が白い息を吐きながら言うと、横の梅戸有留もうなずいた。
「確かにそうなんだよなー」
　悩みどころだ、と腕を組む円。
「刀くんには冷却装置の様子見てきてもらうかー」
「おう、バイト代がもらえないのは実に惜しいがな！」
「まあ見事解決して、バイト代に色付けてもらったら、少しはボクのを分けてあげるよ」
「おう、営業のほう頼んだぜ桜庭」
　刀が再び歩き始めたそのとき。
「私も一緒に行くよー」
　白真白が駆け寄る。防寒のため厚着だから、残念ながら大きな胸の揺れを見ることはできない。
「一体何が起きてるのか知りたいし、私なら戦いに向いてると思う」
「私も便乗するのです！」
　回復役はお任せあれ。そう豪語しながら椿美咲紀も、冷却装置組に参加表明。
「これは事件のにおいがします！　新聞部としての血が騒ぐのです。ね、部長」
　美咲紀に声をかけられ、思案していた八神修が「そうだな」と言葉を切り出す。
「営業停止状態の温泉街を救う勢と営業妨害の原因を探る勢、分かれて行動するのが得策だな」
「部長の高性能カメラが役立ちそうです！」
「ああ。万全を期して発とう」

「有留さんは……温泉に来る方々のもてなしを？」
　時子の問いかけに有留は何度もうなずく。
「僕が行っても足手まといになるだけだからね」
「僕も寝子温泉を支援しようかな」
　2人の会話に恵御納夏朝ののんびりした声が交ざる。
「寝子島名物を朝のうちにたくさん調達してきてお客さんをもてなせば、時間は稼げるはず」
「そうだね！　一緒に買い出しに行くよ」
　夏朝と有留はさっそく山へ下りる算段を立て始めた。
「寝子温泉のことは夏朝ちゃんや有留ちゃんたちに任せるのだー」
　赤猫リュックを背負いひと際目立った格好の後木真央が言い放った。
「じゃあ後木さんは冷却装置の方へ？」
「現場で何が起きているのかをしっかりレポートするのだ！　ねこったーで！」
　キリッと凛々しくポーズをとる。
「真央、もたもたしてると置いてくぞ」
「修ちゃん待つのだーそれじゃあ寝子温泉の営業よろしくなのだ！」
「お気をつけて……」
　朝からハイテンションでパタパタと駆けていく真央であった。

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