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【クリスマス】メリークリスマス、旧市街
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七面鳥は通販で手に入れた。
まな板の上に乗せた丸鶏を前に、
乃木 成美
は腕まくりをする。
祖父を慕っていたお陰もあってか、肉じゃがや金平ごぼう等の和風料理はそこそこ得意だけれど、七面鳥を調理するのは始めてだ。
(でも、せっかくだからね)
眼帯に隠れていない右の黒い瞳が淡く和む。
クリスマスイブの夜、クリスマスパーティをして一緒に過ごそうと言い出したのはどちらが先だっただろう。
旧市街のアパート『美味荘』のお隣さん同士である
仲村渠 鳴
とは、普段からよく一緒に食事をしてはいる。それでも、今回はクリスマスイブの夜。普段とは違う食材も用意した。特別感にわくわくしないわけがない。
隣室で準備をしているはずの鳴もそうであればいいな、成美は小さく笑って再び七面鳥と対峙する。
(ちょっと和風にアレンジしてみようかな)
味付けを醤油ベースに変更して、七面鳥を漬け込む。部屋の片づけや飾り付けをしている間に味を染み込ませ、オーブン皿に乗せる。ジャガイモや人参やブロッコリーを大きめに切ったものを付け合わせ用に同じ皿に飾り、温めたオーブンに入れる。
漬け汁を時々七面鳥の皮に塗りつつ焼き上げれば、クリスマス料理のメイン、七面鳥の丸焼きの出来上がり。
オーブンの電子音が響くのと、
「今晩はー!」
インターホンが鳴るのはほとんど同時。
「いらっしゃい、鳴さん」
「雪が降ってるよ」
両手に抱えるほどの大きな箱を持った鳴の背後は、静かに降りしきる白い雪。
「本当だ、寒いわけだ」
「積もるかな」
楽し気に白い息を吐いて笑う鳴をドアの内に招き入れながら、成美は日暮れの空を灰色に染めて降る雪片を見上げる。沖縄から来た少女に関東の寒さは堪えるだろうけれど、向こうに降らない雪はきっと珍しくて面白いものなのだろう。
「積もるといいね」
「ね!」
お邪魔します、と部屋に入るなり、鳴は亜麻色の髪を揺らして振り向いた。
「いい匂い」
「七面鳥を焼いてみたんだ」
成美がオーブンから焼きたての七面鳥を取り出せば、鳴が両手に持った箱を掲げて苺色した瞳で笑う。
「あたしはホールのクリスマスケーキを作ってみたよ」
「あれ、鳴さんも?」
「成美にばかり料理させるわけにいかないしね」
何度も食事を共にしているうちに見知った台所の食器棚から皿を借り、鳴は箱からホールケーキを取り出す。純白の生クリームに深紅の苺、至って普通なケーキだけれど、
(……味見はできなかった)
先天的に味覚異常を持つ鳴にとって、お菓子作りは初めてな上にかなりの冒険だった。
「すごい、手作りのケーキだ!」
手放しに喜んでくれる成美に小さく頷き、鳴は神妙な顔つきで皿に乗せたケーキを食卓に運ぶ。
材料は全部慎重に計量した。厳選したレシピに忠実にも作った。
「多分大丈夫」
不安は残る。
「……だと思う」
残るけれど、
「うまく作れてたらいいな」
「味が気になる?」
「気になる」
食卓の端に乗せた自作ケーキを前に不安の色を隠せない鳴に、七面鳥を運んできた成美は大丈夫だよ、と屈託なく笑った。台所から大きなスプーンをふたつ取ってきて、ひとつを鳴の前に置く。もうひとつは置かずにそのまま、迷いもせずにケーキを大きく掬い取る。
「鳴さんが一生懸命に作ったケーキが不味い筈がないよ」
何の躊躇いもなくぱくり、と口に含む。
「わっ、……だ、大丈夫……?」
咄嗟に止めようと伸ばした手を宙ぶらりんに、鳴は成美が最初のひとくちをかみ砕き飲み込む様子を心配そうに見守る。成美の顔が今にも不味そうに歪まないか心配で心配で、だから成美が心底美味しそうに破顔したときには泣き出しそうなくらいに安堵した。
「鳴さんも、ほら」
成美がケーキをもう一匙すくい、鳴に差し出す。
「美味しいよ」
大真面目な成美に言われるまま、鳴は差し伸ばされたスプーンを口に入れる。ふわり口に広がる生クリームの甘みに、苺の甘酸っぱさに、スポンジの柔らかさに、思わず目を見開く。泣き出しそうに、笑う。
普段ひとりで食べているときには刺激の強い食べ物でなければ食べた気分にならないけれど、
「やっぱり成美と食べるものは美味しいね」
「鳴さんが頑張って作ったからだよ」
小さな食卓と、それぞれがそれぞれのために作った料理を挟んで向き合い、鳴と成美は笑みを交わす。
「メリークリスマス、鳴さん」
「メリークリスマス、成美」
ふたりきりの食事が大分に進んだ頃、成美がひょいと席を立った。
「はい、鳴さん」
僕からのプレゼント、と手渡されたのは、赤い手袋。
「これ……!」
以前、道でばったり出会って帰路を共にした時、衣料品店で見かけて気になっていた手袋を握りしめ、鳴は成美を見上げる。
あの時、隣にいた成美には何も言わなかった。これいいなとも、欲しいなとも、何も。
(……ちゃんと見ててくれたんだ)
「嬉しい」
プレゼントを胸に抱きしめ、鳴は微笑む。見ていてくれたことが何よりも嬉しくて、胸が熱かった。
「大事にするね……!」
鳴のあまりの喜び様に気恥ずかしくなって、成美は頬を引っ掻く。
「暑いところ出身だと、寒さが苦手だろうし……」
「あたしも」
「え、」
「プレゼント」
ふわり、成美の目前に深い森の緑色したマフラーが広げられる。
「この色、成美に似合いそうだなって思ったの」
手袋を手にしたまま、鳴は成美の首にマフラーをそっと巻く。
「いいね」
「気に入ってもらえたら嬉しいな」
「ありがとう、僕も大切に使わせてもらうよ」
互いに視線を合わせぬまま、ほとんど同じ瞬間に笑みを零し合って、今度は眼を合わせて笑いあう。
「……あのね、成美」
手を伸ばせば届く位置に向き合い、鳴は唇を開く。
「あたしが歌手としてデビューしてるのは知ってる……よね?」
「え、うん」
確か最初に彼女と会ったのはラジオの生放送でだっただろうか。
(それからあの音楽室から……)
「いろいろあったね、ほんと」
記憶を辿って眼を細める成美に、鳴は頷く。この機会に言葉にしようと、そう思った。
「いろんなことが立て続けに起こって、落ち込むことも多かった時期だったの」
静かな眼差しを返して耳を傾けてくれる。この人は、いつだってそうだった。
「でも、成美が励ましてくれたり、あたしの歌を肯定したりしてくれたから……」
そうしてくれたおかげで、随分と励まされていた。
感謝の気持ちをどう伝えればいいものか迷った末、鳴は心からの笑みを成美に向ける。心からの感謝を素直な言葉にする。
「……ありがとう」
真正面から感謝の気持ちを伝えられ、輝くような笑顔を向けられ、成美は緩く首を横に振る。伝えなくてはならないのは自分の方だと、そう思った。
「鳴さん、」
言いかけて、ちょっと言いよどむ。もう一度、クリスマスイブの夜に傍に居てくれている少女の名を呼び直す。
「……鳴の歌を聴いてるとさ、僕も元気になる気がしていてね」
励まされたのは自分の方だと思う。彼女の歌は、彼女の一生懸命さが真っ直ぐに伝わってくる。
(うまく表現できないけど、)
いい歌なのだと心から思う。それを彼女にどう伝えればいいのだろう。
伝えたい思いを言葉に出来ず、成美は自身の胸を叩く。
「……ここに響く」
だから、と彼女の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「僕からもありがとう、鳴」
言ってから、思わず口元を抑える。呼び捨てにしてしまった。
ごめんね、とうろたえ気味に詫びて、
「……いい、かな?」
遠慮がちに問うたところで、当惑したような鳴の目と目が合った。
「も、もちろんいいわよ。あたしはずっと成美って呼んでるし」
むしろ、と小さな声で付け加える。
「やっと呼んでくれたって思ってるんだから」
鳴の言葉に成美は胸を撫で下ろす。鳴に掛けてもらったマフラーに片手で触れ、照れたように瞳を細める。同じ屋根の下で同じご飯を口にする少女の名を、呼ぶ。
「鳴」
少女が歌に思いを籠めるように、己は少女の名に少女への思いを込めて。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
49人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年02月06日
参加申し込みの期限
2016年02月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年02月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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