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【クリスマス】メリークリスマス、旧市街
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雪の匂いがする。
道場の壁に平行に伸ばしていた背を僅かに揺らがせ、
伊織 源一
は閉ざしていた瞼を押し上げた。道着の裾を捌き、十七には見えない二メートル越えの巨躯を立ち上がらせる。
全身に纏うたごつい筋肉をみしりと軋ませ、強面な顎を縁どる無精髭を太い指先で引っ掻く。鋭さの目立つ眼差しで、道場の格子窓の向こう、黄昏を覆い隠して降る雪を確かめる。
唇を真一文字に引き結び、祖父が家元を務める『仙狸館』の武術道場を出る。果たし合いにでも出かけるような面持ちは、
「どこ行くんだ、源一」
道場の隣の鍼灸・接骨院から出て来た祖父、
伊織 紘之助
に声を掛けられた途端、当惑したように崩れた。
「……少し出かける」
「暇ならお爺ちゃんとクリスマスパーテーやんねぇか」
本当は昔のように孫と一緒にツリーを飾り付けたかった。家の居間を飾り付けて、楽しくクリスマスパーティーをしたかった。それなのに、ここ数年、孫はつれない。お爺ちゃんがどんなに誘っても、そういう歳でもないだろう、とさっぱり乗ってきてくれない。
(つっても源一だってまだ十七だ)
口数が少ないせいで年嵩に見られがちな孫ではあるが、祖父からしてみれば幾つになっても孫は孫。孫は可愛い。両親を亡くしてからずっとふたりで暮らしてきた孫は真面目で克己的で硬派で、それはもう目に入れても痛くない。
(ほんとはパーッと楽しくやりてぇに違いねェさ)
見れば、幸い孫も今日は暇そうにしている。今しも出かけようとしていたようにも見えるが、きっと暇をしているに違いない。
(ここはお爺ちゃんが一肌脱いでやるとすっか)
自慢の孫とクリスマスにかこつけて仲良く遊びたいお爺ちゃんは考えた。
「良く飲みに行く焼き鳥屋のハナでクリスマス会をやるってぇ話を聞いてよ」
祖父から一緒に行こうと誘われて、源一は黒い瞳をしばたたかせる。
(多分)
思うに、祭り好きな祖父は理由をつけて酒を飲んで騒ぎたいのだろう。
「……そうか」
言葉少なに源一は頷く。孫の首肯を受けて、祖父は皺くちゃの顔をますます皺くちゃにして笑った。
「今日は美味ぇ酒が飲めそうだ」
カカカ、と楽し気に笑って歩き始める祖父に続きながら、源一はそっと目を伏せる。本当は折角のクリスマスイブ、
(ケーキでも買って家で食べようと思っていたが)
理由をつけねばなかなか甘味を口にできない超甘党な巨漢は、無言のまま、痩身でありながらも真っ直ぐに伸びた祖父の背を見遣る。
(……たまには付き合ってやるか)
良く行く、と言うだけあって慣れた足取りで路地を歩く祖父の後を追うてしばらく、
「おお、面妖な格好してんなァ」
頓狂な声あげて祖父が立ち止まった。
祖父の頭越しに見れば、
プレゼントの代わりに毒でも撒き散らしそうな、何かを殺る気に漲らせたデビルサンタクロースな女子が、路地の端で野良猫と戯れている。
「どうした、迷子か嬢ちゃん」
その毒々しいデビルサンタに、祖父は躊躇なく声を掛ける。
「何なら一緒にハナのクリスマス会行くか」
「ハナなのだ!」
野良猫に逃げられたサンタクロース女子は、野良猫よりも野良猫っぽいくるりとした翡翠色の猫目を見開いて立ち上がった。段ボール製の鉈と甘い匂いを撒き散らす白い袋を肩に担ぎ、
「三千円で九時まで四時間飲み放題喰い放題のクリスマス会!」
雪降る路地に力いっぱい叫ぶ。
「おう何だ、行き先は俺達と一緒か」
「真央ちゃんもハナに行く途中なのだ、だから一緒なのだ。お爺ちゃんとお孫、……お孫さん?」
人当たりのいい老翁の後ろに塗り壁のように物静かな威圧感で立つ男を見仰ぎ、
後木 真央
はサンタ帽子の首を傾げる。
「おうよ、自慢の孫だぜ」
伊織翁の孫自慢を兼ねた自己紹介を受け、真央は猫耳付き小袋を肩の袋からふたつ取り出した。数日前からちくちくと山のように縫い上げた猫耳つき小袋の中には、今朝方大量に焼き上げたジンジャーブレッドが入っている。
「真央ちゃんは後木真央と言うのだ、紘之助ちゃん、源一ちゃん!」
「マメだなァ、お前さん」
ハナへの道を三人で辿りながら伊織翁に感心され、デビルサンタな真央は胸を張る。ハナのクリスマス会の詳細を店先に見て、真央が真っ先に思い浮かべた文字は『四時間耐久飲み喰い放題』クリスマス会。その誤解をそのまま今まで思い込み、そうであるならクリスマス会につきもののプレゼント交換などなさそうだと重ねて思い込んだ。
(いやしかし四時間に渡って焼き鳥を食い尽くせるならまた一興!)
プレゼントなどこちらで準備すれば充分だと、今日まで張り切って用意した。
サンタ帽子とサンタ袋を雪に揺らし、真央は夕闇迫る路地の果て、ぴっかぴかに飾り立てられた目的地の焼き鳥屋を見遣る。わくわくと躍る心のままに飛び跳ねて、ちょっぴり肩を落とす。楽しい楽しいクリスマス会とは言えど、高校生は夜九時までしか会場のハナに居られない。
「こ、子どもってつまらないのだ」
「うん?」
「深夜までハナで騒ぎたかったのだ~」
猫の集会に参加するため、深夜徘徊は慣れている。騒げる場所で騒ぎ続けられないのはやっぱりちょっぴり悲しくて、真央は雪の空を仰ぐ。
「カカカ、しょうがあるめェ」
伊織翁に笑い飛ばされ、ジンジャーブレッドを齧りながら強面を緩める源一と眼が合い、真央は笑う。日付が変わるまでの大騒ぎのパーティに憧れるのは高校生だからなのかなと思う。だからこそ、
(逆にそんなものないんだろうなぁ)
そうも思って、ええいとばかり段ボールの鉈を振り回す。こうなったら元の計画通り、時間いっぱい散々飲み喰いするまで。
「お、こっちの嬢ちゃんも張り切ってんなァ」
「チャイナなのだ! チャイナサンタなのだ!」
雪の降る焼き鳥屋の前に立つクリスマス仕様なチャイナ服の少女を見つけ、伊織翁が楽しげに目を細める。
飛び跳ねる足取りの真央に駆け寄られ、チャイナサンタな格好の
畑中 華菜子
は思わずひょいとポーズを取って見せた。
「今晩はアル!」
「チャイナサンタもクリスマス会なのだ?」
同い年程のデビルサンタに笑いかけられ、チャイナサンタは大きく頷く。
華菜子の家は旧市街の参道商店街でラーメン屋『猫島軒』を営んでいる。『やきとり ハナ』は昔からのご近所さんではあるけれど、居酒屋と言うだけあって、父親に連れて来てもらう以外に、普段は一人で来る機会が得られなかった。
(でも、今日はお子様も歓迎なクリスマス会!)
その居酒屋の硝子ケースに貼りつけられた『クリスマス会のお知らせ』を見、華菜子はぎゅっと拳を握りしめる。
「老若男女みんなで楽しいクリスマスイブを過ごしたいアルー」
「えいえいおーなのだー!」
雪に上気した頬にえくぼ浮かべるチャイナサンタと共、喰い気に満ち満ちたデビルサンタは鉈を振りかざして気勢を上げる。
「たのもーなのだー!」
「メリークリスマスアルよー!」
意気揚々と格子戸を引き開けて、
「わー! 女将ー! 女将ー! 久し振りー! イヴだよ!」
カウンター越しに店の女将の両手を両手で握り、元気いっぱいにはしゃぎまくる妊婦さんに圧倒された。
「今日はクリスマス会開いてくれてありがとう! お陰でイヴもこうやって参加出来たヨ!」
「あらあらまあまあ、お腹も大分大きくなって」
「フフ、後三四か月で生まれるんダ!」
明るい海色の瞳をきらきらさせ、
毒島 イヴ
は膨らんだお腹を撫でる。
「この子が生まれたまた来るからネ! それまで待っててネ!」
賑やかな妊婦をいつでも抱きかかえて支えられる位置に立ち、
毒島 柘榴
は女将にひらりと手を振る。
「こないだ振りだな。どうだ? 太一とは仲良くやってるか?」
「その節はありがとうございました、仲良くやってます」
女将の隣に並び立ち、店員が厳つい頭を常連の柘榴にぺこりと下げる。すぐさま焼き台の前に戻って大量の焼き鳥を次々に仕上げて行く店員のごつい背中を眺めて柘榴が思うのは、店先に見た『ぼっち会』、もとい『飲み会』の貼り紙について。
「もうね、どう思う?」
同じことを考えたらしい女将に縋るような眼で見られ、柘榴は眉を顰めて困る。
「……まあ、あいつもそういう行動を起こすのは良い事だと……思うぞ?」
言葉を濁して半ば呆れつつ、
(早くあいつにもいい人が出来りゃいいな)
心で祈る。
「あんたが女将さんか……」
賑やかな母親と不器用な父親とは少し距離を置いて、
毒島 林檎
がぶっきぼうな視線を女将に向ける。
「うちの親父とお袋がいつも迷惑かけてるな」
「林檎ちゃん? まあ、大きくなって!」
女将がカウンターから身を乗り出す。しかつめらしい表情を吹き飛ばす勢いで話しかけられ、林檎は思わずそっぽを向く。
「営業妨害してないか、うちの親共?」
不愛想に言い放ってから、
「いつもお父さんとお母さんと仲良くしてくれてありがとうございます」
ぽつり、知らず心のうちを零す。
「あらあらあら!」
華やかな声あげる女将に頭を撫でられそうになって咄嗟に避け、非難の色を瞳に浮かべて女将を睨みつけつつも、
「今日はお世話になります」
「ゆっくりしていって頂戴」
表情とは裏腹の言葉を口にする林檎ににこにこ顔で頷き、女将は早くもお客で満席になりつつある店内を見回す。カウンター席が十席あるばかりの店は何せ狭い。その上ありがたいことに次のお客が戸口に立ってくれている。
「あ、俺、外でも平気だぜ」
カウンター席で両親と祖父と並んで座り、鶏モモ肉にかぶりついていた
山田 勘三郎
が元気よく手を上げるなりひょいと立ち上がった。焼き鳥の乗った皿を片手に壁際に沿って歩き、店の外に出る。
「お、ホワイトクリスマス」
雪降る空を仰ぎ、勘三郎は笑う。
クリスマスとは言え、彼女もいなければ浮いた予定も何にもなかった。クリスマスらしいことと言えば、商店街でほんの少し臨時バイトをしただけ。何だかなあと思っていたところに、楽をしたい母と飲みたい父親と祖父の意見が一致して、祖父行きつけの焼き鳥屋のクリスマス会に引っ張って来られてしまった。
(ま、いいんだけど)
チキン好きだし、と勘三郎は鶏モモの焼き鳥を齧る。
「ああ、俺も」
勘三郎が立ったのを潮に、叔父に有無を言わさず連れられて来ていた
津島 直治
が声を上げた。連れて来るだけ来て、甥っ子を放って山田家の人々と勝手に盛り上がる叔父を捨て置き、直治は満席の店内から戸外へと出る。
(私は私で過ごすことにします)
外に出たところに並んで立っていたチャイナサンタとデビルサンタが、揃って元気よく手を上げる。
「私も外がいいアル!」
「真央ちゃんは飲み喰い出来るならどこでもいいのだ!」
戸外宴会の準備を始める店員を手伝うサンタたちに混じり、
伊織 源一
が店の外にテーブルと椅子代わりのビールケースを黙々と設置する。店員が灯油ストーブと七輪を店の裏から引きずり出せば、雪のクリスマス会の準備は完了。
「素敵ネ!」
大はしゃぎで外に出ようとしたイヴを、店内に居た女将や母親連が結託して引き留める。しょんぼりする無邪気な妊婦のために、女将が格子戸を開け放つ。
「こうしておけば雪も見られるものね」
開いたままの格子戸を潜って、
伊織 紘之助
が端の席に腰を下ろす。
「よう女将、今日は源一と一緒に来たぜ」
「はい、いらっしゃい。今日はお孫さんも一緒なのね」
駆けつけ一杯、とばかりに差し出されたアルミ製ちろり入りの熱燗を迷わずコップに注ぎ、伊織翁は店員を手伝って雪避けのタープを張る孫を眩し気に見守る。
「ちっちぇえ頃から優しくてよくできた子でなァ……」
「お孫さん、お幾つでしたっけ」
女将は店員よりも更に体格がいい上に成年に見える源一を呼び込み、祖父と並んで座らせる。祖父と同じように熱燗を供されそうになって、
「いえ……未成年なんで」
生真面目に断る孫に、酒の入った祖父の孫バカはヒートアップする。
「偉ェよなァ、律儀だよなァ。お陰でこの年で庵流の免許皆伝、俺ァ気儘が出来るってもんだ。俺と違って頭も良いんだこいつは」
「大袈裟だ」
祖父の臆面もない孫自慢に当惑しつつ、それでもやっぱり律儀に祖父に付き合い、祖父の隣に席を定める。隣やその隣の客と旧来の友人のように親し気に言葉を交わし、酒を酌み交わす祖父を見るともなしに眺め、浴びる勢いで酒を喉に流し込む様子に少し眉をひそめる。
「飲み過ぎてないか、爺さん」
「こんな良い日に飲まなくていつ飲むんだ」
クリスマスは関係なく、孫と一緒に行きつけの居酒屋に来れたことばかりが嬉しくて仕方のないお爺ちゃんの言葉に、カウンター席の山田家のお爺ちゃんがそうだそうだと同意を示す。
それでも孫の言葉を素直に聞いて、伊織翁は少し酒量を減らした。
「お酒がだめならケーキはどう?」
忙しく立ち働きながらも楽しそうな女将が、源一やカウンター席に家族と共についている女子中学生の前にカットしたケーキの皿を置く。
「男の子は焼き鳥の方がいいかしら」
「あっ、いや、」
一度置いたケーキの皿を焼き鳥の皿と代えられそうになって、源一は慌てた声をあげる。
「いただきます」
店に入ってきてから初めて見る源一の笑顔に、女将は眼を丸くした。纏っていた武骨な雰囲気さえ柔らかなものに変えて、身長ニメートル越えの大男は小さなサンタと苺の乗った小さなケーキを前に丁寧に両手を合わせる。ごつい指には殊更小さく見えるフォークでケーキを小さくすくい、一口一口しっかりと味わって食べる。
「もう一切れ食べる?」
女将の言葉に喜色満面に頷きかけて、同じように空の皿を差し出した女子中学生と眼が合った。あわよくばと思っていたケーキのおかわりに早々に見切りをつけ、源一はちょっと困った顔で笑う。彼女に、と女将に知らせ、ケーキを譲る。
「ありがとう」
「……いえ」
女子中学生の姉らしい、高校生か大学生ほどの大人びた雰囲気の女性、
仙藤 紫
から物静かな笑みと謝辞を向けられ、源一は目を伏せる。
「かアッ、優しいじゃねェか」
「だから大袈裟だって」
祖父からの手放しな賛辞は最早まともに受け止め切れず、源一は肩をすくめた。
「……で、だ」
すっかり酔った祖父が、不意に瞳を据える。
「おめぇよ、気になってる女子とか、いねぇのか?」
小太刀で切り込まれるように真っ向から問われ、源一は啜ろうとしていたお茶にむせた。
「な、……」
「育ての親として気になるだろうが」
長生きはするつもりだが、齢は米寿。出来ればぽっくり逝く前にひ孫の顔くらいは見ておきたい。見ておきたい気持ちは山々だが、
「……まぁ……アレだ。お爺ちゃんそういうのにあんまり偏見ないからよ」
孫がそちらの道を選ぶのであればそれはそれで仕方がない。この年になって浮いた噂のひとつも聞かぬということは、もしかしたら孫はそちら方面なのやもしれぬ。
そちら方面の人々には孫のように体格のやたらと良い者も多い。
「その……いつでも言えよ」
酒のコップを片手に遠い目をする祖父に、源一は絶句する。何かを言おうとして口を開き、結局言葉を探しきれずに黙してお茶を啜る。
言葉に詰まる孫の様子にやっぱりそうなのかと早合点した祖父は、酒を含んでしみじみとごちる。
「おめぇも苦労するよなァ……」
「どうした爺さん、酒が尽きたか?」
祖父の誤解を解こうと言葉を探す源一が飲み干した湯呑に茶を注ぎ、
毒島 柘榴
は鋭利な刃物思わせる眼差しを伊織翁に向ける。
「ごめんねえ、手伝わせちゃって」
「構わねぇよ」
カウンター向こうで両手を合わせる女将にひらりと手を振り、柘榴は伊織翁の空のコップにも酒を注ぐ。カウンター席や外の席に焼き鳥の皿やケーキの皿を運びながら、奥の席に並んで座る嫁と娘を見遣る。
(無礼講だ、存分に食べろや、とは言ったが)
「Hey! 女将! チキンを持ってきな! レモンをたっぷりかけてネ!」
「……いただきます」
焼き鳥串とチキンの骨が乗るばかりの空の皿を前に更なるチキンを要求する嫁のイヴと、店員が必死に揚げるチキンや焼き鳥を無心に次々と食べ尽くす娘の林檎を横目に、父親の柘榴は黙々と接客に勤しむ。
(林檎の大食い遺伝子はイヴからで間違いねぇな)
迷惑かけてすまん、と心の中で女将と店員に手を合わせつつも、
「わぁ! このチキンとか味付け美味しい! こっちのケーキも甘い!」
賑わう居酒屋の店内でも愛娘の独り言をきちんと聞き分け、柘榴は瞳を細める。チキンやケーキのレシピが欲しいと呟く娘のために、後で女将に頼んでみようと画策もする。
「毒島さん」
その女将に手招きされ、店の奥に向かう。立ち飲みで悪いけれど、と瓶ビールをコップに注がれ、焼き鳥の乗った小皿を渡され、柘榴は頬を緩めた。
(しかし……こうして家族で外食ってのも久々だな……)
旺盛な食欲を見せる嫁と娘を眺め、ふと鼻で笑う。不惑の歳に入って、年甲斐にもなく家族で外食するくらいで幸せを感じるとは思っても居なかった。
(笑っちまうよな)
それでも、傍で幸せそうに食事する妻子を見れば見るほど、胸に満ちる温かな感情がある。
(……ああ、俺は幸せなんだ)
傍らに立ってこっそりビールを含む女将と眼が合い、柘榴は苦笑いに近く唇を歪める。苦笑いのはずの笑みは、穏やかな父親の笑顔になった。
「……やっぱ、家族っていいもんだよな、花枝さん」
幸せを噛みしめる夫の腰に、傍らの席のイヴが抱きつく。心底幸せそうな笑顔で、
「うーん、本当は豚もネギマもぽんぽちも食べたいけど……女将ダメ?」
焼き鳥のおかわりも可愛くねだる。上目づかいに見上げられ、女将は少し困った顔をする。
「お医者さんに食べ過ぎで叱られていない?」
「だいじょぶ、体重管理は完璧ヨ!」
「じゃあ、たまにはね」
「ヤッター! 女将大好きダヨー!」
はしゃぐ母の隣で、林檎がそっと片手を上げる。
「俺も。……全種類くれ」
自慢の焼き鳥を美味しそうに食べてくれる母子に嬉しそうに頷き、張り切って調理に取り掛かる女将に軽く頭を下げ、林檎は人目もはばからず父親といちゃつく母を呆れたような目で見る。
「お袋、食い過ぎは母体に悪いぞ?」
「キャー! 心配してくれるの、林檎!」
愛してる、と大きなお腹で抱きつかれ、林檎は眉をひそめつつも母親をしっかりと抱きとめる。
「自重しろ、代わりに食べてやろうか?」
「自重はしない! 一緒に食べヨ!」
叱ってもきらきらと子どものように輝く海色の瞳で見返され、林檎は唇を尖らせる。妊婦になってもいまいち薄着な母の腰を掌でぽんぽんと叩く。
「美味しいし女将さんも優しいし、お父さん達が贔屓にしてるのもわかるよ」
小さく小さく胸のうちを零す娘の首に、母は華やかな笑い声をあげてぎゅっと抱きついた。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
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日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
49人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年02月06日
参加申し込みの期限
2016年02月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年02月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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