怪人セブンの選択｜リアクション

怪人セブンの選択

　扉を開ける音が、まるで地獄の釜の蓋を開けるような不気味さを思わせる。
　倉庫の中は電気が付いていた。
　何者かが侵入した後なのだろうか？
　明らかに倉庫の中は荒らされた形跡が残っている。
『あれはなんだろう？』
　小山内が指を差す先に、こじ開けられた箱が転がっていた。
　それに近付くにつれて焦げ臭い匂いが漂ってくる。
　５人はその中身を恐る恐る確認する。
「……おいおい。こいつは……」
　如月が目を見張る。
　箱の中の燃えカスの一部に、コードやら液晶画面やらが残っている。
　そして漂う火薬の匂いは、この燃えカスから発せられている……。
「爆弾……ですよね……？」
　屋敷野の言葉を否定する者は、この場にはいなかった。
「しかし妙ですね」
　ブリジットは腕を組んで推理を始める。
「円、確認させて。あなたの仲間はメサイアのボスと接触して聞いたのよね？　『部下に設置させたのは発煙装置だ』って」
「うん、そうだよブリちゃん。ビリオンは人的被害を出したくないから発煙装置を使って、船内を混乱させるのが目的だったようだし」
『あれが　はつえんそうち？』
　小山内が燃えカスのそばにある燻煙殺虫剤の缶を発見した。
　ここにメサイアの部下が侵入したのは間違いない。
「そうなると尚更変ですねー？　倉庫は電子キーで施錠されていましたけど？」
　屋敷野の言う通り、関係者以外は解除キーの数字を知らないはずである。
　しかし、如月はすぐさま首を横に振った。
「さっき、流れてきた情報には『メサイアは色欲女医と繋がっていた』らしいぜ。つまり、奴がパスワードを教えて侵入させた。……いや、むしろ奴が手を回して警備員に連絡して通させたのかもな？」
「そういえば、医薬品らしき荷物も保管されているみたいですねー？」
　周囲を見れば、なるほど。ガーゼや消毒液のラベルが貼られたコンテナが積まれている。
　色欲女医なら、怪しまれずに第三者を通すことが可能だろう。
「じゃあ、この爆弾は誰が持ち込んだんだろう？　まさか泉月花ちゃん？」
「ありえないわ、円。ここのオーナーが自ら爆弾を船に仕込むなんて考えられないわね」
『ブリちゃん　じさくじえんの　かのうせいは？』
　桜庭とブリジットの話に小山内が反論する。
『あの人　なにをかんがえているか　わからない』
『たにんをへいきで　ころせるひとだよ？』
　加納泉月花とのファーストコンタクトを思い返す。
　拉致された牢の中、人の命を踏み潰すことに躊躇を感じさせなかった恐怖が小山内の中で蘇る。
　しかし、ブリジットはこれを否定した。
「私が実際に会った印象だと、自分の事業に誇りをかけている企業家って印象だったわ。潰れたランウェイのイベントをもう一度ここで開催している人が、自分の船に爆弾を仕掛けるかしら？」
「まったくもって、その通りです」
　５人が振り返ると、そこには赤き女帝、泉月花の姿があった。