Xmasの奇跡☆　物語の素敵な１日 in 寝子島！｜リアクション

Xmasの奇跡☆　物語の素敵な１日 in 寝子島！

●一寸法師　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　七峯亨は日本昔話のような山間で、剣の稽古をしようとしていた。
　実は山間は自室に置いたジオラマ、剣は裁縫針である。ろっこん『縮身』で一寸法師サイズになり、稽古を始めようとしていたのだ。自室で野外トレーニングが出来、片付けも楽。まさに一石二鳥。さてさて本日はどんなメニューで……と裁縫針を肩に担ぎ思案していた亨は、人影に気付いた。
　人影？　だってここはジオラマだぞ？　と近付いてみると。侍が剣の稽古をしていた。
「お前さん、一体全体誰だ？」
「拙者、一寸法師と申す。……はて、拙者の背は元に戻ったのか？」
「いや、あんたは一寸のまんまだよ。……てか、一寸法師？！」
　これが２人の出会いであった。

「……で、嫁さんに踏み拉かれて気が付いたらここに来ていた、と」
　なかなか物騒な話ではあるが、一寸法師は大真面目に頷いた。
　どうやら結婚したお姫様と盛大に喧嘩をし、彼女に打ち出の小槌で叩かれたらまた縮んでしまったらしい。自分を踏む時の害虫を見るような彼女の視線が忘れられないと一寸法師は肩を落とした。
「そりゃ重量差は象と蟻なんだから、御用心だな。で、嫁さんの機嫌が直るまで、ちいと時間を潰したいと」
　なるほどと亨は大きく頷いた。自分も女性に関しては色々色々痛い目を見ているので、気持ちはよく解るのである（自業自得なのだが）。
「女房は鬼より怖いって事か。よし、わかった！　稽古でも何でも付き合うぜ！」

　亨にとっても一寸法師との稽古は身になる物であった。何せ本物の武士、ましてや鬼を撃退した腕前なのだ。１時間もすると２人はへとへとになって座り込んだ。
「お主……なかなか……やるな」
「いや……お前さんもな……」
　お互いを認め合うが、２人とも息が上がって汗だくだ。さて、汗を流さなくちゃいけないが……。
「そうだ、温泉に行かないか？」
「ほう、温泉があるのか。いいではないか」
「だろ？　寝子温泉ってとこだけど、いい湯だぜ」
　よっしゃと亨は立ち上がった。