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- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ミッドナイト・フリーキー・ショウ！ ～モノクローム・ラブ
【ひめごと】
どちらが始めたのだったか、綾辻 綾花にももう、良く分かりません。何だか頭がぽーっとして、胸はしきりにとくん、とくんと鳴り、それが何だか心地良くて、綾花は彼へと微笑みます。
ノートにたくさん、他愛のない落書き。描かれている多くは綾花の大好きな猫のキャラクターで、にこやかに貸し出しの応対などする合間にひとつずつ描き加えては、ノートは彼のもとへ。彼もまた、書類仕事をてきぱきとこなしながらに、ひとつ描き加えて綾花へとノートを返します。そうするたびに、ふたりの間には笑顔が漏れて、他の人には見えないようにと隠れてのやり取りに、綾花の胸の高鳴りは早くなっていきました。
もっとも彼女は、ともすればここが、今日はやけに盛況な図書室の受付カウンターの中であることを忘れてしまいそうになる自分を、時折戒めなければなりませんでした。室内はいつもの静謐な空気をある程度は保ちながらも、年末にはことに多いイベントごとが、方々から漏れ聞こえるささやき声を賑やかなものにしているのです。近づく期末テストに向けての勉強に、資料に基づいた球技大会の綿密な作戦会議に……クリスマスムードに当てられたカップルの密やかなやり取りなんて、当人たちは周囲に気付かれていないつもりでも、かもし出す甘い空気は実のところ、ダダ漏れなのです。
それは綾花にも、他人事ではありません。彼女が微笑むたび、早川 珪もまた、優しく笑いかけてくれます。彼は司書教諭で、落ち着いた大人の男性で、生徒たちに慕われていて、そして綾花の好きな人で……まだ、想いを伝えたことはありませんけれど。
コートを羽織ったにゃんこを描き加えて、珪先生へとノートを渡そうとしたところへ貸出希望の本を持った生徒に声をかけられて、綾花は内心飛び上がりそうになりながらも、努めてふんわり。いつものように朗らかに笑いかけて、図書委員としての役割を全うしつつ、心はふわふわ……隣の彼へと、惹き付けられてしまうようです。
窓の外にはひらひら、降り落ちる雪。駆け寄り中庭など見下ろせば、わくわくするような雪景色が広がっているのでしょう。
綾花はそんな光景を想像しつつ、ちら、と周りを盗み見てカウンター近くに誰もいないことを確認したら、さらさら。描き入れたのは、にゃんこ型の雪だるま。大、中、小と背の違うみっつが並んで、楽しそうにクリスマスソングでも歌っているかのようです。
ノートをやり取りするたびにゃんこたちの数は増え、見開いたページは賑やかになっていきます。綾花が描いたサンタにゃんこにトナカイにゃんこの上にはぽこんと、空白のフキダシ……その中に彼が書いたセリフは、『プレゼントを配るにゃー！』。隣には、ベッドですやすやと気持ち良さそうに眠る子猫。
す、とノートを綾花へ戻し、ぱちりと悪戯っぽく片目をつぶった珪先生。描かれたそれを目にするなり……どきり、と。綾花は思わず、ひときわ強く鳴った胸へと手のひらを押し付けました。子猫の枕元には靴下が吊るされていて、中にはサンタにゃんこへの手紙が入っています。手紙を開けば、子猫が欲しいプレゼントが、弾むような文字で書かれていました。
『好きな人に、気持ちが伝わりますように』。
それは、きっと彼なりの、綾花へのエールだったのでしょう。優しい彼。いつだって生徒たちのために、綾花のために心を砕いてくれる、綾花の好きな人。
どき。どき。はやる気持ちを抑えつけながら、綾花は貸し出した本を抱えて図書室を出ていく生徒を見送り、ちょっぴり震えるペン先で、続きを描き入れます。勇気を振り絞って。こんな機会が、二度も巡ってくるかは分からないから。
ノートを珪先生のほうへと押しやると、彼ははっとした顔を浮かべて綾花を見つめました。
ノートには赤と黒、オシャレな服に身を包んだ、すらりとした……好きな人と同じ服を着たにゃんこ。サンタにゃんこは彼へと、プレゼントを届けます。大きな、大きなハート型のフキダシに込めた、子猫の気持ちを。
貴方の事が、大好きです
くい、と。唐突に自身の手のひらを包み込み、綾花を引っ張ったあたたかくて力強いものが、彼の大きな手であることに気付くまで、彼女にはしばらくの時が必要だったことでしょう。
手を引かれるまま、気付けば図書準備室の中……ふたりきり。きゅうと抱きすくめられれば、綾花の頭は沸騰しかけてぐるぐると取り留めなく思考は巡り、彼の顔が徐々に、徐々に近づいてくるのに従って、火が出るほどに頬は火照り、
……ほんの、少し。そっと優しく、一瞬、触れ合っただけ。唇に残る、くすぐったいような、甘い感触……それを確かめるように指先でなぞると、濡れた瞳から不意にぽろり、こぼれた雫もそのままに。
綾花は、微笑みました。
テレビの画面に映る、自分と好きな人の幸せなやり取りを眺めて、綾花はこくりとうなずきます。口をついて出る言葉ではなく、文字で伝える。古典的でありながらも、そんなやり方はいかにも、図書委員である自分らしいような気がしてきます。
じじじ、じいい……覗き込むレンズ・キャッツ、クロワをむぎゅっと抱きしめて、ころんとベッドへ横になりながら、綾花は願います。いつか、この番組が現実になりますように。
ぺろりと頬を舐めた黒猫に笑いかけ、幸せな気分で、やがて綾花は眠りへ落ちていきました。
どちらが始めたのだったか、綾辻 綾花にももう、良く分かりません。何だか頭がぽーっとして、胸はしきりにとくん、とくんと鳴り、それが何だか心地良くて、綾花は彼へと微笑みます。
ノートにたくさん、他愛のない落書き。描かれている多くは綾花の大好きな猫のキャラクターで、にこやかに貸し出しの応対などする合間にひとつずつ描き加えては、ノートは彼のもとへ。彼もまた、書類仕事をてきぱきとこなしながらに、ひとつ描き加えて綾花へとノートを返します。そうするたびに、ふたりの間には笑顔が漏れて、他の人には見えないようにと隠れてのやり取りに、綾花の胸の高鳴りは早くなっていきました。
もっとも彼女は、ともすればここが、今日はやけに盛況な図書室の受付カウンターの中であることを忘れてしまいそうになる自分を、時折戒めなければなりませんでした。室内はいつもの静謐な空気をある程度は保ちながらも、年末にはことに多いイベントごとが、方々から漏れ聞こえるささやき声を賑やかなものにしているのです。近づく期末テストに向けての勉強に、資料に基づいた球技大会の綿密な作戦会議に……クリスマスムードに当てられたカップルの密やかなやり取りなんて、当人たちは周囲に気付かれていないつもりでも、かもし出す甘い空気は実のところ、ダダ漏れなのです。
それは綾花にも、他人事ではありません。彼女が微笑むたび、早川 珪もまた、優しく笑いかけてくれます。彼は司書教諭で、落ち着いた大人の男性で、生徒たちに慕われていて、そして綾花の好きな人で……まだ、想いを伝えたことはありませんけれど。
コートを羽織ったにゃんこを描き加えて、珪先生へとノートを渡そうとしたところへ貸出希望の本を持った生徒に声をかけられて、綾花は内心飛び上がりそうになりながらも、努めてふんわり。いつものように朗らかに笑いかけて、図書委員としての役割を全うしつつ、心はふわふわ……隣の彼へと、惹き付けられてしまうようです。
窓の外にはひらひら、降り落ちる雪。駆け寄り中庭など見下ろせば、わくわくするような雪景色が広がっているのでしょう。
綾花はそんな光景を想像しつつ、ちら、と周りを盗み見てカウンター近くに誰もいないことを確認したら、さらさら。描き入れたのは、にゃんこ型の雪だるま。大、中、小と背の違うみっつが並んで、楽しそうにクリスマスソングでも歌っているかのようです。
ノートをやり取りするたびにゃんこたちの数は増え、見開いたページは賑やかになっていきます。綾花が描いたサンタにゃんこにトナカイにゃんこの上にはぽこんと、空白のフキダシ……その中に彼が書いたセリフは、『プレゼントを配るにゃー！』。隣には、ベッドですやすやと気持ち良さそうに眠る子猫。
す、とノートを綾花へ戻し、ぱちりと悪戯っぽく片目をつぶった珪先生。描かれたそれを目にするなり……どきり、と。綾花は思わず、ひときわ強く鳴った胸へと手のひらを押し付けました。子猫の枕元には靴下が吊るされていて、中にはサンタにゃんこへの手紙が入っています。手紙を開けば、子猫が欲しいプレゼントが、弾むような文字で書かれていました。
『好きな人に、気持ちが伝わりますように』。
それは、きっと彼なりの、綾花へのエールだったのでしょう。優しい彼。いつだって生徒たちのために、綾花のために心を砕いてくれる、綾花の好きな人。
どき。どき。はやる気持ちを抑えつけながら、綾花は貸し出した本を抱えて図書室を出ていく生徒を見送り、ちょっぴり震えるペン先で、続きを描き入れます。勇気を振り絞って。こんな機会が、二度も巡ってくるかは分からないから。
ノートを珪先生のほうへと押しやると、彼ははっとした顔を浮かべて綾花を見つめました。
ノートには赤と黒、オシャレな服に身を包んだ、すらりとした……好きな人と同じ服を着たにゃんこ。サンタにゃんこは彼へと、プレゼントを届けます。大きな、大きなハート型のフキダシに込めた、子猫の気持ちを。
くい、と。唐突に自身の手のひらを包み込み、綾花を引っ張ったあたたかくて力強いものが、彼の大きな手であることに気付くまで、彼女にはしばらくの時が必要だったことでしょう。
手を引かれるまま、気付けば図書準備室の中……ふたりきり。きゅうと抱きすくめられれば、綾花の頭は沸騰しかけてぐるぐると取り留めなく思考は巡り、彼の顔が徐々に、徐々に近づいてくるのに従って、火が出るほどに頬は火照り、
……ほんの、少し。そっと優しく、一瞬、触れ合っただけ。唇に残る、くすぐったいような、甘い感触……それを確かめるように指先でなぞると、濡れた瞳から不意にぽろり、こぼれた雫もそのままに。
綾花は、微笑みました。
テレビの画面に映る、自分と好きな人の幸せなやり取りを眺めて、綾花はこくりとうなずきます。口をついて出る言葉ではなく、文字で伝える。古典的でありながらも、そんなやり方はいかにも、図書委員である自分らしいような気がしてきます。
じじじ、じいい……覗き込むレンズ・キャッツ、クロワをむぎゅっと抱きしめて、ころんとベッドへ横になりながら、綾花は願います。いつか、この番組が現実になりますように。
ぺろりと頬を舐めた黒猫に笑いかけ、幸せな気分で、やがて綾花は眠りへ落ちていきました。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年11月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年12月05日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年12月05日 11時00分
