狭苦しくて、今にも潰れそうなほどに閑古鳥が鳴いていて、古めかしくて懐かしくて、そしてどこかあたたかい……街の片隅にひっそりと佇む、小さな小さな映画館。
ゆったりとしたシートに深々と腰かけた、
桃川 圭花。くつろぎながらに上映を待つ彼女は、館内に見えるただひとりの観客です。まるでさながら貸し切りのようで、うっすらと笑みなど浮かべた圭花は、ご満悦。
アナログレコードのような、ある種の懐古的な叙情を思わせるクラシックが静かに流れる中。やがて場内の明かりが落ちて、上映開始を告げるブザーが鳴り響き、ベルベットのカーテンが左右へゆっくりと開かれていったなら……カタカタとかすかに、映写機の回る小気味の良い音。
真っ白なスクリーンへと映り込む数字がカウントを刻み、3、2、1。
圭花がついと眼鏡を押し上げて……きらと光を返すレンズの中、番組はここに、始まりを告げるのです。
『 ミ ッ ド ナ イ ト ・ フ リ ー キ ー ・ シ ョ ウ ! 』
スクリーンの真ん中へ、どこかレトロな調子の文字で示されたタイトル。
カタカタとフィルムは巡り、オーケストラの調べと共に鷹揚な歩みで現れる、彼女。
後ろに手を組みゆっくりと歩いて、真ん中へ立つとこちらへ向き直り、口を開きます……けれど、ぱくぱくと唇は動けどその声も、いつも彼女がそうするたびにちゃりと唾液が糸引く音も、今は届かず。
画面は白黒、モノクローム。
無声映画の例にならってか、黒バックに白文字の
字幕にて、彼女は言葉を綴ります。
───こんばんは。
素敵な静寂の夜を謳歌するあなたへ、慎ましく寄り添う伴侶のような安らぎを。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』へ、ようこそ。
わたくし、これより皆様を不可思議な世界へとご案内させていただく、ストーリーテラーの胡乱路 秘子です。
今宵もどうぞ、よろしくお付き合いのほどを……。
んふふ! と、聞こえはせずとも含み笑い。にんまり笑って、優雅なカーテシーを披露。
続いて、ぴ、と立てて示した指は、三本。
かつて、ある文学者が言いました。
物語において、人に感動を与え、涙させるものは、すべからく三つの要素に集約されるのだと。
すなわち───
『生』
『死』
そして、『愛』
ぱ、ぱ、とテンポ良く差し替えられていく字幕。最後のひとつだけを少しもったいぶって、長々と映し出してから。
……けれど。愛とは、何でしょうか?
言葉に出せば、その意味を伝えられるものでしょうか?
愛している、そうひとこと口にすれば、伝わるものでしょうか?
少女は緩やかに、首を振ります。
───いいえ。愛とは、言葉ではありません。
愛とは、内に秘めた心であり、愛とは、身体を張った表現行動です。
言葉とはその発露のひとつに過ぎず、あなたが親しい誰かに真なる想いを伝えるならば、
あなたは、走るべきです。
あなたは、触れて、抱き締めるべきです。
あなたは、全身で、あらゆる全てを使って、表現するべきです。
す、と手のひらをこちらへ。
観客へと向けて、誘うように。促すように。
伝えてください。愛する誰かへ、
あなたの───愛を!
語りが終われば、ストーリーテラーは画面の中、暗闇の中へと溶けるように消え……やがて始まる本編を、圭花がこのままシートへ背を預けたまま、静かにゆっくりと堪能するのか。あるいは立ち上がり、自ら登場人物のひとりとなってスクリーンの中へと飛び込んでいくのかは、分かりません。
いずれにせよ彼女は自ら選び取るべきであり、そして彼女はいつだって、そうしてきたはずです。それが、
桃川 圭花という少女なのですから。
どちらであっても、きっと彼女は余裕しゃくしゃく。不敵にクールに、微笑むのでしょう。
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。MFS! 第七夜となります。
ガイドには、桃川 圭花さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
(もしこちらにご参加いただける場合は、ガイドのイメージに関わらず、ご自由にアクションをかけていただいて構いませんので!)
今回のシナリオの概要
今回のテーマは、大まかにふたつ。
セリフの無い『サイレント映画』のワンシーンで、『いかにして愛を伝えるか?』です。
今回のリアクションでは、セリフは無く、心情描写もありません。必要ならここぞというシーンで、ガイドのような字幕という形で、1~2箇所のみ言葉を伝えることもできますが、基本的には地の文のみで描写されます。
そんな中で、あなたは言葉に頼らない形で、誰かに対して愛を伝えることになります。もちろん愛と言っても様々、恋愛、友愛、家族愛や動物愛、隣人愛に人類愛などなど、どんなものでも構いません。
伝える方法やシチュエーションの設定は自由です。『ただ相手の瞳を見つめて、取り出した指輪をはめてあげる』でも良いですし、『何かに追われている友人の手を引いて走って逃げ、最後は友人をかばって死ぬ』でも、『飛行機から飛び降りてパラシュートで落下し、相手の目の前に降り立って花束を届ける』でもOKです。
現実に即した設定として関係性の進展のきっかけにしたり、実際にはありえないようなIF的なシーンもアリ。
伝えるべき相手がいない場合は、勝手に架空の恋人を作ったり、過去の知人や故人に伝えられなかった想いを伝えたり、または伝えに行く過程のみを描写する、といった形も可能です。
(※ただし未参加のPCや未登録のキャラクターを指定する場合は、本人は登場しないか、モブ的なNPCとして扱われます)
『愛』、なんてあらためて口に出すと、やっぱり照れてしまうものでして。
ここはひとつ、身体を張ったジェスチャーにて、大切な想いを伝えてみるのはいかがでしょうか?
アクションでできること
アクションでは、舞台となる場所、どういったシチュエーション、どんな風に愛を伝えるか? という行動、また必要に応じて字幕として表示するセリフ等をお書きください。
●1.舞台となる場所、シチュエーション
主に描写の舞台となる場所や、どういったシチュエーションか? といったところをご指定ください。
場所は寝子島の内外問わず、どんな場所でも、どんな状況でも構いません。
(極端な例を挙げれば、SF的シチュとかファンタジーとかでも可)
特に希望は無い、行動に合わせてお任せという場合は、その旨をお書きいただけましたら。
●2.愛を伝えるための行動
どんな風に行動し、どういった結末になるのか、等をお書きください。
行動のみ指定して結末はお任せ、といった形でも構いません。
もちろん、GAを組んで片方は伝える側でもう片方は伝えられる側、のような形もOK。
※ただし、他PCに対して、例えば『キスをする』等といった踏み込んだ行動を取る場合は、相手の同意を得たり、GAを組んで双方の意思を明確にしておいていただくほうが無難です。一方的であったり、噛み合わなかったりする場合は、アクションの採用を見送らせていただくこともあるかもしれません。あらかじめご了承くださいませ!
※あるいは、『どうなっても構いません!』とか書いてあったら、どうにかさせていただくかもしれません。アクションと墨谷のインスピレーション次第ですけれど。
●3.字幕で提示する言葉
基本的に今回は、「」や()表記によるセリフはありませんが、どうしても必要だったり効果的だと思われるシーンでは、字幕という形で言葉を伝えていただくこともできます。
ガイドではストーリーテラーが結構な分量を字幕にて提示していますが、あちらは必要な演出ということでして……皆さんがアクションにてご指定いただけるのは、1~2つ程度のワードということにさせていただきます。
なお書式は自由ながら、それと分かる形での表記をお願いいたします。
特に無ければ字幕は挿入されません。
例)
セリフ:『好きです! 付き合ってください!』
アクションには、上記の要素に加えて、
・お相手との関係性や、普段のやりとり
など、必要に応じてお書きいただけましたら~。
あ、ちなみにリアクションにセリフは無くとも、アクションをセリフ口調で書いていただくのは全然問題ありませんので!
また、今回はシルバーシナリオとなっていますので、シーンに合ったイラストをご指定いただくと、イメージが伝わりやすいかと思います。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』とは?
深夜、テレビ局の放送が終わった後に始まる、謎の番組。不可思議で不条理な出来事と、それに関わった人々の行動や、その顛末などが紹介されます。
いつも決まった時間に始まるわけではなく、また誰でも見られるわけでもなく、たまたま波長の合った人にだけ見ることができるようです。
このシナリオ内で描写された出来事は、全て番組内で放送されたものであり、現実に起こったことかも知れませんし、現実には起きなかったことかも知れません。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』のタイトルを冠するシナリオ内で、ご自身のPCが体験した出来事について、プレイヤーさんは実際に起きたこととして設定に組み込んでいただくことも出来ますし、番組上の演出や架空の出来事だったとしても構いません。
その他
●参加条件
特にありません。どなたでもご参加いただけます。
●舞台
アクションにて指定した場所が舞台となります。
寝子島島内はもちろん、それ以外のどこでも構いません。
●NPC
○胡乱路 秘子
謎のテレビ番組『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』のストーリーテラーを自称する少女。
んふふっと怪しく笑います。
●備考や注意点など
※今回のシナリオには参加していないPC名を明記してのアクションは採用されない可能性がありますので、申し訳ありませんが、あらかじめご了承くださいませ。示唆する程度なら大丈夫です。
※アクションの内容によっては、MFS!内での限定された設定として扱われる可能性があります。また、内容によっては描写できなかったり、直接的な表現を避けて描写されることもあります。
以上になります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております~!