お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

　その頃、星ヶ丘を歩いていたニコ・ライニオは、一件のお屋敷から女性が慌てて出てくるのに出くわした。

「きゃっ！」
　ロングスカートの裾を踏んで転びそうになったところを、ニコは急いで駆け寄り、支える。
「大丈夫？雨の日だから転んだら大変だ」
「ご、ごめんなさい……」
　ニコは、全く自然な流れで大橋尚の手を取り、優しく微笑んだ。
「あっ！」
「どうしたんだい？」
　大橋先生は慌てて玄関に取って返した。
「玄関の鍵をかけ忘れちゃった！急いでるのに……」
　大橋先生を見守りつつ、ニコは心の中で思った。
（かなりのうっかり屋さんなんだな……）

「先生、タクシーでさくっと来れないの？それすら難しいのかな」
「さっき電話したらまだ家だそうだ。俺たちが迎えに行くのが早いかもしれない」
　シオ・レイゼルオークに聞かれて、御剣刀が答える。店の前にいた理事長の様子があまりに胡散臭かったので付き合っていたのだが、いよいよ大橋先生の方も心配になってきた。
「うーん、相手が声だけでも聞ければ安心するのにね。待つ方は不安だよ」
　シオは腕時計に目をやる。彼女の伴侶が持たせてくれた、男物の時計だ。
「いっそ俺が自転車で迎えに行くか」
　龍目豪の言葉を聞いて、口を挟んだのは八十八旗信彦だ。
「それには及ばないよ！送迎の車を出させよう」
「お、それはありがたいぜ」
「ふふ、紳士な俺があずさちゃんの頼みを無下にするわけないだろ？ましてや、それが困ってるレディのためなら尚更さ！頼んだよ舞衣ちゃん！」
　信彦に呼ばれ、霧桐舞衣は元気よく返事した。
「早い仕事なら任せてください！一度車に乗せてしまえば、多少ドジっても問題なく目的地までお届けできるはずっス！」