お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

「言われて気づいたけど、お見合いなんだからごまかさずに遅刻のことを説明したほうがいいよな。芝居で引き止めても限界があるよ」
　豪の意見に、周りも賛成した。代表して豪が高良のテーブルに向かう。この間、羽生碧南の引き止め作戦はまだ続いていた。
「すみません、俺は大橋先生の担当生徒の龍目豪です。実は事情があって先生が遅れていますが、必ず連れてきますので待っててください。よろしくお願いします」
「それはそれは……分かりました、待ちましょう」
　お芝居ではなくちゃんと説明して待ってもらおうという方針に変わったらしいので、碧南も折を見て引っ込むことにする。
「じゃあね、おじさん。また遊びに行くね！」
　高良は、愛想笑いをして碧南に手を振った。

　相手が来るまでどう時間を潰そう、という高良の心配は杞憂に終わった。
「待ち合わせですか？俺もなんで、それまで相席良いですか？」
　続いて時間稼ぎにやってきたのは、偶然店に居合わせて協力している八神修だった。
「ええ……どうぞ」
「失礼します。俺は八神修、さっきの龍目君と同じ寝子高の生徒です」
「そうなんだね。大橋さんのことも知っているかい？」
「ええ。とても優しい先生です。いつもわかりやすくて、授業に工夫をしている指導熱心な先生ですよ。おっとりして見えるけど情熱があって……」
　ここぞとばかりに大橋先生のことを持ち上げる修。高良は静かに耳を傾けている。
「高良さんのお仕事は？」
「福祉施設で働いているよ」
「福祉施設というと？」
「主に身体障害のある人のリハビリを専門にしてる施設でね。私の仕事はリハビリの専門家の取りまとめ、事務方だね」
「なるほど……人を受け入れて支えるって大切ですよね。ほかの人に出来る仕事じゃありません」
　修は、高良の仕事に共感する言葉を述べた。