お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

「……というわけで、生徒としては先生に幸せになって欲しいわけ。お相手が、ちゃんと先生を幸せにしてくれる男かどうかは気になって当然！わかりますか？」
「……はあ、まぁわかるけど……」
　高良聡介は、八十八旗信彦の問いかけに困惑して答えた。信彦が面倒臭い絡み方をしているのはわざとだ。
「そう、つまり俺たちがこうして集まってるのも大橋先生のためを思ってのことで……」
　信彦は、あえて『お節介な生徒が、大橋先生の相手にふさわしいかどうか見極めようとしている』ように装っている。大橋先生が到着次第引っ込むことで、『やんちゃな生徒たちが暗躍していたせいで遅れた』かのような雰囲気を作り出すつもりである。そうすれば、先生自身の印象は悪くならないはずだ。
（さっきから変な子たちばかりが来るな……）
　温厚な高良は、仕方なく相手をする。しかしとりあえず、相手の人が生徒から愛されているらしいことはわかった。
「ところで高良さん、紳士ってどういう人間だと思います？」
「紳士ねぇ……弱い者に優しい人かな」
「そう、もっと言うと、『レディの失敗を笑って許せる男』と言ったらいいかな。慎み深いレディは好きな人の前だと緊張して、失敗することもあるものさ」
「なるほど、そうだろうけど」
　先生が到着したあとのために、失敗を受け入れやすい空気も作っておく。
「話は変わるけど、俺、仕事のできる女性がふと見せる抜けた部分というのが―――」
　さらに『ドジっ子の魅力』をすり込んでおこうとする信彦のトークを聞きながら、高良はそっと腕時計に目をやった。
（待てたとして、あとせいぜい10分だな……）