お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

「良かった！」
　店の隅で見守っていたギャラリーたちは、ほっと胸をなでおろした。
「みんな、先生のために協力してくれてありがとな！」
　大橋先生の受け持ち生徒である龍目豪が、皆に礼を言った。御剣刀も、お見合いが成功して安心している。
「時々うっかりミスをする大橋先生を、高良さんに支えてもらいたいな。大切な俺たちの先生だから」

　高良と大橋先生が出ていくのを見送り、他のギャラリーも店を後にした。一人残った黒間黒造が、店長の七條蛟に声をかける。
「兄さん、店は何時までだい？」
「明確には決めてないので、ゆっくりどうぞ」
「そうか、でも遅いからじき退散するよ」
　二人の予約席だったはずだが、結局もう一人は現れなかった。だが、黒間にはそわそわいる様子も、連絡を取ろうという様子もない。不思議に思ったが、蛟は詮索しなかった。

　誰も座っていない向かいの座席に向かって、黒間は誰かに報告するように言った。
「……まさか、今日という『告白記念日』に初々しいカップルの誕生を見ることになるとはな。立場は逆だったが……まるであの時の俺たちのようだったな、奈緒ちゃん」
　黒間が口にしたのは、今は天国に居るであろう恋人であり―――マスコット『黒マグロ』の生みの親の名前だった。
　日付が変わろうとしている。降り続いていた雨は、既にやんでいた。

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