「うーん」
スカーフをマチコ巻きにしサングラスを掛けた寝子高の理事長
桜栄 あずさは、同じく変装したおとも?の生徒たちを引き連れ、シーサイドタウンの一画にある
アイルランド料理のお店『spraoi』の窓に張り付いていた。明らかに不審者だが、これにはわけがある。
それは、今日の昼休み。
職員室で、世界史担当の
大橋 尚先生が、ふかぁくため息をついていた。
「大橋先生、どうしたの~?」
「実はですね、お見合いをすることになりまして……」
大橋先生は、キレイな長い黒髪の、おっとりとした先生だ。
年齢もここだけの話アラフォーなので、お見合い話が出てもおかしくない。
先方はご両親がすでに他界されているそうで、ふたりで気軽なお店で会ってみましょう、ということらしい。
「今夜、シーサイドタウンのお店でお会いすることになってるんです」
「盛り上がるといいわね~」
「でも私、話が合うか自信がなくて」
「ああ、三国志の話しちゃうとか?」
「そうなんです。それも10回も失敗してて。11回目の正直なんです!」
大橋先生はかなり今回のお見合いに賭けているようだ。
見せて貰ったお見合い写真は、落ち着いた眼鏡のスーツの男性。やさしく微笑んでいる。
「おおー、いい男じゃない! うん、相性あうわよ!」
授業のベルがなったので、そのときはそれで大橋先生と別れた。
しかしそれから、あずさはむずむずしていた。
「大橋先生のお見合い……んー! どうなるんだろ!」
他人事だとわかっているが、気になる。気になって仕方がない。
「というわけで、私たち、決して怪しい者じゃ……」
店の前でたむろするあずさと高校生たちを不審に思って事情を聞いたのは、店主の
七條 蛟。
彼はちょっとため息をついて「しょうがないな」と言った。
おそらく予約の「高良 聡介(たから・そうすけ)」のことだろう。
15分ほど前に来店して、人待ち顔で時計を見ている。
「とにかくそこにいると怪しいから、中に入って珈琲一杯でも頼んでくれ。
今日は雨も降っていて空いてるし、あんまり大騒ぎするんじゃなきゃ、店としては問題ないさ」
「ありがとう。安心して。注文はた~っぷりさせてもらうわ~」
こうしてあずさたちは近くの席を取り、大橋先生を待った。
しかし、待ち合わせの時刻になっても大橋先生は現れない。
「この空気……。遅刻魔の勘だけど、きっと、このままだともっと遅れるわ」
あずさはこそこそと電話を掛ける。
「もしもし、大橋先生? いまどこにいる?」
すると大橋先生は泣きそうな声で言った。
『じ、自宅です。一度帰って着替えてたら……』
「ほ、星ヶ丘の?」
『はい、高良さんの写真を見たらドキドキしたのか、うっかりミスして……でも、もう出ます。あれ、写真どこいったかな……あった。あ!』
がちゃんと陶器が割れる音。
『ああもう嫌です。また花瓶を落としてしまいました。でも掃除してる場合じゃないですね。写真だけ拾って……あ!』
足を滑らせてドテッと転ぶ音。
そして電話は切れた。
あずさは呆れてワインを注文すると、今の電話の内容をモノマネしながら生徒たちに伝える。
「というわけで、このままじゃ大橋先生のお見合いはダメかしらねえ~。はぁ残念」
そのとき、店の表を灰色の猫が一匹てくてく歩いてくると、あくびをひとつ。
もれいびの生徒たちはハッとした。
(もしかして、神魂の影響?)
『さあな?』
猫はニヤッと笑うような顔を見せて、次の瞬間には消えていた。
(こんな大遅刻するなんて、何かおかしな神魂が絡んでいるのでは……?)
(大橋先生が、もれいびに目覚め始めているのとか……?)
一部の生徒たちは立ち上がった。
原因を確かめるためにも、お見合いの成功のためにも、大橋先生を自宅まで迎えに行こう。
「みんな、大橋先生のお見合いを成功させよう!」
こんにちは。
『spraoi』さんのお店をお借りして、大橋先生がお見合いです。
それを聞いてしまった理事長、一部の生徒たちと
野次馬状況を探りに来ました。あなたは、
・あずさの話を聞いて興味津々一緒に来た/無理やり連れて来られた
・あずさの話を聞いた人から連絡を貰った
・偶然「spraoi」に居合わせた
・偶然大橋先生を見かけた
などの理由で、今回の件に関わることになります。
関わった経緯は特に描写しないので、こだわりがなければ記入は不要です。
もれいびでも、ひとでも、寝子高生以外でも、ご自由に。
事情は、知っていても知らなくてもかまいません。
・大橋先生を迎えに行く
・見合い相手の高良が帰ってしまわないように時間稼ぎをする
・大橋先生と高良との会話が弾むようにこっそりサポートする
(迎えに行く段階で失敗した場合は、描写はありますが、夢か平行世界の扱いになってしまいます)
・普通に食事を楽しむ(あずさのおごりです)
・お店の人として働いたり、(話を聞いたことにして)手伝ったりする。
(お店の人として動く場合は、コミュニティで許可をいただいてからにしてください)
など、ご自由にどうぞ。
もちろん、大橋先生が好きだから邪魔してやるーみたいなアクションもOK。
今回のお見合いが成功するか否かは、みなさん次第です。
なお、食事のメニューはこちらを参考にさせていただきます。
アイルランド料理店『spraoi』メニュー表
<関係ある人物(NPC)>
大橋 尚…………歴史好きすぎて三国志の英雄と結婚したいと思っているうちに行き遅れた世界史の先生。
参考)寝子祭の前夜祭に行われたミス寝子高教師コンテストで、裏ミスターに出場したときの様子。
高良 聡介………大橋先生のお見合い相手。福祉関係の仕事に就いている(40歳)。
イケメンで落ち着いた雰囲気のある、眼鏡スーツの男。
お見合い写真を見て大橋先生のことが気に入ったらしく、
出来れば結婚を前提にお付き合いしたいと思っている。
百戦錬磨?のあずさ曰く、大橋先生との相性は史上最高で、結婚するっきゃない相手。
桜栄 あずさ……妙な使命感で見守りにきたが、ワインを呑み始めて早くも集中が切れかけている。
<PL情報:シナリオ開始時、PCは知りません>
大橋先生は「気になる異性の顔(写真含む)を見ると、うっかりミスをする」
というろっこんに目覚めてしまいました。
今のところは、全く自覚のないもれいびです。
今日の大橋先生は、何度かミスをして遅刻が確定してからというもの、
気を取り直そうとするたびに高良の写真をポケットから出しては心の中で謝っている。
おかげで、再びろっこんが発動してミスをする……という悪循環に陥っているようです。
自宅は、小さくてシンプルなお屋敷です。
両親が遠くで暮らしているらしく、今は1人暮らしのようです。
うまく連れ出せたとしても、
・高良の写真をポケットから出して見る。
・高良に電話しようとして、連絡先に登録してある顔写真を見る。
・高良の顔を直接見る。
などのたびに、
電柱にぶつかる、ワインでうがいする、フォークを頬に刺す、歴史について熱く語り出す、
などのうっかりミスをすることが予想されます。
大橋先生に絡む方は、大橋先生の面白いうっかりミスや
それについての対処などアクションに盛り込んでいただけるとありがたいです。
それではご参加お待ちしております。