恐怖！　○○しないと出られない部屋！｜リアクション

恐怖！　○○しないと出られない部屋！

「よし、このまま俺がキスをすれば全員めでたく脱出だな！」
　御剣は既に開き直っているようだ。
　青いツナギも最初から着ていたんじゃないかと見紛うほどフィットしている。
　本気でこの場にいる者全員とキスする気だ。
「というか、俺、こんなにキスしてるのに、なんで居残ってんだ……？」
　御剣は素朴な疑問を口にした。
　するとビリーが即答した。
「だって面白いから帰すわけねーじゃん！」
「お、おう……」
　御剣は自分の不憫属性を再確認してしまった。

「これは困りまシタ……。恥ずかしくてキスなんてできまセーン！」
　深縹はごろごろもだもだと床を転がっていた。
　初心な彼は現状を打破できずに困り果てていたのだ。
　だが、この部屋はキスをしないものにペナルティが降り掛かる。
　深縹の体が不意に壁にぶつかった。
「変ですね……。こんなところに壁なんて……！？」
　彼は目を疑った。
　札束だ。札束の山だ！
　気が付けば札束以外にも花束や宝石など高価な物品が続々と湧いて出てくるではないか！
「ま、まさか私に、これを贈られ……Ｎｏｏｏｏｏ！？」
　深縹の全身が鳥肌になった。
　彼は過去の経緯で『大金を自分に使われる事』や『高額な品物を己に贈られる事』がトラウマレベルで大の苦手なのだ！
（自分の稼いだお金を使うのは大丈夫）
「こ、怖いデース！！　私ではなく他に欲しがる方に贈ってくだサーイ！？」
　雪崩のように降り注ぐ札束と高級品から逃げ惑う深縹！
「誰か、誰か助けてくだサーイ！！」
　夢は夢でも、彼にとってはこれは悪夢。
　もうダメかと思った、その時だった！
「そのカネやらなんやらをあたしに寄越せえええ！！」
　小野田がゴージャス雪崩を体全体で受け止め、深縹を庇った！
「お、おお……！　ありがとうございます……！」
　小野田にぶつかったことで悪夢が消失したようだ。
　深縹はホッと胸をなでおろす。
　だが、本当の悪夢はここからだった。
「……ねぇ、あんた、金持ちなんでしょう？　ねぇ、金持ちだろ？　なぁ、金持ちなんだろ！？」
　小野田は目が血走っている！
「そんなにお金が嫌なら、あたしにちょうだい！　そして養って！　一生涯ッ！」
「え、あ、ちょっと待ってくだサーイ！？」
　貞操の危機を感じた深縹が後ずさりする。
　これに小野田は遂にキレた。
「オウオウオウオウ、ここにいる美少年たちは揃いも揃ってあたしに大人のお姉さんの魅力がないってーのかゴルァ！　つーか段々と選択肢が減ってくってのはどーいう了見よ？　なんで最後まであたし残ってんのさ！？　あーもうキレましたわーマジやってらんねーわーそっちから来ないならお姉さんから積極的にアプローチしちゃうゾ！」
　半ギレのまま深縹を押し倒すと、小野田は両手で深縹の顔面をロック！
　そして自分の体を密着させたまま深縹の耳たぶを噛んだ。
「ひぃぃぃ！？」
　深縹は再び鳥肌に見舞われた。
　完全にドン引きだ！！
　小野田は内心、あれなんで引いてるのうわーんばかーと泣きたい気持ちだったかぐっと堪えた。
「もう、可愛いんだから♪　お姉さんが優しくこじ開けてあげるってヒャッハーやっぱ我慢できねぇえええ美少年の唇いただきまああああっすう！」
　そして欲望の方が上回ってしまった。
　無抵抗の美少年に跨って全てを喰らい尽くすその姿は妖怪めいて実際コワイ！
　千鳥は深縹がアラサーモンスターに捕食される一部始終を目撃してしまった。
「嫌だー！！　お姉さんにキスしても食べられちゃう（比喩表現）なら絶対に嫌だー！！」
　高校生男子でも、号泣することだってあるのだ……。
「千鳥、だから言っただろ？　俺とキス……」
「それはもっと嫌だよ！」
　拒絶する千鳥だが、御剣は凄みを聞かせながらにじり寄ってきた。
「そう言うなよ、ほら、力抜けよ……」
　そしてろっこん『加速』であっという間に千鳥へキスをやってのけたのだ。
「刀くんの馬鹿ああああああ！！」
　キスをされてショックを受けた千鳥のやけくそキックが御剣の股間にジャストミート！！
「アッー！！　サヨナラ！」
　急所にクリティカルヒットした御剣の体が突然、閃光を放ちながら爆発した。
　爆煙の中から出てきたのは、彼の着ていた青いツナギだけだった……。

【小野田万里・深縹露草・千鳥雅人・御剣刀：脱出】

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