【お三夜】きぐるみづくしのお猫様｜リアクション

【お三夜】きぐるみづくしのお猫様

「あぁ、そこのご婦人。少しお伺いしたいことが」
　御剣刀は優しげな風貌のおばあさんに声をかける。
　おばあさんはマフラーを巻きなおしながら、刀に向き直った。
「ここの猫たち、最近着ぐるみを着ているようなんですが、いつぐらいから着ているかご存知ですか」
「そうですねぇ。気がついたら着ていましたから……お三夜の準備でしょうかねぇ」
　お三夜では着ぐるみを着た人々が見かけられたりもする。
　ならばそれ関係と思うのは当然の成り行きだ。
「どの猫も皆、一斉に着ぐるみになっていましたか？　それとも、徐々に増えたのでしょうか」
「ゆっくりとだったと思いますよ。最初は二、三匹でしたねぇ。そうそう、休日の次の日は特に増えていましたねぇ」
　足元によってくる着ぐるみお猫様たちを、おばあさんは愛しげに撫でながら、餌を与えた。
（ふむ……。休日の次の日ということは、犯人は社会人か学生か？　平日は忙しい人種である可能性が高い）
　心の中で、目の前のおばあさんは犯人から除外して、刀は「ありがとうございました」と礼を言うと、次ぎの心当たりを探ってみる。

『寝子島神社に着ぐるみお猫様が大量発生している』
　その噂は、八神修の耳にも届いていた。
　飼い猫のタイガと共に散歩がてら寄って見たのだが……。
　可愛い、愛らしい、抱きしめたい。
　そんな感想で溢れる噂の着ぐるみお猫様をみて、修は即座に行動を起こした。
　それは、救助活動。
　ジェレミアと同じく、修もまた、着ぐるみお猫様の生命の危機を感じ取っていた。
（前足も後ろ足もすっぽりとくるまれているからね。これでは、狩も出来ないよ）
　野良猫達にすら異常に猫に懐かれまくる特異体質の修にとって、着ぐるみお猫様を捕まえるのは実に容易だった。
　問題は、他の面々と同じく、ぴったりサイズの着ぐるみを脱がせるのはかなり困難なこと。
「タイガ、少しの間神社の猫達と遊んでおいで」
　時間がかかるのと、少し思うことがあって、修はタイガを促す。
　賢いタイガは修の意図が分かるかのように、こくっと頷いて、野良猫達に混ざって遊びだす。