【お三夜】きぐるみづくしのお猫様｜リアクション

【お三夜】きぐるみづくしのお猫様

　後木真央のテンションは複雑だった。
（着ぐるみお猫様可愛いのだ。可愛いんだけど、かわいいのだけどーーーー！）
　心の中で悶絶する。
　なぜなら、愛らしいお猫様たちがどう見ても困っているからだ。
「真央ちゃん、どうかしたのかな？」
　千鳥雅人がじたばたしている真央に声をかける。
　このまま放っておくと、遅刻しそうな。
「くぅぅ、可愛いのだ、気持ちは分かるのだ。だがしかしなのだ～」
　じたじたじたっ。
　真央は首をふって、可愛さを振り払う。
　そして、「うぉっ？！」と声を上げた。
「雅人君、いつからいたのだっ？！」
「さっきからいたよぉ。真央ちゃん猫に夢中で、気づかなかったんだねぇ」
「そうなのだ、猫たちがかわいすぎてかわいすぎて、はうっ」
　オーバーリアクション気味に、真央は思いっきりのけぞる。
「確かにかわいいよねぇ。でもねぇ、急がないと、遅刻する時間だよぉ？」
　雅人が時計を真央に見せる。
　そろそろ走ったほうがいいぐらいの時間だ。
　つぶらな瞳で二人を見上げてくる着ぐるみお猫様たち。
「うぅ、そんな瞳で見つめられたら困るのだ、真央ちゃんは心を鬼にして頑張るのだ」
　血涙を流す勢いで、真央は着ぐるみお猫様の着ぐるみを脱がしにかかる。
「脱がしちゃうのぉ？」
「仕方ないのだっ、猫達は困っているのだ、大問題なのだっ」
「じゃあ僕も一緒に脱がせるねぇ。あ、それは引っ張っちゃ駄目だよぉ」
　ぴょこんっ。
　雅人のあほ毛が揺らめいて、着ぐるみお猫様がじーっと狙う。
「雅人君、そのままじっとしていてなのだっ、お猫様たちが動かなくなるから、脱がせやすくなるのだっ」
「分かったよぉ」
　真央に頷く雅人。
　二人とも、きっと学校は遅刻だろう。　