【お三夜】きぐるみづくしのお猫様｜リアクション

【お三夜】きぐるみづくしのお猫様

　寝子島神社から全力で帰宅した真央は、自室のパソコンの前でうーんうーんと唸りながら頑張っていた。
　遅刻どころか学校はサボった。
　お猫様の危機に、学校は二の次だ。
「出来たのだ、かんっぺきなのだっ」
　真央は改心の出来栄えの写真に、にかっと笑う。
　その手にある写真は着ぐるみお猫様そのもの。
　だが少し様子が違う。
　もっふんもっふんの三毛猫が着ぐるみを着て映っているのだが、その三毛猫は真央のろっこんで召喚した三毛猫のがおーだから、寝子島神社の野良猫ではない。
　つまり、着ぐるみを着せられるはずのないお猫様。
「ほんとに着せなくとも、着ぐるみお猫様になれるのだ！」
　真央が根性とがおーの協力で作り上げた合成写真は、本当に着ぐるみを着ているかのように見えた。
　えっへん。
　がおーに胸をそらして見せる真央。
　がおーが、なんとなく「そんな事をしている時間はあるのかなー？」といっている気がする。
「そうなのだ、あまり時間はないかもしれないのだ。でもこれをこーしてプリントアウトして、準備完了なのだ」
　ウィーンウィーンと何枚か印刷をかけ、真央は合成写真を鞄につめる。
「お猫様ラヴァーに悪い人はいないのだ。でも、ほんとに着ぐるみを着せちゃうと駄目なのだ」
　でも可愛いし。
　着ぐるみお猫様を観たい気持ちは、よーーーっく、わかるし。
「がおー、犯人を説得しに行くのだ！」
　おーっ！
　真央はがおーと一緒に寮を飛び出すと、寝子島神社に向かって走り出した。　

「おばーーーちゃーん、ちょっとこれをみて欲しいのだっ」
　とうっ！
　寝子島神社でお猫様たちに餌をあげているおばあちゃんの前に、真央はびしっとポーズを決める。
　その手には、鞄から出した一枚の合成写真。
「あらあら、愛らしい写真ですねぇ」
　おばあちゃんは目を細めて真央の腕を褒める。
「そうなのだ、可愛いのだ。でもほんとに着せるのは駄目なのだっ」
「そうねぇ」
「おばーちゃんは、着せていないのだ？」
「えぇ、わたしはこんなに上手に縫えないわねぇ。編み物なら、得意なのだけれどねぇ」
「そうだったのかっ。着せてる人を見たことはないのだ？」
「よく聞かれるんですけどねぇ。えぇ、見たことがないのよ。こんなに沢山いるのにねぇ」
「疑って悪かったのだっ」
　ぺこりと頭を下げる真央に、おばあちゃんは「いいのよ、何か分かったら教えるわねぇ」と微笑んで去ってゆく。