ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～ユメギワ空想楽団｜リアクション

ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～ユメギワ空想楽団

【ボクらのアドベンチャー！】

　気持ちの良い、朝！　桜庭円は、爽やかな青空と太陽に向かって伸びをしながら、
「んーっ！　絶好の探検日和だねぇ、にゃーくん」
　にゃーんっ！　と、肩に乗った愛猫にゃーくんも同意しております。
　何かと派手な冒険の舞台になったりもする、ここは九夜山。比較的傾斜の緩やかな森の中を歩き、円は今日もにゃーくんと一緒に、遺跡探しをしておりました。
　……いえ、聞き違いじゃないですよ。遺跡です、い・せ・き！　九夜山には古代文明の残した遺跡が今も眠っているという、もっぱらの噂なのです。本当です、だって寝子島書房の本に書いてありましたもん！
「よーし、今日はあっちのほうを探してみよっか！」
　そんなわけで意気揚々、腕を振り上げ、にゃーん！　と歩くひとりと一匹。
　けれど何やら、
「……んん？」
　本日の探険は、のっけから少々、いつもと違っていたようでして。
　森の中、突如現れる白いスーツ、楽団員たち……もはやご存じ、ユメギワ空想楽団！　それぞれに違った楽器を手にした彼らは、さっそくそれらを弾き始めます。
「う、上手いっ！？」
　うきうきと心躍る、彼女の探険にふさわしい、ドキドキワクワクなアドベンチャーを予感させるような、今の円にピッタリの曲！
　なのですけれど。
「ちょ……ちょっと待ったーーー！！」
　何を思ったのか円ちゃん、両手を掲げて、ぴたり！　彼らの演奏を止めまして。
「探検に音楽、すっごくワクワクするけど、でも良くある感じ！　ここはひとつ……そう！　ミュージカルで行きましょう！」
　さすがの寝子島書房愛読者、不思議現象への適応能力が高いのでした。

♪『探検者たち　～マドカと１５人の仲間～』

原作　内藤辰夫 / 演奏　ユメギワ空想楽団

　……きょとん、として自分たちを指差した楽団員たちの数は、１４人。円がにゃーくんをもふっと抱っこすれば、これで仲間は、１５人！
「さあ、出発だー！」
　木漏れ日の差し込む森の中を、円と仲間たちは進みます。未知の遺跡を求めて！

「♪今日は素敵な　日曜日～♪」
　セリフはもちろん、全て歌。といっても円ちゃん、ミュージカルなんて未経験、さっぱり分かりません。でたとこ勝負！

「♪こんな日は　部屋の中じゃあもったいない！♪」
「♪にゃーくんと～　九夜山へ～　遺跡さがし～へ～♪」
　にゃんにゃん、にゃおー！　実は円に先んじて、演劇経験をお持ちのにゃーくん、セリフもバッチリ！

「♪森にはあるよ　まだ見ぬ遺跡～♪」
　楽しくなってきた円は、スキップしながらくるくる！　スピンして、ジャンプして。時にはダッシュ！　後ろへ続く楽団員たちは、そのペースに付いていくのに一苦労、ちょっぴりへろへろになってたりしましたけれど、演奏だけはきっちりとこなしております。

「♪それはなぜ？　だってこの本に～書いてあるから～さ～♪」
　しゅば！　と取り出しますのは、一冊の本。

『九夜山の謎、隠されし文明の真実』～！！（寝子島書房刊）
　ぱんぱかぱーん！　とトランペットの音。
　もちろん、円が道に迷えば、ガガーン！　とピアノが低い音で驚きを表して、迷子になって不安そうな顔を浮かべれば、ヴァイオリンが不穏なメロディをきゅっきゅと小刻みに鳴らします。

「♪う～ん　困ったな～！　どっちへ行けば良いのかな～♪」
「♪おやおや？　にゃーくん　どうしたの～♪」
　ぺも、と円の膝に手を置いたのは、にゃーくん！
　しゅたたと導くように駆け出せば……楽団員たちも張り切って、演奏は一気に明るくなって、ドキドキワクワクアドベンチャー！

「♪やっぱりにゃーくん　頼りになるね♪」
「♪さあさ　探検　探検だ～♪」

　九夜山に、楽しい音楽と歌は満ちあふれて。
　円と１５人の仲間たちは、足取りも軽やかに、ずんたかずんちゃと森の奥へ消えていきました。