ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～ユメギワ空想楽団｜リアクション

ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～ユメギワ空想楽団

【なぎさのうた】

　白浜渚は思わず、目をぱちくり。ゆっくりと眼鏡を外して、目元をこすってもう一度かけたら、それが夢では無いらしいと悟りました。
　だって、寝子島ってば、不思議なことが起こる島でありまして。
「あの……い、いらっしゃいませ？」
　自室を振り返ると、ぎゅうぎゅうにひしめき合うように、ユメギワ空想楽団！
　今日の分の予習・復習を済ませ、こもった熱気を開いた窓から逃がしつつ、涼やかで心地良い夜の空気に、ひとつ深呼吸。さあ寝る前に、日課の歌の練習でもしようかな？　なんて思ったところで、まるで示し合わせたように現れた彼ら。
　うっかり、ちょうど良いかな、なんて思ってしまったのです。
「えっと……せっかくですから。皆さんに、お願いがございます」
　慇懃に告げた渚に、白いスーツの彼らは、待ってました！　とばかりに身を乗り出して、
「私がこれから、歌を歌いますので。合わせて演奏を、お願いできますか？」
　声なき返答は、指で作った真ん丸わっか。もちろん、オッケー！　でありました。

♪『こもりうた』

歌　白浜渚 / 演奏　ユメギワ空想楽団

　もう一度、大きく深呼吸。
　やがて、水のように透明な歌声が、澄んだピアノの音色に運ばれて、開け放した窓を抜け、街中へと。リズムはゆったり、ふんわりふわふわ。子供を寝かしつける時、その肌をそっと撫でながら、おかあさんが囁くように歌う……そんな、静かで優しい歌でした。

　　　　　　　♪
　　　　　　　　おやすみ　わたし　夜にうかぶわ
　　　　　　　　　　　　　風がふうわり　雲をとびこえ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　夢のくにで　小人にかこまれ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手と手つないで　空にうたうの
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪

　　　　　　　　　　　　♪
　　　　　　　　　　　　　おやすみ　わたし　夜にうかぶわ
　　　　　　　　　　　　　　　　　ロケットひととび　宇宙まで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　月がわらって　太陽ごきげん
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手と手つないで　星とおどるの
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪

　　　　　　　　　　　　　　　　♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　ぱちくり　わたし　お布団ふかふか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　踊りつかれて　猫とねむるの
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪
　　　　　　　　　　　　

　歌い終えると、満足したのでしょうか？　渚はころりと横になり、すぐにも眠りへ落ちていきました。ピアノ弾きの優しげなお姉さんが、彼女へふわりとシーツをかけてやり、にっこり。周囲の楽団員たちへハンドサインで合図すると、彼らはそろりそろそろ、開いた窓から撤収を始めます。途中で、ごちん！　と机に膝をブツけたおっちょこちょいには、一斉に指を立てて、シーッ！

　……ちなみに。渚の歌には、特別な力が込められておりまして。
　歌に込めた感情を聞く者に伝えるというろっこんは、周囲一帯に響いた彼女の美声に乗って、広く影響を及ぼしていたようです……今夜は何だか、ぐうぐう、すやすや。心地良さそうな寝息がそこらじゅうから聞こえてくるほどに、街は静まり返ったということです。

このページにイラストを設定する