『♪……ここは素敵な世界 どこにいても、温かい世界……♪』
……歌です。歌が聞こえます。
型の古いピンク色の携帯電話、その液晶画面で再生中の動画ファイル……静かに歌を口ずさむのは、
夢宮 瑠奈。あまり質の良くない内蔵スピーカーから漏れ聞こえるその声は、ややひび割れてはいたものの、聞く者すべての心を弾ませてしまうかのように、楽しくて。優しくて。
「ああ……やっぱり、何度聞いても、素敵な曲。素敵な歌声……」
ふと。携帯電話の持ち主が、彼方からの視線に気付き振り向いた、その時に。
「…………あら? んふふ。見てらしたんですか?」
あなたの見ている、テレビの中で。番組は唐突に、始まりを告げるのです。
そう、
『 ミ ッ ド ナ イ ト ・ フ リ ー キ ー ・ シ ョ ウ ! 』
学校の屋上、真上に広がるのは吸い込まれそうな星空。寝子島高校に通う生徒なら、あるいはそこが、見慣れた母校であることに気付いたかもしれません。
再び口を開けば、にちゃり、と唾液が糸引く粘着質な音。
「こんばんは。日々の暮らしに様々な苦悩を抱え、押し潰されそうになりながらも際どく頑張るあなたへと捧ぐ、一夜の安らぎ。『
ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』へようこそ。わたくし、これより皆様を不可思議な世界へとご案内させていただく、ストーリーテラーの
胡乱路 秘子です。今宵もどうぞ、よろしくお付き合いのほどを……んふふ!」
今夜もまた、彼女はにんまりと笑い、長いスカートをついと指で吊り上げ、優雅に一礼を。
「さて。皆さんは、
音楽がお好きですか? 勇気が湧いてくるような、激しくアップテンポな音楽。昂ぶった心を落ち着かせてくれる、静かで安らかな音楽。思わず踊りだしてしまうような、賑やかで楽しい……ああ、
素晴らしい音楽!」
携帯電話から聞こえてくる、心躍る歌声。
秘子はその響きに笑顔を浮かるまま、くるり、くるり。いささか慣れない足さばきで、ステップを踏み、踊り出します。
「
音楽とは、力です。太古の戦士が、鼓笛のリズムで心を奮い立たせ戦いに臨んだように……時として音楽は、人の心に強力に作用し、思わぬパワーの源泉となるものなのです。あなたにも、経験がありませんか? テストの前日、お気に入りの曲に力をもらいながら、一夜漬けをこなしたり。失恋の痛手に身を浸しながらに聴いた音楽が、いくらか心を前向きにしてくれて、立ち直ることができたり……なんて、んふふっ」
見上げた星空。
くるり、くるり、彼女が踊るたび、星たちもくるり、くるりと回ります。
「音楽は
素敵で、
魅力的で、
強力で……そして、
危険です。彼らはそのことを、誰よりも良く熟知しています。ご紹介いたしましょう……『
ユメギワ空想楽団』の皆さんです」
このさして広くも無い屋上の、どこにこれほどの人間が隠れていたのでしょうか? 秘子が手をかざせば、その背後にずらずら、ずらりと現れる、幾人もの人々。
清潔そうな白いスーツに身を包んだ彼らの手には、ヴァイオリン。ヴィオラにチェロ、コントラバス。フルートにクラリネットに、トランペット、トロンボーン。小太鼓大太鼓に……大きなピアノまで!
それぞれに楽器を弾き始めた、総勢30余名にもなる彼らの姿はまさしく、
楽団です。
「あなたの前にも、彼らは現れるかもしれません。彼らはあなたの行いを、素晴らしい音楽によって、力強く後押ししてくれることでしょう……けれど、お気をつけを。その演奏に、どうぞ、呑まれてしまいませんよう……」
動画の中、アカペラで歌う瑠奈の美声。唐突な管弦楽の調べは、その魅力を存分に引き出すための、豪勢なバック・ミュージック。
重ね合わせるように……今度は、秘子が歌い始めます。決して画面の中の彼女や、プロの歌い手のように上手くは無く。けれど本当に楽しげに。誰はばかることなく、高らかに、伸びやかに。
歌は、オーケストラの奏でる荘厳な音色に乗って、星の彼方へまでも届くほどに、夜空へ響き渡っていきました。
♪『あたたかい世界』
作詞・作曲 末明せれね / 演奏 ユメギワ空想楽団
♪
守っていこう 続けていこう
この素敵で平和な 温かい世界を……んふふ!
♪
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
何だかお久しぶりな『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』の本編、今回はその第六夜となります。
ガイドでは、夢宮 瑠奈さんにご登場いただいたのと、素敵な歌をお借りさせていただきました。ありがとうございました!
(曲名が分からなかったもので、勝手ながらひとまずこちらで付けさせていただきました……イメージと違ってましたらごめんなさい!)
今回のシナリオの概要
今回のテーマは、『音楽』です。
あなたの前に突如として、どこからともなく楽器を携え現れる謎のオーケストラ、『ユメギワ空想楽団』。
彼らは、あなたの行動に合わせて壮大な楽曲を演奏し、強力に場を盛り上げてくれます。彼らの音楽は勇気を沸き立たせ、活力を生み出しテンションを高め、きっとあなたに素晴らしい成功をもたらしてくれることでしょう。
ただし、彼らの演奏が持つ力は時として、望まない結末へ導くこともあります。ちょっとした別れ話が、おどろおどろしいメロディによって、予期せぬ惨劇に変わってしまったり。近所へドライブに出かけたら、勇壮な楽曲にテンションが上がり、ついついスピードを出しすぎて事故を起こしてしまったり。
音楽の力は思いのほか、強いものです。あなたは彼らの演奏によって、大きなリスクとリターン、その両方の可能性を得るでしょう。
なお、突拍子も無く現れる彼らユメギワ空想楽団に、皆さんは違和感を抱いて何かしら反応しても良いですし、気付かず自然と音楽によって影響を受けるという形でもOKです。
あるいは、ご自身も音楽を嗜む方などは、一緒になって演奏に参加してしまうのも良いかもしれません。気のいい彼らは、快く受け入れてくれるでしょう。
行動は基本的に、自由です。勉強ギライな方が宿題に取り組むために応援してもらうとか、好きな人へ告白するために背中を押してもらうとか、何かしらのホラー体験を演奏で雰囲気バッチリにしてもらうとか。懐かしい曲を演奏してもらって、過去の思い出を蘇らせるとか。音楽と絡められそうなら、何でもOK!
アクションでできること
アクションでは、舞台となる場所、どんな行動、シチュエーションを描写するか、それらを楽団にどんな楽曲で盛り上げて欲しいか、等をお書きください。
●1.舞台となる場所
主に描写の舞台となる場所をご指定ください。
寝子島島内や、島外でも、知っている場所でも全く知らない場所でも構いません。
特に希望の場所が無い、どこでも良いという場合は、お任せでもOKです。
●2.行動やシチュエーション
今回のシナリオで描写したい行動、状況などをお書きください。
あらゆる行動は、下記に指定していただく、楽団が演奏する楽曲によって、極めて良い結果または極めて悪い結果へと発展します。
行動の結末まで指定していただいても構いませんし、状況や楽曲の指定だけで結末はお任せ、ということでもOKです。
彼ら楽団は、それがどんな困難な場所・状況であれ、どこにでも現れ確実に演奏を届けてくれます。
道端を歩いていたらぞろぞろと路地裏から現れたり、車で走っていたら並走するトラックの上で演奏してたり。飛行機に乗っていたら、周囲の乗客に紛れていた彼らが荷物から楽器を取り出し奏で始めたり。
皆さんはその演奏に、ドッキリのように驚いて右往左往しても良し、気付かずに単なるBGMとして、その勢いで何かを進展させるのも良し。ミュージカルっぽくセリフを歌にするのも楽しいかもしれませんし、あるいは演奏に自らも飛び込んで、一緒に突発的路上ライブを始めてしまうのも良いかも。
●3.ユメギワ空想楽団が演奏する楽曲のイメージ
謎のオーケストラ、ユメギワ空想楽団があなたの行動に合わせて演奏する楽曲の情報を、以下に添ってお書きください。
情報は描写の際に反映されるほか、ガイドにあるような曲名表示のテンプレートにも使用されます。
○曲名(お任せも可)
○アーティスト名、作詞者、作曲者など(省略可、無ければ表示されません)
○曲のジャンル、大まかなイメージなど(必須。内容は自由)
曲のイメージが、行動の行き着く結末や、リアクションの内容を大きく左右します。賑やかな曲なら楽しい雰囲気だったり、不気味な曲なら恐ろしい結末になったり。
※なお、実在の曲やアーティストの場合、パブリックドメインでないもの(知的財産権の発生しているもの)は指定できません。
既存の似たようなものを指定したい場合や、判断の付かない場合は、ネコジマナイズ! してしまうのがオススメ。
例:『サカニャクション』とか!アクションには、上記の要素に加えて、
・楽団へ抱く違和感の度合い
(誰こいつら?、特に気にせず、全く気付かず自然と影響されて、など)
などもお書きいただけましたら。
ちなみにですけれど、彼ら楽団の正体を探る、といった行動は、恐らくあまり意味が無さそうです。彼らはどこからともなく現れて、事が終われば慌しく去っていきます。
話しかけたりしてみても構いませんが、言葉が返ってくることは無いと思われます。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』とは?
深夜、テレビ局の放送が終わった後に始まる、謎の番組。不可思議で不条理な出来事と、それに関わった人々の行動や、その顛末などが紹介されます。
いつも決まった時間に始まるわけではなく、また誰でも見られるわけでもなく、たまたま波長の合った人にだけ見ることができるようです。
このシナリオ内で描写された出来事は、全て番組内で放送されたものであり、現実に起こったことかも知れませんし、現実には起きなかったことかも知れません。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』のタイトルを冠するシナリオ内で、ご自身のPCが体験した出来事について、プレイヤーさんは実際に起きたこととして設定に組み込んでいただくことも出来ますし、番組上の演出や架空の出来事だったとしても構いません。
その他
●参加条件
特にありません。
寝子高生の方でも社会人の方でも、小中学生の方でも、どなたでもご参加いただけます。
●舞台
アクションにて指定した場所が舞台となります。
寝子島島内はもちろん、それ以外のどこでも構いません。
●NPC
○胡乱路 秘子
謎のテレビ番組『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』のストーリーテラーを自称する少女。
んふふっと怪しく笑います。
●備考や注意点など
※NPC、及び今回のシナリオには参加していないPCに関するアクションは基本的に採用できかねますので、申し訳ありませんが、あらかじめご了承くださいませ。
※アクションはどんなものでも構いませんが、内容によってはMFS!内での限定された設定として扱われます。また、内容によっては描写できなかったり、直接的な表現を避けて描写されることもあります。
以上になります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております~!