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寝子島高校
【寝子祭】歌って踊って楽しんで
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…
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キャンプファイヤー&フォークダンス
午後七時を迎えた。第一グラウンドの中央に次々と薪が運ばれていく。中心となって動いていたのは
楢木 春彦
で動きには切れがある。櫓を組む
夏神 零
は身体が微かに揺れている。強力な睡魔によって瞼が落ちるのは時間の問題であった。
側では拡声器を持った
マリベル・ロイス
が気炎を吐いていた。
「安全対策が第一や! 火の粉が目に入ったとか、火の勢いを足そうとして灯油を多く掛けすぎたとか、ならんようにちゃんと監視しないと駄目や! 保険医や先生の確保は大事やで! それを怠ったら何も始まらんのや!」
「火よりも櫓が先やろうと思うとですよ」
倉前 七瀬
は持ってきたラジカセを足元に置いた。
「あれや、備えあれば憂いなしや!」
「それなら備えないといけんですね。櫓を組むとですか」
「……ウチはそんな怪力ちゃうわー」
苦渋の表情から一変して笑顔を浮かべる。マリベルは架空の相方の肩を叩いた。七瀬はラジカセに関心を寄せていて、何か言ったとですか? と素の表情で返した。
「……こ、これが伝説のボケ殺し……無視すんなや」
マリベルの更なるボケを封じて七瀬はラジカセを弄っていた。
セルゲイ・ボスコフ
は見回りに当たっていた。今は北校舎の中を歩いている。
「あれは」
視線を下げる。廊下の隅に蹴とばされたような状態の生徒手帳が落ちていた。拾うとそれは
野々 ののこ
の物であった。
正面から走ってくる人物にセルゲイは目を細めた。
「ノノさん、探し物はコレですネ」
ののこは滑りながらも立ち止まる。差し出された手帳を不思議そうに見て自身のポケットを探った。
「拾ってくれてありがとう!」
「コレカラは気を付けてくださいネ」
セルゲイは大らかな笑みでののこに生徒手帳を渡した。
すぐに走り出そうとするののこに声を掛ける。
「コレも何かの縁デス。ノノさん、一緒に踊りませんカ」
「いいよ、踊ろう!」
セルゲイが大股で歩く横をののこはスキップで付いていった。
人の流れに乗って
青龍寺 琴理
が笑みを湛えて歩いている。隣にはどこか線の細い
日野 満
が落ち着きのない視線で付いていく。
「満くん、何が気になるのですか」
「なんか周りにカップルが多いような気がするんだけど、気のせいなのかな?」
「気のせいではなくてカップルですね。最後はキャンプファイヤーですから、それに」
途中で止めたのが気になるのか。満は弱々しい視線で、何かな? と聞いた。
「見た目では私達もカップルですね、ふふ」
「え、いや、それはちょっと、どうかな?」
慌てる満の姿を琴理は満足そうに眺めた。
綾辻 綾花
は
早川 珪
の姿を探している。図書室にはいなかった。いつもとは違う状態が居場所の予想を困難にしていた。
「……早川先生」
実行委員という肩書もあって綾花はとぼとぼとグラウンドに戻ってきた。
「先生、早川先生!」
遠巻きにキャンプファイヤーを眺めている珪に綾花は駆け寄った。
「綾辻さん、今日は実行委員の仕事、ご苦労様でした」
「苦労というほどでも、ないです。それなりにあおいちゃんと遊んでいたので」
珪の微笑みを綾花は眩しい様子で受け止める。
「早川先生はどうしてここにいるのですか」
「キャンプファイヤーの炎は綺麗でいて、どこか物悲しい終わりを感じさせる。胸に響くものがあると思うんだ。踊りが苦手な僕でもね」
「ミスター寝子高の候補に選ばれただけでも凄いですよ」
力を込めた綾花の言葉に珪は笑った。
「慰められている気分だよ」
「そんなことは。あ、コンテストは先生に投票したんですよ……これは内緒の話です」
勢いで出た言葉は最後の方で消え入りそうに小さくなる。わかったよ、と珪は安心させるような笑みを見せた。
「……早川先生、ドキドキしますね」
「上手く火が点いてくれればいいけど」
組み上がった櫓に火が点いた。徐々に火勢が強まって赤々と燃え始める。
瞳の奥に恋慕の火を宿したかのように綾花は口にした。
「月が綺麗ですね」
「本当に月が綺麗に見えるね」
珪は視線を上げて目を細める。綾花は炎で赤らんだ顔のまま、はい、と小さく返した。
巡り歩いて行き着いた先はグラウンド。
十朱 此方
と
鉄 時尾
は夜空を焦がすような炎を並んで眺めている。
時尾はちらちらと横を気にした。
「今日は、ご一緒してくださってありがとうございました…とても楽しかったです」
「鉄さんを誘ったのはあたしの方よ」
「そうでした?」
朝の出来事を思い出したのか。時尾は口元を押さえて頬を赤くした。
「今日はありがとう」
此方は口にした。続きは心の中で言った。
――楽しかったわ。
手元にある今日の写真にそっと目を落とす。
小学生の頃から変わらない。今年もとても賑やかで楽しいお祭だったわ。
……今年も姉と、遥と一緒に回りたかったな。
此方は自身の胸の真ん中に手を当てた。姉の形見のペンダントを押さえて、今一度、交わした約束を誓う。
遥の分も私が楽しむ。
それが遥との一つの約束。
「……私たちが高校生になるのはまだ先ね」
「十朱さんは早く高校生になりたいのですか?」
「楽しそうだから――」
此方は遠くを眺めて言った。
屋台の片付けを終えて
浅沼 柳司
がグラウンドにやってきた。手にはたこ焼きの入れ物、舟を持っていた。中身は余った蕎麦にソースとマヨネーズを和えた焼きそば風の何かであった。
「あー、祭りも終わりやなー」
茹で過ぎた麺のように言葉も緩んでいた。フォークダンスの気力は無さそうでグラウンドを眺めながら適当に座り込んだ。
箸で摘まんだ麺をズルズルと啜りながら校庭の中心で燃え盛る炎を眺める。時に夜空を見上げて溜息を吐いた。
静かな時間を一人で過ごした。
放浪の果てに辿り着いた。疲れ切った足取りで
維都月 茉菜
がグラウンドを目にした。大きな篝火のような炎をぼんやりとした表情で見る。
「……そうか、フォークダンスがあったんだね」
立ち止まって炎の揺らめきを見詰める。
前に踏み出すことはなく、茉菜は儚い笑みで立ち尽くす。
篠宮 六花
は遠くからチロチロと燃える火を眺めていた。
「息を吹き掛けたら消えそうだ」
実際に息を吹き掛けて笑みを作る。祭りの高揚感が胸の中に熾火のように残っているのかもしれない。
「しばらく眺めていよう」
六花は火の揺らめきに思いを寄せた。
結城 日和
は一人でキャンプファイヤーを見ていた。表情は明るく満足した様子さえ窺える。
好きな人との寝子祭はとても楽しかった。
片思いだけど私は幸せだよ。
「でも、いつかは――」
その先の言葉は胸の中に秘めて甘い余韻に浸る。
両足を投げ出した姿で
吉祥寺 黒子
が燃え上がる炎を漫然と眺めていた。
ライブはあれで良かったのか? もう少し工夫の余地は、なんてことを考えても終わったもんは仕方ないだろ。今の自分のベストは出せたよな。
このキャンプファイヤーで本当の最後だ。終わったらアジトでお疲れ様お菓子パーティーだぜ!
黒子は両足を引き寄せて立ち上がる。指でスカートを摘まんで埃を振るい落とした。
「悩んでいるわけではないのね」
「俺がそんな風に見えるか?」
黒子が振り返ると
芽森 菜々緒
が腕を組んで立っていた。
「立ち直りが早くて良かったわ」
「今日は楽しめたか?」
「ライブは見させて貰ったわよ」
黒子は嬉しそうに笑った。
「踊れたのか」
「異性との接触は苦手よ」
「じゃあ、最後に俺と踊ろうぜ!」
菜々緒は青い瞳で黒子を見た。曇りのない笑みに答えるように手を差し出すのだった。
桜崎 巴
は最後まで残ろうとしたマタ工生をバットで追い払うとグラウンドの方にやってきた。
「しつこい連中だね」
「巴ちゃーん!」
横嶋 下心
が猛烈な勢いで走ってくる。
「また厄介な奴が」
苦虫を噛み潰した顔の巴に下心は笑顔で手を差し出した。
「俺と一緒にフォークダンスを踊ってよ!」
「そんな義理はあたしにないね」
「いや、照れることないじゃん?」
下心は笑顔で食い下がる。巴は鋭い眼で対抗した。
「おかしなことを言ってんじゃないよ」
「変じゃないよ? これは男女がペアになって踊るものなんだからさ!」
「男女なら誰でもいいんだろ。女ならそこらへんにいるんじゃないのかい?」
下心は左右に頭を振った。自身のバランスを失うくらいの必死さで頼み込んだ。
「巴ちゃんと踊れたら俺は最高に嬉しいな~、だからお願いします!」
尋常ではない粘りに巴は聞いた。
「あたしはそこまで必死な理由が知りたいね」
「これです!」
下心は折り畳んだ画用紙に両手を添えて渡した。開いて見るとカップルのような二人が淡い色彩で描かれていた。巴の眼が一方の女性に向いた。眼つきは鋭く、赤いリボンのセーラー服を着ている。
「この女はあたしに似ているみたいだね」
「やっぱり巴ちゃんもそう思う?」
「でも、違うね。あたしはあんたと腕を組むことはないね」
「そう言わないでお願い! 今日だけは俺のお願いを聞いて!」
頭を縦に振らないと収まらない状況に、仕方ないね、と巴は折れた。
その瞬間、後ろから指笛が一斉に鳴らされた。鬼の形相で振り向くと金髪を筆頭にマタ工生が逃げていく。
「やってくれるね」
巴は鼻筋に皺を寄せて笑った。
1年4組の教室で
浮舟 久雨
と
畑中 華菜子
が向かい合って座っている。二人は缶ジュースを宙で軽く合わせた。
乾杯の声で乾いた喉を潤す。
「お疲れ様だ。感謝する」
「喫茶店、楽しかったアルー」
華菜子は笑って、少し視線を下げた。持っていた缶を軽く回す。
「イベントが終わって、ちょっと物悲しい気分になるアルナ」
「ふふ、華菜子らしい……ああっ!」
自身の声に驚いたかのように久雨は立ち上がった。持っていた缶の中身を一気に飲み干した。
「華菜子、急ぐんだ! まだ終わっていない!」
「どういうことアルカ?」
「グラウンドで踊りだ!」
勢いよく華菜子も立ち上がる。腰に手を当ててジュースを飲んだ。
「そうアルヨ! フォークダンスしに行こうアル、くーちゃん!」
二人は手を繋いで駆け出した。
「今年のラストもフォークダンスなのね……」
三夜 深夜子
は眼鏡を押し上げた。
寝子高生だった頃、最後がフォークダンスとは知らなくて、催し物に張り切り過ぎて、凄まじい筋肉痛に襲われて、ろくに踊れなかったのよね。
深夜子は内側の男性に注目した。ハンターのような鋭い眼が秒単位で駆け抜ける。
「決まったわ」
臙脂のロングコートの裾を翻し、狩場へと赴く。それでいて少しは周囲の目が気になって内心の言い訳に走る。
で、出会いを期待してたりなんかしてないわよ?
顔は正直で満面の笑みを湛えていた。
グラウンドの近くで
七夜 あおい
の姿を見つけた。逸る気持ちを抑えて
八神 修
は声を掛ける。
「あおい、一人なのか?」
「まあ、そんなところね」
あおいはキャンプファイヤーの様子を穏やかな表情で見詰めている。修は横に立ってポケットの中に手を入れる。握った拳の状態であおいの前に差し出した。
「俺が作ったんだ」
そっと掌を開いた。陽気に踊る猫バッジにあおいは顔を寄せる。
「楽しそうに踊っていて、なんか可愛いね」
「そ、そうかな。もし、あおいが気に入ったのならプレゼントするよ」
「え、いいの?」
「構わないさ」
修は猫バッジを渡した。受け取ったあおいは裏を見る。そこには名前が書かれていた。
「どうして私の名前が書いてあるの?」
「子供っぽい、おまじないだよ」
グラウンドから拡声器の声が聞こえる。散らばっていた人々が集まって炎の回りを囲み始めた。
「ダンスが始まるみたいだ。さあ、一緒に踊ろう!」
二人は走って輪の中に加わった。
炎を中心に大きな二列の輪が完成した。陽気なオクラホマミキサーの曲に乗って最後のフォークダンスが始まる。
その寸前で
浮舟 久雨
と
畑中 華菜子
が輪の中に飛び込んできた。当然のように久雨が内側に立ち、華菜子が外側にしおらしく並んだ。
「最初は私が相手だ」
「エスコートをお願いするアル」
「もちろんだ」
久雨は華菜子の肩を抱いた。手と手を絡ませて曲に乗る。紳士と淑女の姿勢を崩さない。視線が合うと、どちらともなく顔を綻ばせた。
冴木 竜司
は輪の内側にいた。外側の斜め前には
相原 まゆ
がいる。
偶然ではない。竜司が全身全霊を賭けて割り込んだ成果であった。
炎に照らされたまゆの横顔に竜司の息が心なしか荒くなる。
ああ、永遠のロリータ、まゆ先生。炎に照らされる貴女の姿は儚げでいて美しい。
竜司は無意識に踊る。目はずっとまゆの姿を追い掛けた。ついに順番が回ってきた。
「俺と踊ってくれませんか?」
「順番なんだから踊るわよ」
竜司は背中を丸めてまゆの背中に腕を回す。前と後ろで手を繋いで緩やかにステップを刻む。
「まゆ先生、コンテストお疲れ様でした」
「あれは、まあ、そういうことよ」
まゆのむくれた顔に竜司の脳裏に過去が鮮明に蘇る。
「黄色い帽子にランドセルがとても似合っ、魅力的でしたよ」
「ふざけんじゃないわよー。あたしは大人の女性なのよ!」
暴れる姿は子供のそれと変わらない。竜司はフォークダンスを堪能した。
不満顔で
桐野 正也
は輪に加わる。人数が足りないという理由で無理矢理に押し込まれたのだ。楽しそうな周囲に反して溜息を吐く。
あんま、こういうの得意じゃないんだけどなぁ。
やる気のない目が急に変わる。からくり人形のように口がパカッと開いた。
踊る間に少し落ち着いて
紅 双葉
と出会った。
「今日はお疲れ様」
「き、きりのん先輩、お疲れ様でした!」
頭の先まで赤くなったようなボブを震わせる。正也は縮こまる双葉の背中に腕をやる。まるで抱き寄せるようにして踊り始めた。
踊る舞台はまるで違っていた。貴族風の格好をした人はいない。絢爛豪華な王宮でもなく、普通の格好をした人々が炎を囲んで一時を楽しむだけである。
ただ、ここは現実の世界で夢ではない。夢のような状態でいて現実とも言える。その事実に双葉は幸せの只中にいた。
現実の中で夢と同様に踊る。
双葉は夢の中の自分、シンデレラの顔で正也と目を合わせた。その潤んだ赤い瞳が儚げに問い掛ける。
先輩、まだ思い出せないの?
正也の中にあった霞の掛かった夢に激しい風が吹いた。白いバルコニーで薔薇に見守られながら踊った。心が浮き立つ相手、それが双葉であった。
あ、あの夢の中のシンデレラが!!
突き付けられた事実に正也は激しく動揺した。からくり人形の首の付け根がおかしくなり、顔は紅潮して瞬く間に爆発しそうであった。
その唐突な変化に双葉は気付いた。
先輩、思い出してくれたんだよね。
繋いだ指先から、気持ちとかって伝わっちゃったりしないのかな。
双葉は繋いだ指に想いを込める。正也の動揺が指先に伝わった。心の声に触れた、そんな思いが心に募る。
こんなことして私の、先輩への好き。ばれちゃったりしないのかな。
ばれたら恥ずかしいな。
でも、ばれちゃえばいいのに、なんて。
双葉は正也に身を寄せる。目を合わせられない正也は茹で上がった顔で踊った。
間もなく二人は引き離された。別々の相手と踊ることになった。
双葉は正也の背中を見詰める。
今は好きって言わないですけど、とても長くて幸せな時間でしたよ、きりのん先輩♪
外側で踊っていた
郡 トモエ
はとにかく落ち着きがない。前や後ろを気にする。炎の向こう側を覗こうとして仰け反った。心の声はそれに輪を掛けた状態にあった。
男の子とダンスってそわそわするよね。一体、何を話したらいいんやろう。
左手の男子は口を閉じている。前を向いた姿勢を堅持していた。人間の皮を被ったロボットのような印象だった。
ロボットだったりして。横を向いたら頭がポロッとか、ないよ。これも緊張のせいなのかな。早く知ってる人がくればいいんだけど。
陸上部のみんなは参加してるのかな。上体起こしの二人がいたら、お疲れ様って言いたいなぁ。
トモエの表情が急に硬くなる。
うー、このダンスは先輩とか後輩がごちゃ混ぜだよねぇ。うー、あの人に当たったらどうしよう。実行委員のような気がするんだけど、やっぱりお疲れ様って声を掛けた方がいいのかなぁ。
頭の中の声に翻弄されるトモエの動きはぎこちなく、ブリキの玩具を彷彿とさせた。
宮祀 智瑜
は
桐島 義弘
と手を繋いで踊っている。
「義弘先生、今日はお疲れ様でした」
「疲れはしたが、達成感はあったな」
「ノリノリ義子でしたから」
「設定上の話だ。宮祀、足が遅れているぞ」
本来のスーツ姿になって厳格な性格が戻ってきた。
「先生、まだお祭りの最中ですよ。もう少し柔らかい対応でお願いします」
「そんなに俺は硬いか」
その言葉で智瑜は笑みを浮かべた。
「そう言えば昨日の腰蓑姿も似合ってました。来年も期待しちゃいます」
「あのリンボーダンスは不本意な結果に終わったので少し悔いが残る」
腰蓑姿には言及しなかった。意外と根は剽軽なのかもしれない。
「先生は硬くないですよ」
智瑜は改めて笑顔で言った。
橘 千歳
は目を合わせない。何かに腹を立てているような表情をしていた。
「本当に姉さんでなくて良かったの?」
「舞は関係ない。俺は千歳を、千歳だから誘ったんだよ」
答える
御剣 刀
の声には理解されない苛立たしさが含まれている。千歳は怒ったような目を向けた。
じゃあ、姉さんと何を話していたのよ。
その言葉は呑み込んだ。
重苦しい空気に包まれたまま、二人は踊る相手を変えた。
刀の相手は
芽森 菜々緒
で冷やかな目を向けてきた。青い瞳がそう思わせるのかもしれない。
抗うように刀は口にした。
「よう、楽しんだか? 俺は出し物に掛かりきりだったよ」
「それなりにね」
淡々と踊りのリズムを刻む。相手が変わる寸前で刀は言った。
「これも俺の終わって欲しくないフツウだ。お前は?」
「それはどうかしら」
菜々緒は後ろを振り返るような仕草を見せた。
深縹 露草
は内側で踊っていた。その容姿の為、出会う女性は決まって戸惑いを見せる。自己紹介が終わると相手が入れ替わり、また説明を態度で求められた。
私は男なのですが。
そのような内心の呟きを繰り返しいる内に
羽生 碧南
と出会った。彼女のテンションは異常に高かった。呪文のような言葉を露草に浴びせ掛ける。
「学園祭でフォークダンスと言えば乙女ゲーの定番シチュなので、皆が楽しむ様子を傍で見るつもりが何故か誘われて自分も参加することになって、やれやれと思いながらも踊っているとそれなりに楽しくて、妄想タイムに入ろうかと思った矢先にあなたに出会って、これが興奮しないでいられるかってもんですよ!」
「え、えっと、それは、ありがとう」
「こちらこそ、お腹いっぱいになりました」
碧南はにっこりと笑う。自然な表情に露草の気が緩んだ。
「最初はびっくりしたデースね」
「え、それって何キャラ?」
碧南の言葉に露草は、ただ笑って返した。
結城 永遠
はフォークダンスという足腰の鍛錬に黙々と取り組んでいた。背中が丸くなった老婆は手を繋ぐ姿勢が困難で、永遠は背中に手を当てて軽く押すようにして誘導した。交通の激しい横断歩道を渡っている気分になる。
次の相手は黄色い帽子を被っていた。背は極端に低い。永遠が立ち尽くしているとズボンを手で引っ張られた。
永遠は笑顔を心掛け、うさぎ跳びの姿でチョコチョコと歩く。女の子は手を繋いで全力のスキップをした。膝蹴りの形で何度か脇腹に強烈な一撃を食らった。更に掌で頭をぱんぱんと叩かれる。局地的な無法地帯であった。
「あ、よろしく」
可愛らしい着物姿の
蜂矢 時生
が現れた。声で男性とわかるが永遠は然して驚かなかった。難関を越えたことに密かな喜びさえ覚えていた。相手は着物に慣れていないのか。足元が覚束ない様子で何回か足を踏まれた。
「あ、ごめん」
永遠は黙って許した。局地的な無法地帯の経験が早々と活きた形である。
終始、無口であったが少しは表情に変化の兆しが見られ、何となく楽しさを実感した。
橘 明里
はとにかく見る者に笑顔を与えた。
「あかりは楽しく踊るのー」
決して上手とは言えない。出す足を間違う。歩く速度がずれてプロレスの技を掛けているように見える。本人が必死になる程に周囲を笑顔に変えていった。
「なんか、楽しくなってきたのー」
明里は皆に元気を分け与えた。その朗らかな顔を見て明里も元気になった。祭りの最後に相応しい癒しの効果であった。
セルゲイ・ボスコフ
は笑顔で
野々 ののこ
と踊っていた。
「アハァ、ノノさんも踊るのスキ?」
「なんでー、足がとても軽いよ」
ののこは息で吹き飛ぶ羽毛の状態を体感していた。セルゲイの長身と怪力が合わさって自由な動きを実現した。
「飛ぶように踊りたーい」
「オー、飛んでください、ノノさん」
ののこの腕の下に手を入れて易々と持ち上げる。その体勢で空中を回って踊るように飛んでいた。
「夜の風が気持ちいいよー」
最後は回りながら静かに着地して元の踊りに戻った。
周囲からはささやかな拍手が送られる。
「ンフ、大したコトではないですネ。誰でもガンバレバできますヨ」
規格外の力の持ち主は考え方も一線を画していた。
飛吹 勘助
は一人でグラウンドに足を運んだ。隣に誰もいない悲しさに耐えられず、目を伏せる。
最初に小さな背中が見えた。ふわふわしたショートの黒髪に勘助は声を掛けていた。
「まほろ」
振り向いたあどけない顔は
遠野 まほろ
であった。
「勘助くんも見に来たんだね…」
「…なんだか、今日は、よく、会うね…その、横…いいかな…」
「いいよ。あのね、キャンプファイヤーの火柱がすごいんだよ…」
「そう、なんだ。皆が、踊って、いるね…」
勘助は炎を囲んで踊る人々を見て目が優しくなる。まほろは同じ景色を見ながら話し始めた。
「寝子祭、とっても楽しかった」
「そう、だね…」
「…寝子高に入るまでは、かなりの人見知りだったから…。こんな風に、誰かと一緒に楽しめる日がくるなんて、思ってなかったなぁ」
まほろの素直な言葉に触れて勘助は表情を引き締めた。
「俺は、
あの夏の夜
、が、あまりにも、突然で、もっと話したい、気持ちは、あったけど、夢の中の、存在と思って、諦めてた」
一度、汗ばんできた掌を太腿で拭った。まほろは優しい眼差しで待っている。
「けど、違った。現実でも、君と、巡り会えたんだ」
そこで言葉を切った。勘助は自身の心に謝った。これ以上の勇気を絞り出すのは待って欲しいと切に願う。
君と過ごす時間、これからも、大事にしたいな。
その代わりに勘助は一度、言えなかった言葉を口にした。
「…俺と、一緒に…踊ろう…まほろ…」
「フォークダンス…誘ってくれるの?」
「まほろ、だから、かな…」
二人はお互いの目を見て笑った。
御巫 時子
はフォークダンスに興じる様子を傍から見ていた。隣には白衣姿の
五十嵐 尚輝
が立っている。前髪で目は隠れていて表情もはっきりとしない。
時子は踊る人々を少し羨ましそうに見て、キュッと唇を結ぶ。
フォークダンスは距離が近いけど、すぐに離れてしまう。私はもっと触れていたい。触れることで何かを伝えたい。でも、私は……。
「あの……尚輝先生、寒くないですか?」
「夜なのでさすがに冷えてきましたね」
尚輝の声を聞いた時子はポケットから缶を取り出した。
「尚輝先生、缶コーヒーをどうぞ」
「僕は有りがたいのですが御巫さんは、心配いらないみたいですね」
時子はもう一つの缶を振って見せた。
二人はフォークダンスを見ながら温かい缶コーヒーを飲んだ。
時子の表情は和らいだ。身体だけではなく、心までじんわりと温かくなったようであった。
北校舎の屋上で
旅鴉 月詠
と
桜 月
が手を取り合う。遠くから聞こえる音楽に合わせて踊った。白くて長い髪が絡み合い、時々に赤い瞳が見詰め合う。
「こんなフォークダンスも悪くない」
月詠の言葉に同意して月は白い歯を見せて笑った。
「旅鴉さん、今日は楽しかったよ、ありがとう」
「こちらこそ」
二人は柔らかい月光の中、踊り続けた。
踊りの輪から
青龍寺 琴理
が離れた。
日野 満
は頻りに腰を摩っている。
「満くん、座りっぱなしは健康にもよくありません。少しは身体を鍛えた方がいいですよ」
「あんな園児がいるなんて、思いもしないって」
「想像力が貧困だと良い作品は書けませんよ」
「それとこれとは、微妙に、いや、かなり違うと思うんだけど」
「それじゃあ、行きましょうか」
琴理は一人で歩き出した。どこに、と満は聞きながら追い掛ける。
くるりと回った琴理は人差し指を立てて言った。
「想像力も鍛えないとダメですね。もちろん、私のアパートまでじゃないですか」
「え、ええ! それは強引というか、同意がないと、ダメだよね?」
「女の子の夜道の一人歩きは危ない、ってことは建前で『もう少し話さない?』ってこと」
一日で少し乱れた髪を満は手で直した。
「送ってくよ」
満は初めて前に出た。はい、と琴理は横に付いて帰っていった。
2年10組の閑散とした教室に
楪 櫻
がいた。窓からはキャンプファイヤーの全容が見える。立ち昇る炎の回りに小さな人達が輪を作って踊っていた。窓を閉めているのでほとんど音は聞こえて来ない。薄い一枚の硝子の向こうは別の世界のように思えた。
訪れる者がいないと思っていた教室の扉が開く。振り返ると見知った顔であった。
「あれ? 櫻ちゃん、どったの?」
「祭りの最後を眺めていた」
その声に興味を覚えたのか。
志波 武道
はバッグを持ったまま、横に並んだ。
二人は最後の宴を見入った。少し寂しさを滲ませた顔で武道が言った。
「祭りのあとが一番、堪える。膨らんだ楽しい気持ちが一気に弾けるみたいで」
「物事には全て終わりがある。それは仕方のない事だ」
「俺も子供じゃないから理屈はわかるんだけどさー」
武道は適当な言葉が見つからない状態で奇妙に身体をくねらせる。一切、取り合わないという姿勢で櫻が語った。
「だが、一つ楽しい事が終わったからと言って、他の事まで終わってしまう訳ではない。それに、生きていれば楽しい事は他にも沢山出てくるだろう」
「そりゃ、そうだな!」
「お前は楽しい事を見つけたり、始めたりするのが上手いんだと思う。だから自然とお前の周りには人が集まる。私も、お前といると退屈しないよ」
「そりゃ、良かった。さーてと」
唐突に武道は服を脱ぎ始めた。突然の行動に櫻が目を剥く。
「話がぶち壊しだ! 何故、脱ぎ出す!」
「いやだって、元々、着替えで来たし!」
武道は胸を両手で押さえてくねくねと動いた。全く、と言いながら櫻の表情は緩んだ。
「本当に退屈させないな、お前は」
窓に目を戻した櫻は窓を開けた。
世界が一つになって陽気な音楽が耳に聞こえてきた。
灯 斗南
は明るいところから遠ざかる。薄暗い路地に入ると仮面を付けた。
一つの祭りが終わり、いつもの長い夜が始まりを告げた。
寝子祭の最後の炎は人々の輪の中で厳かに消えた。
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このページにイラストを設定する
あとがき
担当マスター:
黒羽カラス
ファンレターはマスターページから!
大変に長くお待たせ致しました。寝子祭の当日、ここに完結です。
今回は一頁が相当に長くなりました。人数の多い出し物になりますと、少人数のシナリオ一本分くらいになります。
分割する方法もあったのですが、出入りの多いPCさんの位置関係の把握が難しくなると思って諦めました。
それに人が入り乱れていると賑やかで活気があるように見えませんか? などとやんわりと纏める私です。
もう一点の特徴は個々の出し物に終わりを設けていないところです。
営業開始は朝とわかりますが、昼や夜などの移り変わりは書いてありません。
中庭メインステージのライブは、ラストに決まっていたので例外の扱いとなります。
時間の経過を省いた理由ですが、今回は掛け持ちのPCさんがほとんどで、シナリオの中を走り回っていました。
行き先によっては多くの時間を取られるため、行き来が難しい状態です。そこで時間の経過を曖昧にして終わりも設けませんでした。
そのせいで最後の打ち上げを希望したPCさん達の希望に沿うことができなくなりました。
最後に纏めて書いてありますが、その点は申し訳なく思っています。
とにもかくにもたくさんのPCさんと一緒に私も寝子祭を走り抜けました。
時には足を引っ掛けて転びそうになりながらも、無事に完走できました。
苦しさよりも楽しさが勝ったおかげだと思っています。
皆さんの力が結集した寝子祭、楽しんでいただければ私も嬉しい限りです。
お祭りの終わり、一抹の寂しさを感じながら、ここで筆をおきたいと思います。
長々と書いてきましたが、最後に残していた言葉を贈ります。
参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
145人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月22日
参加申し込みの期限
2015年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
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