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射撃部&新聞部
:ライブRPG風イベント、体育館とその周辺
体育館の出入り口に近い場所に簡易テントが設営された。手前の看板に『宿屋無料休憩所』とある通り、中では軽い飲食が可能となっていた。二リットルの容量のジャグには冷えた麦茶が入っていて紙コップも用意されている。机やパーティションには新聞部の記事をパッチワークのように貼り付けて、それとなく部活動の宣伝も行う。感想用のノートや筆記用具まで置いてあった。
その中で
桜井 ラッセル
が黙々と手を動かしていた。細長い机の上にはノートパソコンとカラープリンターが置いてある。試し刷りしたプリント用紙には『クリア認定証』と印字され、ピースサインのポーズでラッセルが印刷されていた。
「良い仕上がりだ」
ラッセルはロイド眼鏡を正しい位置に押し上げる。ビデオカメラとパソコンの電源を切った。
遠目で見ていた
鈴野 加代
が近づいてきた。
「桜井さん、私が手伝えることはありますか」
「おー、鈴野か。タイミングがバッチリ。そこの箱の中身を並べて欲しいんだ」
指差した先に段ボール箱があった。開いた状態で中を見ると景品と売り物がごちゃ混ぜになっていた。
「私に任せてください。それにしても日頃とかなり違いますね」
「この服装のことか? ま、王宮執務官っぽく纏めてみたんだけどな」
緑色のサーコートの下には青いキルティング加工された服を着ていた。紫色のズボンは膨らみのある七分丈であった。
「それでは分別をしておきます。その間、桜井さんはどうするのですか」
「俺は大道具として少し中を見て回るよ。じゃあ、頼んだぜ~」
ふとラッセルは日頃の自身の姿を頭に思い浮かべた。
「確かに違うな」
笑みを作って体育館の中に入っていった。
荒廃した世界観を表現する為に所々に大小の岩を造形した。高さは跳び箱で補い、表面の突起はボール等を利用した。その一塊に布を被せて原型とした。更にくすんだ色の紙で全体を覆った。わざと皺を入れることで岩の質感を十二分に表現した。
個々の成果を目にしながらラッセルは適当に歩いた。
胡散臭い外観の段ボールの小屋には
維都月 茉菜
がいた。外壁に当たる部分に可愛らしい熊や猫の切り絵を万遍なく貼っていく。
ラッセルは気楽に声を掛けた。
「どんな感じだ?」
「胡散臭さと可愛らしさがミックスされて良い感じだよっ!」
「そりゃ、良かった。服はそれでいくのか?」
茉菜はさっぱりとした印象の服を着ていた。地味ではないが占いに適した格好には見えなかった。
「ちゃんと妖しい系のローブを用意してあるよ~」
「じゃあ、問題ないな」
ラッセルは手をヒラヒラと振って歩き出す。
目の前にカラフルな四角い箱のような机が見てきた。似たような配色の教卓が向かい合わせで置いてあった。周囲にはクエスチョンマークを描かれた風船が浮いている。
「試してみるかな」
まずは机のボタンを押した。ドアチャイムのような短い音が鳴る。何回か押して満足した。
ラッセルは教卓に向かった。同じようなボタンが三つある。正解と書かれたボタンは連続で鳴って明るい。不正解は間延びした低音であった。最後のボタンには何も書かれていない。
「作るのに苦労したぜ~」
ラッセルはボタンを押した。正面の机の上に下げていた小さなくす玉が割れた。様々な色のカラーテープと共に『おめでとう!』と書かれた垂れ幕が出現した。同じボタンを押すと飛び出た物を自動で回収してくす玉は閉じた。
ラッセルは二階に上がる階段を見た。上は最後の試練、魔王の玉座で多大な時間を費やした場所でもあった。
「ここらで戻るかな」
自信に裏打ちされたような笑みでラッセルは戻っていった。
金属バットを肩に乗せた
桜崎 巴
が集団の先頭をゆく。
「いつまで歩かせんだよ」
「スッゲー、だりぃー」
後ろから挙がる不満に巴は片方の犬歯を剥き出しにした。小悪魔とは比較にならない悪魔の笑みで金属バットを地面に叩き付ける。
不快な金属音で全員の口を黙らせた。
「誰のせいだと思っているんだい?」
「うるせぇな。もういいだろ」
金髪が口を尖らせて横に並んだ。
「あんたらの胃袋は半分くらい切除した方がいいね」
巴は呆れたように返した。
体育館の前に
八神 修
が立っていた。通行人の量を見定めているようだった。
「ちょいといいかい?」
「桜崎か。これは一体、何の集団なんだ?」
修は集団に爽やかな笑みを向けた。射殺すような視線は態度で軽く受け流す。
「ドカ食いが原因でにゃっぽを使い果たしたのさ。マタ工の連中なんだけど、ここで雇ってくれないかと思ってね」
「そうだな。魔王と勇者の最終決戦の場で争っているモブ役はどうだろうか」
「そりゃ、いいね。適役じゃないか」
金髪が前に出て修を睨み据える。
「俺達がいつもバカみたいに喧嘩してると思ってんのか、コラ?」
「労働に見合ったにゃっぽを支払おう。客の反応次第でボーナスを出してもいい、どうするんだ?」
金髪は鼻筋に皺を寄せて修に顔を近付ける。動じない態度に顔を背けて舌打ちした。
「この女と同じで食えねぇ野郎だ」
「交渉は成立だな」
修は清々しい笑みを見せる。
――こちらに損はないな。
胸中の思いが少し笑みを深くした。
「あんたら、しっかりおやり」
集団を一瞥した巴は気ままに歩き出した。
曖浜 鴻
は
曖浜 瑠樹
と手を繋いで校内を歩いている。人々の視線は二人を見比べるように動いて不安な表情を滲ませた。
鴻の眠たげな目は睨んでいるようにも見える。首は太く、筋肉の筋が浮き出ていた。白いジャケットは肉厚。黒いズボンは一歩ごとに筋肉の隆起が見て取れる。
対して瑠樹は背が低い。幼い顔立ちで白い猫の縫い包みのようなリコーダーケースを抱いている。可愛らしい服と相俟って見る者によっては女の子に思われているのかもしれない。
二人の見た目の落差は相当なものであった。
「真央ちゃんお姉さんがいるよぉ」
のんびりした声に反して動きは速い。瑠樹は繋いでいた手を離して駆け出した。前方には猫の着ぐるみに身を包んだ
後木 真央
がいた。
「いらっしゃいませーなのだ! ニャンコ・マックスで皆が勇者になって魔王を打ち倒して平和を掴むのだ~!」
「オレ、やるよぉ」
「よくきたのだ、瑠樹ちゃん勇者よ、なのだ。この宿屋で王宮執務官に話を聞くのだ」
真央は瑠樹を簡易テントに引き入れた。待ち構えていた
桜井 ラッセル
が話し始める。
「ふむ、よく来られた小さな勇者よ。ここは冒険の記録を告げる場所である。帰りに立ち寄るのだ。詳しい話は中の酒場にいる村長に聞くがよい」
「よくわからないけどわかったよぉ」
「ふ、ふむ、中のミニゲームで良い成績を収めるとスタンプを押して貰える。その数だけ、景品が出るのだ。ちなみにあそこにある物から好きなのを選べるぞ」
細長い机の上には景品がぎっしりと並べられていた。
「がんばるよぉ」
瑠樹は体育館に突入した。遅れてきた鴻は叔父であることを告げるとラッセルに二人分の金券のにゃっぽを渡した。
「俺も行くか」
鴻は顎先を撫でて一歩を踏み出した。
酒場は建物を真っ二つにしたような状態で作られていた。ベニヤ板を繋ぎ合わせた書き割りには陳列された酒瓶や店主を描いた。左右の窓を描いた近くには強面の冒険者を添えて雰囲気を盛り上げる。カウンターは絵ではなく、細長い机を繋いで上から茶色の布を被せた。
村長役の
遠矢 護
は制服姿でカウンターに並べられた丸椅子の一つに座っている。
どこか眠そうな表情で一点をぼんやり見ていた。
人が話し合うような声が聞こえてきた。その内容が出し物の説明と理解した瞬間、護は大急ぎで衣装のフードを被った。カウンターに置いてあった杖を手に取り、少し背中を丸めて老人を装う。
ほっとした表情はカウンターの上の髭を見つけて一変した。慌てて鼻の下に貼り付ける。
走ってきたのは小さな身なりの瑠樹であった。想定していた人物と違うのか。護はぎこちない態度で進み出た。
直後に宿屋の呑気で怠惰な場面を表現した曲が流れた。
「忙しいぜ」
客の死角になった場所で
霧生 深雪
が不機嫌な顔でぼやいた。
護は瑠樹に切羽詰まった声で言った。
「ち、小さな勇者様、どうぞお助けくださいませ!」
「何すればいいんだぁ」
「村が魔王ヤガミさん、じゃなくて魔王ヤガミが悪逆の限りを尽くし、って意味はわかりますか?」
護は顔を曇らせて聞いた。瑠樹は明るい顔を見せた。
「難しくてわからないなぁ」
「え、えっと、村が魔王ヤガミにけちょんけちょんにされてしまったのですじゃ。どうか小さな勇者様のお力をお貸しくだされ!」
「いいよぉ」
軽い返事で引き受けた。ほっとした護は滑らかに話を進めた。
「これは勇者様の証のカードですじゃ。簡単な地図が書いてあるので行き先の参考にしてくだされ」
「ここにスタンプとかを押すのかぁ」
「そうですじゃ。ミニゲームで勝つとスタンプを押して貰えるのじゃ。たくさん集めると魔王ヤガミの戦いが楽になれるのじゃ。さあ、お好きな所に行ってくださいませなのじゃ。これはお守りですじゃ。お持ちくだされ」
護は手作りの小さな熊の縫い包みを差し出す。ありがとう、と言って瑠樹は笑顔で受け取った。熊は前脚を胸のポケットの縁に引っ掛けて顔を出した状態で収まった。
「じゃあ、行ってくるよぉ」
「小さな勇者様、気を付けてお進みくだされ!」
鴻は少し後ろで腕を組んで遣り取りを見ていた。徐に歩き出す。
「俺にもカードをくれ」
「あ、はい」
受け取ると瑠樹とは違う方向に歩いていった。
少し入ったところで瑠樹はカードの地図に目をやる。
「どこから行けばいいんだぁ」
「キミの好きなところから行けばいいのさ」
極彩色のピエロに扮した
河島 澪
がおどけた調子で立っていた。顔は白く塗られて片方の目にはハートが描かれていた。分厚く塗られた赤い唇を歪めて笑っている。
「じゃあ、チョーク投げかなぁ」
「それならこちらが近道だよ」
澪は先が反り返った靴で跳ねるように歩いて誘導した。
「凝った作りだ」
周囲を見ながら歩いていた鴻の前にテントが現れた。入り口は開かれていて小さな円卓に毒々しい色の照明が当たっている。
「いらっしゃい、遊んでいきますか?」
日暮 ねむる
がテントの裾から顔を覗かせて言った。鴻は卓上のトランプを目にした。
「楽しめそうだ」
鴻は身を屈めてテントの中に入る。ねむるは正面の椅子を勧めてルールの説明へと移行した。
「使用するトランプはハートのエースからキングまでの十三枚です」
伏せていたトランプを表にして卓上に広げて見せる。
「確かに」
鴻の一言でねむるは手際よくカードをシャッフルして元の状態に戻した。
「最初は僕が山札の上からカードを取ります」
一枚のカードの数字を見てから裏にして置いた。鴻は黙って説明を聞いている。
「あなたは三枚を引いて中から一枚のカードを選びます。僕のカードの数字に対して、あなたのカードの数字は上なのか、それとも下なのか。『ハイ』、または『ロー』で宣言してください。的中すればあなたの勝ちです。それと最初に引いたカードが気に入らなければ全てを捨てて二回までチェンジが可能ですよ」
「エースは一の扱いなのか?」
「はい、特別なルールはありません」
「始めるか」
鴻に促されてねむるはカードを丹念にシャッフルして卓上に置いた。山札の一枚を捲ると、ほう、と意外そうな顔で裏向きに置いた。
「良い演技をするじゃねぇか」
白い歯を見せて鴻は山札から一枚を捲る。数字は十一であった。表情を変えずに二枚目を取ると四であった。最後の一枚はエース。
鴻は最後に引いたカードを表に向けて置いた。ねむるは掌を上に向けて笑った。
「悪いな、ローだ」
「あなたの勝ちです。見事な強運でした」
ねむるは勇者の証にスタンプを押した。
少し広い場所に
春賀 幽
が待機している。近くには射撃の的のような物があった。それとは別に細長いステージが設置されていて、その縁に幽が腰掛けていた。
「誰か来たようですよぉ」
赤い瞳を一方に向ける。瑠樹が笑顔で走ってきた。
「可愛い勇者ですねぇ。さぁ、終盤ですよぉ。僕のミッションをクリアしたらラストバトルは目の前ですよぉ」
「オレ、ここが最初だよぉ。村長さんとピエロの人が好きなところに行っていいって言ったんだよぉ」
「そうなんですかぁ。ここはチョーク投げがメインでステージ対決もあるけどぉ」
幽は瑠樹の姿を見て、にこやかに的の前に立たせた。速やかに三本のチョークを渡す。
「的の中央に近い程、得点は高くなりますよぉ。一定の点数になったらクリアですねぇ」
「えーい、やぁ」
瑠樹は野球のピッチャーに成り切って次々に投げた。全力の三回、全てが的に当たらなかった。
「うーん、当たらないねぇ」
「そうですねぇ。チョークを手裏剣と思って投げたらいい感じかもしれないですよぉ」
幽は何気なく水平に手を振った。一本のチョークは矢のように飛んで的の中心に当たった。
「すごいなぁ」
「これはおまけですよぉ」
幽は新たに三本、チョークを渡した。投げ方の改善で二本は的の端に当たった。
「投げる距離をもう少し縮めた方がいいですねぇ」
幽は瑠樹の背中に手を当てて一メートル弱を歩かせた。そこから投げた最後の一本は的の中心近くに当たる。
「点数が一定以上になったのでクリアですよぉ」
幽は勇者の証にスタンプを押して笑顔で送り出した。
瑠樹は走って次を目指す。段ボールの怪しげな小屋に出くわした。外壁には熊や猫の切り絵が貼られていた。
「なんか楽しそう」
近づいて段ボールのドアを開けた。
「こんにちはぁ!」
中に入ると、くすんだ赤色のローブに全身を覆われた
維都月 茉菜
が座っていた。正面の台のような上には水晶玉が乗っていて、天井から下げられた裸電球の光を受けて妖しげに光っている。
「ふむ、そこの椅子に座るのじゃ。この婆が魔王との戦いが有利になるように占ってやるのじゃ」
「おー、楽しみだよぉ」
瑠樹は水晶玉に顔を寄せる。茉菜は両手を前に差し出して適当な呪文を唱える。その合間にちらちらと相手の様子に目をやった。
「勇者殿は女の子ですかな」
「オレは男だよぉ」
「そ、そうなのじゃな。そのぉ、腹筋はどうなっておるのかな」
「腹筋ってお腹のことぉ?」
不思議そうな顔をする瑠樹に茉菜は頷いた。その声で服を捲り上げると腹部が丸出しになった。殻を剥いたばかりのゆで卵のようだった。
茉菜は困ったような唸り声で、わかったのじゃ、と厳かに言った。咳払いをして占いの結果を告げる。
「魔王は大の動物好きらしいのじゃ。戦いの時に猫の縫い包みを前に出せば手が止まるのじゃ、その隙に攻撃すればよいじゃろう」
茉菜は用意していた胴の長い猫の縫い包みを取り出した。目にした瑠樹はポケットに入れていた白い猫のリコーダーケースを持ち出した。同じ猫で胴まで長い。
「兄弟みたいだねぇ。でも、その猫も貰っておくよぉ」
「そ、そうじゃな! それがいいのじゃ!」
茉菜は勇者の証にポンとスタンプを押した。
「占い師さん、ありがとうなぁ! これから他も回ってみるよぉ」
瑠樹は元気に飛び出していった。一人になった茉菜は頬杖を突いた。
「用意した台詞が、全く通用しないなんて……」
軽い落ち込みを体験するのだった。
『射撃部新聞部からの挑戦状!』
そのような文言のポスターに
鉄 時尾
が静かに闘志を燃やした。
十朱 此方
と連れ立って体育館に踏み込んだ。
二人の少女の行動を偶然に目にした
羽生 碧南
は、いいかもね、と明るく言って後に続く。
最初の宿屋で三人は村長の
遠矢 護
から一通りの説明を受けた。熊の縫い包みを渡されると揃って笑みが零れる。
「行くわよ」
碧南は颯爽と歩き出す。
残った二人は地図を見ている。行き先に迷っているのか。時尾が此方に聞いた。
「十朱さんはどこから回るつもりですか」
「あたしはチョーク投げね」
「そうですか。わたしはヒストリークイズを考えていました」
「少しの間、別行動もいいかもね」
二人は次に落ち合うところを話し合う。
先に進んだ碧南は解答者の席に着いた。試しにボタンを連打。ドアチャイムのような音が重なって聞こえる。
カラフルな教卓には
日々野 結衣香
がいた。
「ピンポンダッシュはやめてください」
「あ、ごめんね。試してたら楽しくなってきて」
「問題を出しますよ。よく問題を読んで答えてくださいね」
結衣香は手で持てるサイズのホワイトボードに書き込んだ問題を掲げた。
『Q 火縄銃が日本に伝わった場所はどこでしょう? 番号で答えてください。
1 淡路島
2 種子島
3 佐渡島』
問題を見た瞬間、解答ボタンを押した碧南が答えた。
「2番よ!」
「正解です。速いですね」
碧南の真上のくす玉が割れた。カラフルなテープに交ざって『おめでとう!』と書かれた垂れ幕に祝福された。
「歴史物の乙女ゲーで鍛えられているからね!」
「気が合い、いえ、何でもありません。正解されたのでスタンプはもちろんですが、こちらの手作りの
栞
をお持ち帰りください」
結衣香は刀の形をした栞を碧南に手渡した。
「乙女ゲーにもこんなアイテムがあるよね」
「よくわかり、まあ、そうですね。それとこちらは参加賞になります。箱の中からお好きなのを一つ、選んでください」
手にしていた箱の蓋を開いて見せる。中には真新しい
リボン
が収められていた。迷うような目で碧南が言った。
「大柄な私に似合うかな」
「可愛い女の子にリボンが似合わないはずがありません」
「あなたはどこの乙女ゲーのキャラなのよ」
恥ずかしそうな笑みで一つのリボンを選んだ。
碧南と入れ替わるようにして時尾が解答席に座る。
新しい問題を結衣香がホワイトボードに書いた。それを掲げた瞬間に答えられ、見事に正解した。戦利品をほくほく顔で受け取ると次の場所に向かった。
碧南はチョーク投げに挑もうとした。そこに此方がいた。巫女装束に身を包んだ
春賀 幽
がのんびりした声でコツのようなことを教えていた。
「試してみるわね」
速い動作で此方はチョークを投げた。見事に的の中央に当たる。
「筋がいいですねぇ」
幽は勇者の証にスタンプを押した。
程なく碧南の番となった。対戦形式もあると勧められたが断わった。本能的に相手を強敵と悟ったのかもしれない。無難な的当てでクリアとなった。
二人を見送った幽は次の挑戦者に備えて衣装の着替えを始める。ステージの下の部分を引き出すと衣装が収められていた。
「セーラー服に、これはメイドですねぇ。ほとんどが女性用なんですけどぉ?」
幽は軽い戸惑いを見せた。
碧南は目にしたテントに道場破りの如く飛び込んだ。
日暮 ねむる
のカードの説明を聞きながら腕を捲り、勝負よ、と気合を見せる。
碧南は二回のチェンジで選んだ数字は十二でハイを選択した。ねむるは苦笑して裏にしてあったカードを引っくり返す。
「どうしてなのよ」
「運かな?」
ねむるのカードは十三で碧南の負けとなった。
「次よ、次!」
段ボールの小屋では
維都月 茉菜
の占いを受けた。碧南はそこで胴長の猫の縫い包みを手に入れた。首根っこを引っ掴んで中庭へと駆け込んだ。
丸く形作られた場所には本物の鉢植えが置いてあった。十一月に見られる花々で『シクラメン、菊、コスモス、クレマチス、マリーゴールド、パンジー』と有名処を押さえていた。
「誰ですかー。花の精の庭に無断で入る人は、もうプンプンなのです」
椿 美咲紀
は露出の激しい衣服で踊るように登場した。背中には禍々しい羽が生えている。
碧南は少し顔を突き出した。美咲紀の身体の隅々に目を向ける。
「その格好は花の精ではないよね? 死亡フラグの立った中ボスみたいな感じに見えるんだけど」
「裏設定ではイタズラ好きになってるんです。だから、魔物っぽいコスプレで来ましたぁ。それにサキュバスベースはエロ可愛いじゃないですかー」
「確かにそのルートはありよね」
碧南は何かを鷲掴みするような手で美咲紀に近づく。身の危険を感じたのか。急に本題へと入った。
「知らない人を簡単に通す訳にはいかないのです!」
「村長の話だと私は勇者だから、そんなに知られていない人ではないと思うわ」
「あの村長は上辺だけが優しくて実は腹黒いのです。見かけた人を片っ端から勇者にして魔王ヤガミと対決させて共倒れを狙っているのです。邪魔者がいなくなったあとは魔王城に溜め込んである数々のお宝を奪って逃げるつもりなのですよ」
美咲紀は一気に捲し立てた。碧南は感心したように聞いていた。
「そんなに細かい設定があったんだね」
「さっき思い付きましたのです。とにかくですね。素性のあやふやな胡散臭い人間は通せないのです。でも、例外はあります。お花が好きな人に悪人はいません! さあ、ここに置いてある可愛い子達の名前を言うのです」
美咲紀は辺りを囲むように置かれた鉢植えに手を向けた。意外という風な顔で碧南は花に目をやり、一点を指差した。
「あれは菊よね。これでいい?」
「そ、それは小学生低学年のお子様に用意した鉢植えじゃないですか!」
美咲紀は両方の拳を握って縦にブンブンと振る。困ったように笑う碧南は再度、鉢植えをざっと見回した。
「十一月をテーマにしているのならシソ科のコリウスはどうかな。花じゃないから対象外かもしれないけどね」
「ほう、マニアックですね。そのような人にはこれなのです!」
左右の羽を揺らして走る。美咲紀は端の方に突き出た岩にしゃがんで開いた。中から小さな鉢植えを取り出して戻ってきた。
「花ではない答えに用意した特賞のシクラメンです。育て方のガイド付きなので安心なのです」
「ありがとう、貰っていくわ」
「それとこれはクリアのご褒美の花のポストカードです。スタンプも押してあげますよ」
勇者の証にスタンプを押す。他とは違って花の形をしていた。
「色々と楽しかったわ」
「城内で迷わないでねぇ~」
サキュバスの格好で美咲紀は満面の笑顔で碧南を送り出す。手まで振る愛想の良さであった。
各ミニゲームを楽しんだ参加者が
鈴野 加代
の元に集まった。
曖浜 瑠樹
は待ち切れない様子でそわそわしている。
「早く始まらないかなぁ」
「……エアガンか」
側にいた
曖浜 鴻
がどこか懐かしむような声を出した。
時尾は心細げな顔を此方に向けた。
「射撃のような遠距離の戦いは不慣れで、少し不安です」
「あたしも剣道だから似たようなものよ。だから、しっかり練習すればいいのよ」
「そうですね」
学校で使用する教卓の前に立っていた加代が白い手袋を嵌める。全員が私語を謹んで注目した。
「私の役目は魔王を斃す為の武器を与えることです。今回はエアガンになります」
教卓の中から速やかに拳銃を取り出す。目にした瞬間、碧南は垂直に手を挙げた。
「コルトパイソンね。『血みどろ乙女』のゲームでゾンビ共を狩る時によく使ったわ」
「正解ですが、ここはヒストリークイズのコーナーではありません。先を続けます。銃は無粋という人もいると思うので無理強いはしないつもりです」
「相手を締め落としてもいいのか」
鴻の物騒な提案に加代は少し間を空ける。
「前言を撤回します。武器だけで戦うようにしてください。エアガンの使い方ですが、覚えなくてもいいです」
「あ、あの、どういうことですか?」
時尾は遠慮がちに聞いた。
「エアガン自体に殺傷能力はありませんが、目に当たれば大事になるかもしれません。そこで今回の武器を変更してトイガンにしました」
加代はカラフルな銃を手にした。太めのガトリングガンのような物であった。本体の横のカートリッジを引き抜いて弾を見せる。
「弾はスポンジ製で先端に吸盤が付いています。スタンプの数と同じ弾を支給することにします。ちなみにスタンプが零の場合、最低保障として一発は差し上げます」
「カッコイイなぁ。オレ、がんばるよぉ」
ほとんどの者が戸惑う中で瑠樹だけはやる気を見せた。
「皆さんの士気を上げる為に少し演出を加えます」
半壊した建物を描いた書き割りの裏に足を運んだ。制服の上から衣装を纏い、分厚い本を手にして出ていく。
各々が驚きの眼差しで迎えた。加代は神父を思わせる白いカソックにフードを被っていた。場の雰囲気が一気に神聖なものに変わる。
教卓に戻った加代は厳かな表情を作った。分厚い本の中程を開いて指で頁を捲る。
「聖なるトイガンの使い方に関しては経典の第二章九節から二十一節に、このように書き記されています」
加代の朗読が始まった。
「聖アッティラは赤く焼き付いた銃身から湯気と、銃口から硝煙を棚引かせる銃を持ち言われました。銃に祝福あれ。主の情けにより敵を粉々に打ち砕かん、以下略」
「以下略って」
碧南の呟きを加代は咳払いで制した。
「主は言われました。
聖なるスライドを引き銃口を敵に向けなさい。
友人でも愉快な仲間でもなく、住民でもなく動物でもない敵に向けなさい。
そして面倒な御託があなたの頭に浮かぶ前に速やかに引き金を引きなさい。
さすれば目障りな敵はくたばるであろう。
アーメン」
邪教徒の経典のような文言が終わる。各々はトイガンの練習へと移行した。
「大幅な変更だな」
ピエロの格好をした
河島 澪
は関係者の元へと走った。音響担当の
霧生 深雪
にトイガンの発射音を注文した。魔王役の
八神 修
には銃の変更を伝えて驚かれた。台詞の修正と並行してトイガンの練習が始まった。
交代時間となり、
綾辻 綾花
は受付を離れた。人々で賑わう通りを急ぎ足で歩いた。ツインテールの髪型に注意を払って進んだ。
南校舎の前で綾花は表情を和らげた。
「あおいちゃん!」
呼ばれた
七夜 あおい
はツインテールを弾ませて走ってきた。
「受付の仕事が終わったのね」
「交代時間になったから、あおいちゃんと出し物を見て回ろうかなと思って」
「いいよ、一緒に楽しもうよ」
あおいの屈託のない笑顔に綾花は高揚して言った。
「あおいちゃんの好きなところに行きましょう」
「修くんと
約束
があって、少し付き合ってくれる?」
控え目な物言いに綾花は、どうしたの? と聞き返した。
「運動系の出し物みたいだから」
「本格的な運動は苦手ですが、身体を動かすくらいは大丈夫ですよ」
「ありがとう」
二人は逸れないように手を繋いで体育館に向かった。中でも行動を共にしてスタンプを着実に集めていった。
魔王との対決に備えてあおいはトイガンの講習を受けた。綾花はやんわりと辞退して見学に回る。
「これくらい練習すればいいかな。でも、本当に綾花ちゃんは挑戦しないの?」
「私には少し世界観がハードでした。人相の悪い人達は怖かったです」
「世紀末感はあったよね。セットは迫力があるし、チョーク投げは本当に難しかったよ。最後はどうなのかな」
「今までに挑戦した人達の情報は私の元にも届いています。参考までに教えましょうか」
傍らで聞いていた
鈴野 加代
が歩み寄る。二人は顔を見合わせて、お願いします、と口を揃えて言った。
加代の話を纏めると以下のようになる。
曖浜 鴻
は素早く物に隠れて距離を縮めた。無駄な弾を全く撃たない。魔王を引き付けて急所を狙う、圧巻の戦いぶりで勝利を収めた。
曖浜 瑠樹
は攪乱するように走り回った。小柄なので当てることは非常に難しい。適当に撃った一発が魔王の左胸を捉えて笑顔で勝利した。
鉄 時尾
の動きは悪くなかった。少し弾の精度を欠いて序盤にかなりの弾数を無駄にした。最後は弾切れとなって惜敗した。
十朱 此方
は開始時にぼんやりと立っていた。魔王は用心しながらも近づいて着実に仕留めようとする。一瞬で決着は付いた。剣道の踏み込みのような速さで距離を詰めた此方の勝利であった。
羽生 碧南
は大柄で的としても大きい。のんびりとした様子は戦闘に不向きに思われた。それは杞憂で開始と同時に碧南は豹変した。荒々しい走りで弾を交わし、獣のように魔王に襲い掛かって全弾を撃ち込んで勝利をもぎ取った。
「今のところの情報ですが以上になります。参考になりましたか」
「勝利の方法が多くて迷いそうね。でも、楽しめそう。情報をありがとう」
あおいは防御用の小ぶりの盾にトイガンを持って魔王の玉座に向かう。階段を上がって二階に着いた。
パイプオルガンの曲が流れる。葬送曲のように悲しい響きを帯びていた。正面には跳び箱を利用して作られた階段にレッドカーペットが敷かれ、魔王の居城に相応しい重厚感を醸し出す。左右には甲冑や禍々しい彫像が布や紙を素材として表現された。その中にはパイプオルガンも含まれている。
正面の巨大なスクリーンにはプロジェクターの映像が奥行きを伴って映し出されていた。長大な階段の向こうには玉座があり、魔王が黒い軍服姿で足を組み、悠然とこちらを眺めていた。突如として立ち上がると階段を下りてくる。途中でマントを脱ぎ捨てた。スクリーンの真下に姿が消えた。
スクリーンと実際の階段の間には隙間がある。そこに魔王役の
八神 修
が潜んでいて映像に合わせて階段を上がる。手には盾とトイガンを持っていた。
レッドカーペットの頂上に立った修はあおいに向けて言い放つ。
「よくぞ、ここまで辿り着いた勇者よ」
「修くん、魔王らしいね」
あおいに褒められて修の厳しい表情が緩む。数秒で立ち直り、威厳を取り戻した。
「ここまで来た力は認めよう。俺と共に世界を治めてみないか」
「ここは断った方がいいのよね?」
あおいは可愛らしい仕草で聞いてきた。修は呆けたような表情を一瞬で引き締める。
「衆愚政治より善き独裁だ! やはり、魔王と勇者、共に生きることは出来ないようだな」
口上は終わって戦いとなった。
あおいの必死に立ち向かう姿はとても愛らしい。勇ましい曲に合わせてツインテールが勢いよく弾む。弾を撃つ度に間の抜けた発射音が流れた。
「ぷよーん、って曲に合わねぇよ……」
裏方の音響の
霧生 深雪
が物陰に潜んで苦々しい表情で呟く。
「やったね。私の勝ちよ」
喜ぶあおいの足元に修は倒れていた。額に弾が引っ付いていた。
「さらばだ勇者よ……理想が揺らがぬことを、期待して、いるぞ」
一人の勇者の物語は幕を閉じた。
武道場を出た
響 タルト
は隣接する体育館に急いだ。出入口近くの簡易テントで印刷していた
桜井 ラッセル
に茶化すような言葉を掛ける。
「ラッセルくん、久しぶり~。なんか観光地の出口で写真を押し売りしている人みたいだよ?」
するとクリア認定証の贈呈で売買はしていないという答えが返ってきた。
「僕の写真より魔王のコスプレの写真がいいな~」
笑いながらタルトは体育館に突撃した。
段ボールの小屋では占いに興じた。
維都月 茉菜
の堂に入った演技にタルトは喜んだ。
「そうなんだ、ツインテールだと魔王が弱くなるのね。それじゃあ、髪型を変えてみるよ。教えてくれてありがとう。お礼に映研のパンフレットをあげるよ。演技が好きなら入部もいいかもね♪」
宣伝の枠を超えて入部まで勧める。
魔王の対決はそっちのけで
八神 修
の衣装に興味を示した。
「これが魔王……似合ってるよ! 薄い本のネタになりそう♪」
帰り際に
日々野 結衣香
を見つけて思い出す。
文芸部には僕の薄い本も置いて貰ってるんだよね。あとで見に行こうかな♪
うきうきした気分で中を駆け回り、あっという間に出ていった。
体育館には出し物が一目でわかるように宣伝のチラシが貼ってあった。通り掛かった
常闇 月
は目で文字を追う。目頭を揉んでふと思った。
長いですね。
感情の起伏は乏しいが足は入ろうとした。
近くの簡易テントから声が聞こえてきた。
「お帰りなさい勇者様、冒険に参加した貴方に伝説の神獣をプレゼントなのだ♪」
猫の着ぐるみに身を包んだ
後木 真央
が参加者に景品を渡していた。近くにはラッセルがいて子供が景品を選ぶ姿を見守っている。
「時間がないのだ! ラッセルちゃん、戻ってくるまで縫い包みの配布をヨロなのだ~」
真央は猫の姿で駆け出した。偶然に見送ることになった月は乏しい表情で思う。
猫みたいな人ではなくて猫です。
月は体育館の中へと速やかに移動した。
最初の酒場で村長に扮した
遠矢 護
から説明を受けた。数をこなしたおかげなのか。言葉はとても流暢で演技としても悪くない。月は観察するような目を向けた。
八神さんと一緒にいた子ですか。
「勇者様、気を付けてお進みくだされ」
「行って参ります」
月は足音を立てないで奥へと進んだ。
開けた場所に
春賀 幽
がセーラー服姿で待ち構えていた。
「的当てと対戦があるけど、どちらを選ぶのですかぁ」
「的当てで」
既定の数のチョークを受け取ると月は速やかに構える。
「こういうのは得意ですよ?」
月は最小の動きでチョークを投げた。的の中心に当たる。残りも同じ軌道を辿った。
「クリアおめでとう。でも、物足りないのではないですかぁ」
「対戦ですか」
「ただの余興にどうですかぁ」
「悪くないですね」
幽の説明を受けて二人はカチューシャを頭に装着した。十円玉くらいの丸い紙風船が乗っている。
「先に当てた方が勝ちですよぉ」
細長いステージで二人は対峙した。先に月が斜めに跳んで一投を放つ。遅れて投げた幽のチョークが宙で打ち砕く。
「やりますね」
月は間合いを取ってゆらゆらと動く。
「こちらの番ですよぉ」
幽は手の一振りで三本のチョークを投げた。月は両手を背後に隠して前に跳び出す。まるで軌道が見えているかのように顔だけで避ける。
月は間近でチョークを投げると同時に右へと跳躍した。逆に幽は左に流れる。
「お見事ですよぉ」
直後に幽の頭上の紙風船が割れた。垂直に落ちてきたチョークはステージの上を転がった。
「あなたは最後、当たりに行きましたね」
「最初はわかりませんでしたよぉ。隠した手でチョークを上に投げて、落下地点にボクを誘導したんですね」
月は一礼して立ち去った。
次はカジノに挑戦した。けばけばしい光彩を浴びて月は
日暮 ねむる
と向き合った。説明を受けた通り、三枚のカードを手にした。二人の表情は変わらない。
その時、ねむるは悪夢に出そうな笑みを見せた。
「これは忠告だね。ハートの七で勝負はしない方がいいと思うよ」
微かに月の表情が動いた。
カードを言い当てましたね。でも、問題はありません。
「私はハートの七で勝負します」
月は一枚のカードを裏にして卓上に置いた。ねむるの表情に困惑の色が広がる。
運命のカードを二人は同時に捲った。ねむるは脱力したような顔で笑った。
「君のカードは後ろの鏡で丸見えなんだけど、まさか六で僕が負けるとはね。覚悟の違いなのかな」
月は頭で否定した。
「覚悟に違いはありません。私が勝てたのは日暮さんのカードを知っていたからです」
「え、どういうことかな?」
「最初に日暮さんはカードを表にして見せてくれました。シャッフルの時に全てのカードの位置を目で追いました。少ない枚数で助かりました」
「それで山札の上のカードがわかっていたんだね。僕の完敗だよ、おめでとう」
「お粗末でした」
月は初めて口元に微かな笑みを浮かべた。
占いでは
維都月 茉菜
から興味深い話を聞いた。他のところにも微かな笑みで立ち寄った。
楽屋裏に当たるところに
常闇 月
がいた。
「なかなか、楽しかったですね」
「こちらは瞬殺だけどな」
八神 修
は制服に着替えて椅子に座る。汗で濡れた顔を真新しいタオルで拭った。
「八神さんはこれから休憩ですか?」
「そうだよ」
「それでしたら……一緒にどこか行きませんか?」
「その提案に乗るよ。動き回って喉がカラカラだ」
喉を摩って立ち上がる。先に月が歩き出し、修が付いていく形となった。
体育館を出た二人は押し返されそうな人々の間を縫って進んだ。月は行き先に迷うことなく北校舎に入った。
「喫茶店は南校舎の方が多くないか?」
修の疑問には答えずに三階へと上がる。すたすたと歩いて月は応接室の扉を開けて入っていった。
少し遅れて修が続く。中で迎えたのはゴシック調のドレスを着たマネキンであった。胴体だけなので愛想笑いを浮かべる顔もない。
月はソファーに座っていた。机を挟んだ向かいには
桜 月
と
旅鴉 月詠
が共にスケッチブックを持って対応に当たっている。
「衣装を手掛けてくれるのですか」
「その通りだ。私が服のデザインを考えて、旅鴉さんがアクセサリーを加えた状態で絵に仕上げる。希望するのなら実際に作ることも可能だ」
「そうですか。セクシー路線にファンタジー要素を加えた『くノ一』は可能でしょうか」
「問題ないね。目立つ姿で忍ばない者になるが、縮めれば忍者だよ」
月詠はスケッチブックを開いて早々と描き始める。
恐縮した顔で月は目を伏せた。
「お見逸れしました」
蚊帳の外の修は月詠に声を掛けられ、アイスティーで一息入れた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
145人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月22日
参加申し込みの期限
2015年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
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